第470回 富島高校【後編】「普通の学校」でも勝てることを選抜でも証明したい2018年03月12日

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【目次】
[1]「逆転の富島」
[2]富島野球を貫き、九州大会決勝へ

[3]勝ちにこだわる!


 1月26日。選抜への初出場を決めた富島。昨秋は県大会準優勝で乗り込んだ九州大会。九州を代表する学校との激戦の末、見事準優勝を飾りセンバツの切符を掴んだ。しかしここに至るまでは楽な道のりではなかった。現在の監督、濵田 登監督が就任してからどのように甲子園まで辿り着いたのか。この軌跡を追っていく。

「逆転の富島」


フリーバッティングに打ち込む選手(富島)

 現在の富島の部員数は選手32人、マネジャー4人の36人。選手のうち17人が地元・日向市の中学校の出身で、その他も延岡市や西都市など宮崎県北部地区の出身者で占める。中川大輝主将(2年)ら現在の部員が小中学生の頃、富島は野球の「進学先」に考える学校ではなかった。それでも彼らが富島にやって来たのは「濵田監督の存在」(中川主将)が大きかった。宮崎商を甲子園に導いた熱血漢が就任し、現2年生が中3だった秋に「九州大会に出たのは大きなインパクトがあった」とエース黒木将胤(2年)は言う。

 それなりに選手は集まったといっても、甲子園常連校の強豪私学レベルの素材がそろったわけではない。17年秋の九州大会決勝で創成館と対戦し、応援に駆け付けた和田教頭は「相手に比べて、うちの選手があまりに小さいので勝負になるのかと心配しました」と話す。ベンチ入り20人の平均身長は170.2cm、体重は64.1kg。一番大きな選手でもレフトの中村健星(2年)の178cm、76kgと180cmに届いていない。セカンドの窪田晃誠(2年)は162cm、58kgである。一冬越えたセンバツでも「見た目」で圧倒できるチームでないことは確かだ。

 そんなメンバーだが新チームになった頃、濵田監督はある程度「戦える」手応えは感じていたという。エースの右腕・黒木将は最速138キロの直球にキレのあるスライダーがあり、計算ができる。守備の要になるセカンド・窪田、ショートの松浦佑星(1年)が信頼のおける二遊間で安定した守備ができる。1番・松浦、2番・中川主将と足と打力のある選手を上位に置き、守備でリズムを作り、機動力でかき回す野球ができそうなメンバーがそろっていた。

まずは夏休みに徹底して鍛えた。夏休み中はほぼ毎日、午前、午後と終日練習が続いた。走者を置いたシートノックや紅白戦など、「実戦を常に意識した練習」(濵田監督)を繰り返した。そのかいもあって秋の県大会の前哨戦となる県北大会では高千穂聖心ウルスラに勝ち、最大のライバル・延岡学園にも4対3で競り勝ち、秋の大会のシード権を手にする。「先制し主導権を握ればある程度やれる」力を持っていることは確かめられた。一方で先制されたり、途中で逆転されると、「弱い」という課題も練習試合などを通じて浮き彫りになった。

 その懸念が秋の県大会初戦の小林戦で露呈する。3回まで5対1とリードして主導権を握ったかに思われたが、中盤、守備が乱れ7回に一挙5点を失い、5対7と逆転された。9回表、ここで点をとらなければ今のセンバツ初出場の快挙も幻と消えていたわけだが、「練習で調子が良かったので出した」(濵田監督)背番号19の代打・黒木剛志(1年)がレフト前に同点タイムリーを放ち、続く黒田直人(1年)の右中間三塁打で勝ち越し。1年生コンビの活躍で辛うじて勝利を手にした。

続く鵬翔戦、こちらは前年の1年生大会で敗れた相手に先制され、シーソーゲームが続き、9回表まで4対6とやはり2点ビハインドだったが、土壇場9回裏で中川主将のタイムリーで同点に追いつき、延長10回、山下蒼生(2年)がレフトオーバーの長打を放ちで劇的なサヨナラ勝ちを収めている。

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富島 【高校別データ】

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プロフィール

政純一郎
政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
  • 生年月日 1974年12月18日
  • 出身地 鹿児島市
  • ■ 経歴
    鶴丸高校―同志社大
  • ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
  • ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
  • ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
  • ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
  • ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
  • ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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