Column

日本航空石川(石川)「優勝旗を持ち帰り、石川の歴史を塗り替える」

2018.02.12

 昨夏の甲子園メンバーは18人中9人が下級生。経験豊富な選手が多く残る新チームは打撃力に自信を持ち、公式戦11試合で平均8.82得点を挙げた。昨秋の石川大会では準決勝まで全て2桁得点で圧倒。決勝でも星稜を相手に序盤で8-2と大量リードする。終盤に差し掛かったところで猛攻を浴び9-10で敗れたが、北信越大会でも決勝の舞台で再び相見えると10-0で完勝。初めて北信越大会を制した。さらに各地区の優勝校が集う明治神宮大会でも2試合で28安打を放ち、強打を印象付けた。
 2~3週間の間に一気に日程が消化される夏ならば、全員が好調な状態で大会を迎えたチームが高い得点力を発揮することは珍しくない。しかし秋の大会は土日祝日に行われるため試合日程の間隔が空く。にもかかわらず、日本航空石川は新チームの初戦となった9月10日の輪島戦から11月12日の静岡戦まで、2ヶ月に渡って強力打線が火を噴き続けた。この破壊力、間違いなく本物だ。

自慢の強打に加え、機動力にも磨きを

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打線の中心となる上田優弥選手(日本航空石川)

 打線の中心には1年夏からクリーンアップの一角を任された左の長距離砲、上田優弥(2年)が座る。昨夏の甲子園では爆発とはならなかったが、頼れる4番は「甲子園の時はノーステップで打ってたんですけど足を上げてしっかりと振るようにしました。しっかりとホームランも出て長打もいっぱい出たんで足を上げた方が確実性と長打が生かされたかなと思います」とモデルチェンジに成功。昨秋の公式戦で放った3発を加えて高校通算本塁打を24本とした。2季連続出場となる甲子園では右中間へのアーチを狙う。
 しかも今年の打線の強みは上田の前後にも強打者が並ぶこと。3番を打つ原田竜聖(2年)や5番の長谷川拳伸(2年)は勝負強く、2番の的場拓真(2年)6番の小板慎之助(2年)にも十分主軸を打てるだけの長打力がある。その証拠につなぎの打者が置かれることが多い2番だが、的場はベンチプレスで100kgを持ち上げるパワーの持ち主。打順に関係なく一発の打てる打線は右の速球派から左の軟投派までどんなタイプの投手も苦にせず、競った終盤以外はほとんどバントを使わない。昨秋、神宮大会初戦の日大三とのタイブレークでも無死一、二塁から原田はバントではなくヒッティング。ライト前に運んでチャンスを拡大し、最後はパスボールで決着した。強打のチームが勝ち上がるのが近年の流れ。冬はさらに得点力を高めるため投球の軌道を見てショーバンゴーの練習を繰り返すなど機動力にも磨きをかける。

[page_break背番号1を巡る争いは三つ巴の争い]

背番号1を巡る争いは三つ巴の争い

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室内練習場でロングティーを行う様子

 投手陣で昨秋にエース番号をつけたのは杉本壮志(2年)。コントロールとキレで勝負する左腕で決め球のチェンジアップに自信を持つ。また、元は野手だったため打撃も良い。星稜戦では場外弾も放っている。
 投手に転向したのは1年秋。Cチームの試合に助っ人として参加していた時、投手陣が打ち込まれ中学時代に投手経験のあった杉本がマウンドに上がった。そこでの好投がコーチの目に留まり翌日から投手陣に加わると1年間で体重は10kg、球速は20km/hアップし周囲からは「覚醒したな」と声をかけるほどの成長を遂げた。

 杉本と同じく昨夏の甲子園のマウンドを経験している大橋修人(2年)はストレートが魅力の本格派右腕。甲子園で計測した145km/hが現在のマックスだ。制球面に課題を残していたが徐々に安定感を増してきており選抜では「自分のマックスを更新したい。150近い球速を出せるよう取り組んでいるので、去年は短いイニングしか投げていないので先発して長いイニングを任せられるように。チームの目標である全国制覇を達成したいです」と意気込む。
 さらに左右の2枚看板に加えて昨秋の石川大会期間中に重吉翼(1年)が頭角を現した。夏の練習試合で投げてはいたが秋はギリギリのところでメンバー漏れ。石川大会で背番号をつけることは出来なかった。しかし1ヶ月の間に球速を10km/hアップさせるなど急成長。石川大会終了後に行われた紅白戦ではAチームを2安打完封した。公式戦デビューは北信越大会初戦という大事な試合。緊張はあったというが試合が始まると本領を発揮し2安打完封、起用した中村隆監督の期待を超える好投を見せた。能力的にも先輩2人と遜色なく、背番号1を巡る争いは三つ巴となっている。

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石川に優勝旗を持ち帰り、歴史を塗り替える

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キャプテンの小坂敏輝選手

 今年のチームは打つ、投げるの力は全国で勝ち上がれるだけのものがある。ただキャプテンの小坂敏輝(2年)が印象に残っている試合として挙げたのは石川大会決勝の星稜戦、大差で勝利した北信越大会決勝ではなく逆転負けを喫した方の試合だ。
 「このチームの弱い部分が全部出た試合でした。練習試合でも守備のミスが続いて1イニングに失点が多くなることがあったんですけど、それが出てしまった。チーム状態が1番知れた試合かな。あの負けが無かったら神宮に出れなかったと思います」神宮大会でも静岡の隙を突く走塁やバランスの取れた野球を見て学ぶことが出来た。旧チームが掲げた目標は「甲子園出場」で見事に達成した。
新チームの目標は「全国制覇」この冬で荒削りな面にきめ細かさが加われば、実現が見えてくる。

 

 実は春夏合わせて190回近く行われた春夏の甲子園大会で石川県勢はまだ優勝経験が無い。
 「歴史を塗り替えるっていう事はまだ誰もやったことがないことなので、挑戦をしようという気持ちはあるので優勝旗を持って帰ってくることですね」指揮官からこういう言葉が出てくるのは実現する可能性を感じているからこそ。
 1月26日に選抜出場決定の吉報が届いたが年末年始にもビッグニュースがあった。ラグビー部が石川県勢初の全国ベスト8入り。準々決勝でも高校日本代表を10人擁する絶対王者、東福岡から先制トライを奪うなど、前半は互角に渡り合った。「毎年冬場はラグビー部から刺激をいただきますけども、ラグビー部は石川県の歴史を塗り替えたということでそれに続こうと言う話は新年の挨拶でしました」と中村監督。2018年の冬から春にかけて日本航空石川が石川県を熱くさせる。

(取材・文=小中 翔太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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