第441回 樟南高等学校(鹿児島)緊張感と集中力 〜「樟南らしさ」とは何か〜2017年07月06日

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[1]バッテリーで苦しむ
[2]緊張感と集中力
[3]自主性と確固たる個の強さ


「バッテリーを中心とした守りの野球」「バント野球」「緻密な野球」…樟南の野球には明確な「カラー」がある。長年、鹿児島の高校野球の取材をしていて「樟南らしい勝ち方だった」「樟南らしさが発揮できなかった」などの表現をこれまで度々使っていた。県内には鹿児島実神村学園など全国クラスの強豪校があり、それぞれのチームにカラーや特徴はあるが「らしさ」を強調して表現した記憶があまりない。

 「樟南らしさ」を顕著に象徴する試合が2016年夏、鹿児島実との決勝戦だろう。県内最強の鉾=攻撃力を持つ鹿児島実、最強の盾=守備力を持つ樟南、「鉾盾の争い」は、樟南の「盾」が鹿児島実の「鉾」を機能させず、史上初となる延長15回引き分け、再試合による決勝戦を制して県内最多となる19回目の夏の甲子園を手にした。

 あれから1年、現チームは樟南らしさを存分に発揮できず、もがき苦しんできた。それでも春、NHK旗と4強入りし、第4シードとして夏の連覇、20回目の甲子園出場を目指す。樟南らしさとは何か、あらためて考えてみたくて17年夏開幕を直前に控えた今、樟南のグラウンドに足を運んだ。

バッテリーで苦しむ

田中 李毅耶(樟南)

「うちの野球はバッテリーを中心にした守備が基本ですが、そこがしっかりできなくて苦しんだ1年でした」

 開口一番に山之口和也監督が「バッテリーを中心とした守備」発したように樟南野球の基本には、まず「バッテリー」があり、今年はそこをきちんと確立させるための試行錯誤が続いた1年だった。

 16年夏には浜屋 将太(三菱日立)、畠中 優大(中央大)という完投能力のある左腕2人に、前川 大成主将(駒沢大)というリーダーシップ能力の優れた主将がいた。彼らは1年秋からエースバッテリーであり、丸2年間チームをけん引した「経験」があった。右腕・田中 李毅耶(3年)、捕手・松本 連(3年)、新チームのエースバッテリー候補の2人は2年夏の甲子園でベンチ入りはしたが、経験不足は否めなかった。

 それでも、甲子園から帰って1週間あまりで迎えた鹿児島市内大会では準優勝して秋の県大会のシード権をとった。新チームのスタートは他校より約1カ月遅れ、練習も試合経験も絶対的に不足した状態で迎えるのは、夏の甲子園に出たどのチームも抱える宿命だが「甲子園で最良のものを見てきたという経験と、今度は自分たちがやらなければならないという緊張感」(山之口監督)を持って大会に臨めたことが功を奏した。

 だが、秋の県大会では3回戦れいめいに逆転負けを喫する。互いにミスの多い試合だったが、決勝点はバッテリーの暴投で入るという、まさしく樟南らしくない敗戦だった。「バッテリーの経験不足が出てしまった」(山之口監督)

 再起を期して冬場のトレーニングに入ったが、12月に田中が気胸を患い2カ月間トレーニングができなかった。2月にようやく練習再開できたが再発。左腕・谷口佑歩(3年)を急きょエースに抜擢し、臨んだのが春の大会だった。

 谷口の成長もあり、秋4強の武岡台、好投手・石川槙貴(3年)を擁する鹿児島城西に競り勝ち、春は4強入り。NHK旗でも4強入りしたが、準決勝では優勝した神村学園を相手に1対12で7回コールド負けの大敗を喫した。2大会連続4強入りは普通のチームなら立派な成績だが、甲子園を宿命づけられた樟南からすれば「九州大会や県大会決勝といった舞台を経験できなかった」(山之口監督)もの足りない成績ということになる。

 NHK旗まではエース番号をつけていた谷口も、ここへきて制球難から試合を作れないことが続いた。夏は現時点で一番調子が良い2年生左腕・松本晴がエース番号をつける。これを兄である連がリードし、右上手の田中、右横手の中原輝竜(3年)、左上手の宮下尚哉(2年)、谷口、いずれかの継投が夏の投手起用の柱となる。樟南野球の文字通り原動力となるバッテリーが「投げさせてみないと分からない」(山之口監督)状態で迎える夏となる。

 昨年もレギュラーだったセカンドの折尾 昂靖主将(3年)は「昨年は2人とも完投ができ、三振もとれる投手だったので守りやすかったけど、今年は何が起こるか分からないことを常に意識しながら守っている」という。バッテリーもさることながらセカンド以外のショート、センターなどのセンターラインも固定しきれなかった。当然打順も流動的で、これというかたちを春やNHK旗では明確に示せなかった。

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前川 大成(樟南) 【選手名鑑】
前田 大和(樟南) 【選手名鑑】
松本 連(樟南) 【選手名鑑】
樟南 【高校別データ】
樟南二 【高校別データ】

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プロフィール

政純一郎
政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
  • 生年月日 1974年12月18日
  • 出身地 鹿児島市
  • ■ 経歴
    鶴丸高校―同志社大
  • ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
  • ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
  • ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
  • ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
  • ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
  • ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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