日大二(西東京)伝統校復活へ「打撃力強化」「絶対的エースの確立」で目指す100回大会
東京都杉並区。閑静な住宅街の中にある日大二高等学校。春夏6回の甲子園出場を誇る伝統校は、2009年夏、西東京大会準優勝を果たすと、昨夏も準決勝まで勝ち進むなど、近年再びその輝きを増しつつある。記念すべき100回大会に伝統校の復活はあるか。日大二の今に迫る。
打撃力強化への取り組み
日大二野球部の選手達
「強力打線」昨夏、日大二はそう呼ぶにふさわしい攻撃力を持ったチームだった。
準決勝 東海大菅生 11 -8 日大二
準々決勝 日大二11 – 8 佼成学園
5回戦 日大二7 – 4 国士舘
4回戦 日大二12 – 4 明法
3回戦 日大二10 – 4 都立府中工
2回戦 日大二11 – 2 東農大一
「今までは守備を大事にしていたのですが、夏は打てないと勝てない。そのため前のチームから考え方を変えました」と田中監督はその理由を明かす。
打撃のチームを作り上げるには、一貫性がないと出来上がらない。大事にしているのは結果にとらわれないことだ。
「ゴロを打て、フライを打ち上げるなとよくいわれますがそれは気にしないことです。とにかく振れ、とにかく打て!そこにこだわりました」
そうする事で選手には迷いはなくなった。主将の真砂 和樹は「目的が明確になっているのでやりやすいですし、指摘がしやすい」と語る。
選手たちは「振りまかす」ということをテーマに日々のバットを振っている。
「どんな球でもフルスイング。冬場はそこにこだわって振り抜いていきました」
強力打線形成へ。打撃練習と同様にこだわってきたのはトレーニングだ。日大二は11月、3月に測定を行う。ベンチプレス、30メートル走、背筋力などの数値を測定。全体的な筋力を高めることが強く振れることにつながると考えている。
だからこそ、チームとしてオフシーズンのトレーニングにしっかりと取り組んだ。
その考えはベスト4入りした昨年の3年生たちの姿が大きく影響している。
「去年の先輩たちと一緒に取り組んできて、本当に真剣に打撃練習とトレーニングに打ち込んでいましたし、活気ある姿勢で取り組んでいました。僕たちも見習わないといけないと思っています」と先輩越えを目指している。
そして、ハードなオフシーズンを越えて迎えた春季大会。残念ながら初戦で東海大菅生に、昨夏に続き敗退したものの、打線は6点をあげるなど夏への期待を見せた。
そんな今年の中心打者は左の好打者・青木 優大。175センチ69キロと細身に見えるがベンチプレス120キロを持ち上げるパワーを持っており、オフシーズンはそのパワーを生かすよう、長打力強化をテーマに取り組んできた。
また、183センチ90キロと恵まれた体格から長打を連発する右のスラッガー・高野 雄貴は秋までで7本塁打。この春は「確実性」をテーマに打撃練習に打ち込んだ。そしてエースの戸谷は打っても5番に座り、一発長打を秘める。
絶対的エースを確立へ
夏を勝ち抜くには絶対的なエースの確立が必要だ
一方で、夏に勝ち上がるには投手力強化も課題となっている。田中監督は「投手力については去年より上だと思います。絶対的なエースとなりそうな戸谷がいる。戸谷はボールに力がありますし、投打がかみ合えばと思います」とエースの成長を期待する。
戸谷は「自分ももっと打てるようになりたいですし、チームも打てるために練習に取り組んでいますが、やっぱり良い投手になると打てない試合があると思います。自分はそういう試合で抑えられる投手になりたい。昨秋は前半が良くても、後半にバテて打たれる試合がありました。そういうことをなくして、頼りにされるような投手になりたい」と意気込む。目指すスピードは145キロ。ワンランク上の実力を発揮できれば、高いレベルのチームも抑えることができると考えている。
最後に主将の真砂は「すべては夏。しっかりと照準を合わせて戦っていきたいです」と力を込めて語った。
日大三、早稲田実業、東海大菅生など強豪がひしめく西東京。激戦を勝ち抜き、甲子園出場をつかむことができるのか。
昨年は、「打撃力強化」というチームの方針転換が上手くいき、一気に夏ベスト4まで駆け上り、チームにとって大きな成功体験を得ることができた。今年は打撃力強化を継続しつつ、絶対的なエースを確立し、36年ぶりの甲子園出場を狙う。夏まで残り約2ヶ月。進化はここからだ。
(文=河嶋宗一)