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東京学館船橋(西千葉) ホームラン目指す強打と豊かな投手陣で初甲子園へ

2018.05.22

 大阪桐蔭(大阪)が連覇を遂げたセンバツも終わり、いよいよ高校野球は第100回記念大会の夏へ。千葉県では第80回・第90回に続き、東千葉・西千葉に1校ずつ、計2校が甲子園に出場することになる。

 その中で西千葉の実力校として注目されるのが船橋市豊富にある東京学館船橋。昨秋は千葉県大会2回戦では県大会優勝の拓大紅陵と11対12と競りあうなど、公式戦5試合で46得点の打撃力がストロングポイントだ。では彼らは西千葉の頂点を狙うべく、何をさらに伸ばし、何を補おうとしているのか?監督と主力選手たちから聴いた。

「全員がホームランを1本打つ」打撃方針

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振り切るスイングでバッティング練習をする選手

 「打者の理想はホームラン。『卒業までには誰もがホームランを1本打とう』。それがウチのチーム方針です」
 高校球児のみならず、野球をするもの誰もが抱く「ホームラン」への憧れ。黒川 敏行監督はそんな夢を叶える案内人。それが強打・東京学館船橋の大きな柱である。

 よって練習でも黒川監督は選手の打撃フォームを極力いじらない。多少のオーバースイングになっても構わない。結果、取材日の打撃練習を見ても多くの選手がしっかりと振り切ったスイングをしている。

 試合でもバントは数えるほど。それも選手たちの個性を発揮するアプローチの1つだ。
「小技が少ないという声もありますし、強攻策が失敗すると、『なんでバントをしないんだ!』といわれます。でもうちはそれでもOK。とにかくうちは選手の個性を引き出して振っていくことが大事なんです」(黒川監督)当然、併殺打になっても叱ることはない。

 こういった東京学館船橋の環境下で才能を開花させたのが4番を務める右のスラッガー・川田 亮乃介(3年・一塁手・175センチ82キロ)である。もともと入学時は投手だった川田。高校2年夏まで本塁打は1本も、2年秋だけで6本を積み上げ。加えてその6本はいずれもインパクトを残す弾道となっている。

 黒川監督が「あいつのホームランは、打った瞬間、ホームランと分かる打球が打てる。さらに飛距離もすごくて、どこまで飛ばすんだという打球を打ってくれるんです」と証言すれば、川田自身も「フライになってもいいので、角度を付けて、打球を遠くへ飛ばすことを意識しています。監督からは思い切り空振り三振になってもいいといわれているので、自分の打撃スタイルに専念できます」と成果を話す。中でも関東大会ベスト8の健大高崎相手の本塁打は「健大高崎の青柳(博文)監督も、『川田君の長打力はすごいですね』と絶賛してくれたんですよ」と黒川監督が笑顔を見せるほどだった。

練習試合での自信は公式戦にもつながる。壮絶な打撃戦となった千葉県大会・拓大紅陵戦でも新チーム発足時から抱える足の痛みに耐えながら3安打7打点。

 1回表、二死二塁の場面で詰まりながら中前先制適時打を放つと、3回表、1対9とされた中での第2打席では、二死二、三塁から右中間を破る適時二塁打。さらに4回表には2点差に迫る満塁本塁打。この場面について川田は「ボールはよく見えていましたし、カウントはフルカウントでしたので、ストレートが来ると読んでいました。狙い通りストレートが来て、打ち損じすることなく打つことができました」と川田。試合には10対11で敗れたが4番打者は「打の東京学館船橋」のシンボルとして、千葉高校野球界へ大きなインパクトを与えた。

 現在は故障も癒え「長打力には自信があるので、打球をうまく運べる打ち方を完成させ、あとはその確率を高めることができれば、チームに貢献できると思います」と意気込む川田。昨秋の拓大紅陵戦で本塁打を放つなど打撃センスではチームトップクラスと評価される1番・本間 大祐(2年)らと共に、さらなる強打線形成への鍛錬が続く。

[page_break個性豊かな投手陣を強化し、西千葉の王者へ]

個性豊かな投手陣を強化し、西千葉の王者へ

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ラントレーニングに励む選手たち

 強打線に対し、拓大紅陵戦で12失点を喫し逆転サヨナラ負けを喫した投手陣に課題が残った昨秋の千葉大会。だが黒川監督に悲観の表情はない。
「甲子園に出場した強豪校との練習試合でも好投を見せていますし、決して能力は低くない。潜在能力が高い投手は多いです」。その中心となるのが貫井 瑠力(3年)、佐藤 秀俊(3年)、松永 幸誠(2年)、本間 雄太(2年)の4人だ。

 貫井は右スリークォーターから最速135キロの速球とスライダーが持ち味。佐藤は130キロ後半の速球を投げ込む。また、松永は183センチの長身から繰り出す130キロ前半の速球、スライダーを武器にする右本格派。本間はストレートの最速は130キロながら、得意とするスラーブが120キロ中盤と球速差がないのが特徴で、4人ともそれぞれ個性を持っている。

 あとは公式戦で力を発揮できるか。4投手の意気も高い。
「先発した拓大紅陵戦では本当に緊張してしまった。良い経験になりましたし、自分でもレベルアップしている感じはあります」と話す佐藤は140キロに到達し、エースとして活躍することを目指せば、昨秋「背番号1」だった貫井は「秋、公式戦で活躍できなかったのは本当に悔しかったです。フォームの安定感を課題にして取り組んできました。同じ3年生の佐藤に負けず競い合って活躍したいです」と力強いコメント。

 また、拓大紅陵戦で3回から7回まで無失点に抑える好リリーフを見せた松永は「あの試合は投げていて楽しかったです。でもまだまだ自分の実力が足りないですし。体も強くしてもっとレベルアップをしたい」と話し、本間も「自分はストレートが弱いので、もっとストレートを強くして、自分の変化球がより生きるような投球を見せていきたいです」と語った。

 春の千葉県大会では地区予選で2試合連続で2桁得点での県大会進出。ただ、県大会では四街道に3対2、2回戦では東京学館浦安に0対2で敗れた東京学館船橋。主将の高橋 拓人(3年)も「拓大紅陵戦はあと一歩まで追いつめていたので、負けて本当に悔しい試合でした。その後の練習試合でも競った試合になれば拓大紅陵戦の話を必ずしますし、接戦で勝てるチームになることをテーマにしています」と話す中、勝ち抜く打力・打力を発揮する流れを作る投手力が夏への新たな課題となった。

 あと2ヶ月を切った夏本番。センバツ出場の中央学院、秋の4強・習志野、強豪・専大松戸、船橋市内のライバルでもある市立船橋と同じ地区として戦うことになる西千葉大会へ向け、東京学館船橋は投打に研鑚を積み、相手の想像を超える野球で、西千葉の頂点、そして初甲子園を奪い取っていく。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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