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星城(愛知)【後編】「愛知私学4強との対決を制し、下克上実現へ」

2018.06.30

 前編では、豊田西の元監督で就任4年目の平林宏監督が、星城の選手たちをどのように育成したのか。そのプロセスや背景、さらには実際に選手たちに平林監督の指導で自身のプレーにどのような変化があったのか、お話を伺った。後編では今春の尾東大会で得た自信と夏への意気込みに迫りました。

春の大会で課題となったバントと守備を克服し、尾東大会優勝

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左から藤田、木村、小笠原のクリーンアップ

 夏の大会前に星城に立て直しの機会が訪れた。それは、毎年5月に開催される尾東大会である。愛知県は各地でローカル大会が開催されるが、星城は尾東大会へ向けてもう一度、チーム像を見直した。平林監督は春季大会の敗戦について、
 「焦りから守備の破綻が出る野球でしたからね。逆風のなかフライを打ち上げてっていうね状況を読めずにというか普通の風ならスタンドに行ってるんでしょうけど。風強いから打ち上げるなとベンチでは言ってたんですけど、なかなか修正しきれずに敗戦したんです」。

 そのため星城がもう一度大事にしたのは守備とバントである。平林監督は選手たちに競り勝つために守備を重視することを伝えた。

 「今年のチームは、大差で勝つ、負けるときは競って負けているんですよ。それはどういうことかっていうと、チャンスで打てなかったりすると競るわけですよ。そういう点が弱い。なので選手たちたちには春の県大会以降、うちは攻撃野球じゃないぞ、ディフェンス野球なんだっていうことで競ったら負けないということを春の県大会以降テーマにしてやってるんですよ。したがって細かい攻撃ではバントをきちっと行う。そして守備もしっかりと守ることが大事になります」

 主将の小笠原は、「春の県大会は、雰囲気にのまれるなど反省点が多かった大会でした」と振り返り、尾東大会では「攻撃は水物。まずキャッチボールを中心とした守備から一球一球丁寧にやって、守備でリズムを作って攻撃に繋げるということを意識しました。バントについては打球を殺したりとかじゃなくて、しっかりボールを見て芯に当てることを意識しました」とテーマを設けた。日々の練習メニューは大きく変わらないが、例えばバント練習でも「一個一個の集中力とか、一球一球をしっかり試合を想定して成功率を上げていくことを意識しています」と、確実性を求めて練習を行った。

 すると尾東大会ではしっかりと成果が出た。

準々決勝 9対4 高蔵寺
準決勝   7対4 中部大春日丘
決勝     7対4 中部大第一

 平均7点以上を取って二季連続の優勝を決めた。4番・木村翔にも犠打の指示が出る徹底ぶりだった。

 平林監督は「尾東大会は有力校も出場します。そういう大会で優勝できたのは子供たちの自信になっていると思います」と選手たちの戦いぶりを振り返った。小笠原主将は
 「バントもしっかり決まりましたし、1イニングで何点も取ったというよりは、1イニング1イニングで取れるところでしっかりと着実に点を重ねていって、結果的に大きな得点になってよかったと思います」と笑顔。

 また、守備についても成果が出た。送球ミスが多かった三塁の藤田は「捕球姿勢」を意識して守備練習に取り組んだ。結果的に送球フォームも良くなってミスがなくなり、ライトを守る木村翔も送球を改善させた。

 二塁・谷村、遊撃・小林の二遊間は連携プレーを見直し、ミスを減らした。攻撃力に過信しすぎず、1つのアウトをしっかりと取る。大事なところで走者を進める堅実な野球で、星城はしっかりとチーム力アップを果たした。

[page_break最善の準備で頂点を目指す]

最善の準備で頂点を目指す

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星城野球部

 西愛知大会の組み合わせが決まり、7月1日に初戦を迎える。
 今年のチームについては「打撃力は私学4強(愛工大名電中京大中京享栄東邦)とひけをとらない」と平林監督が評するように、今年は強打者がずらりと揃う。

 1番谷村は豊田シニア時代、控えだったものの独学で打撃技術を築き上げたスラッガー。171センチと小柄ながら高校通算15本塁打を記録する。平林監督は「高校生ながら自分なりに考えて打撃を極めることができて頼もしい」と信頼する。2番・小林は「足は自信があるんですけどそれを生かせるよう打力も強化したいですし、盗塁技術を高めたい」と打撃と盗塁技術を強化している。

 主将の小笠原は通算9本塁打のものの、練習試合・公式戦を通じての打率は4割を超える左の好打者。4番木村は高校通算13本塁打を放つ右の強打者で、走塁・守備も良く走攻守三拍子揃った外野手。平林監督も「木村が打つとチームが乗る」と期待を込める。5番・藤田はチームナンバーワンの高校通算22本塁打を記録する大型スラッガー。そして6番・長坂は強肩強打の外野手で、高校通算10本塁打。尾東大会で活躍を見せ、評価を上げた。ここにバント技術が加わり、攻撃の引き出しが広がった。

 一方、課題は投手陣。右の技巧派・加藤成実など複数投手陣で勝負。夏へ向けて、140キロ近い速球を投げ込む2年生右腕・石黒 佑弥もキーマンの1人として期待されている。

 平林監督は「6月の段階で夏のメンバーがある程度決まり、そしてこの時期の練習試合は起用法・戦術を定めるためのもの。選手の得意不得意もわかれば、その選手に応じた戦術も出来上がってくる。代打・代走などの役割分担も決まっています。それは選手たちにも伝えてあげれば準備もできます。とにかく準備が大事なんです。出たとこ勝負ではよくないよと選手たちに伝えています」

 平林監督の言葉通り、偶然では勝ち上がれない組み合わせとなった。初戦の尾西を破ると、2回戦では西愛知の強豪・愛工大名電と対戦する可能性がある。だが、平林監督にはプレッシャーはない。
 「私学4強といわれるところを叩かないと甲子園には行けないと思ってますから」
 主将の小笠原も「自分たちは常に挑戦者として、目の前の1個1個を勝つだけ。その積み重ねで甲子園に行きたいです」と一戦一戦を全力で戦うことを誓った。

 平林体制になってから4年目。今年のチームが「一番、私の考えが浸透したチーム」と自負するチームはこれまで通り、最善の準備を尽くし、第100回の夏で下克上を果たす。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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