ドラフト高校生 野手編 「1996年世代は個性派な野手が勢揃い!」
今年の野手は捕手・内野手・外野手それぞれで個性的な選手が揃っていて、面白い年だ。そんな選手たちに迫っていきたい。
投手編【前編】右の本格派が豊富な1996年世代
【後編】西日本を代表する右の本格派と高校生左腕を紹介!
高校生を代表するスラッガー・岡本和真・高濱祐仁
高濱 祐仁(横浜)
今年は岡本 和真(智弁学園)(2014年3月インタビュー・2014年8月インタビュー)が一番の注目株だろう。高校通算73本塁打の長打力が一番の注目だが、岡本の良さは横着さがないことだ。今までのスラッガーといえば、やんちゃ坊主ともいえる選手が多かった。岡本はとてもスラッガーとは思えないほどのチーム思いの打撃をする。
下手なボール球に手を出すことはないし、勝負を避けられても嫌な顔をしない。スラッガータイプの選手が一番苦労するのが、変化球の対応だが、岡本の場合、変化球の対応も良い。だがストレートをしっかりと捉えきれないのが課題なので、ストレートの対応力を高めれば、プロでも存在感を示せるだろう。
木製バットの対応は18Uの試合を見ていても、最も適応していた。一塁手なので、使うポジションが限られるが、将来のスラッガー候補が欲しい球団にとってはおススメの選手といえるだろう。
岡本と並ぶスラッガーとして注目される高濱 祐仁(横浜)。不調だった2年の時よりもスイング軌道がスムーズになり、的確にボールを捉えることが出来るようになった。アベレージヒッターでウリにするのか、スラッガーとしてウリにするのか、方向性がイマイチ見えなかったが、NPBの舞台では自慢の長打力に磨きをかけた打撃を見たい。
栗原、清水など個性派揃いの高校生捕手たち
栗原 陵矢(春江工)
今年は捕手のドラフト候補が多いのが特徴だ。ドラフト候補に挙がる捕手といえば、打力があり、強肩で、体格の良い捕手がドラフト候補に挙がる事が多いが、今年はそのタイプにあてはまらない捕手も指名候補に挙がっており、個性的な選手が揃った年ともいえる。
まず18Uで主将を務めた栗原 陵矢(春江工)は捕手として必要なセンス、頭脳の良さ、スローイングの安定性、フットワークの良さが備わった選手。木製バットに対しても広角に打ち返す打撃が見られた。攻守ともに技術的にもしっかりしていて、機転が利く。将来の正捕手候補として頭に入れたい選手だ。
また強肩強打の捕手という観点からだと、スローイングタイム1.8秒台を叩き出し、さらに長打力を秘め、投手への気配りに長けた山川 晃司(福岡工大城東)や、同じく1.9秒台の強肩に、一発を秘めた長打力がウリの清水 優心(九州国際大附)(インタビュー)も魅力的な逸材だ。また1.9秒台の強肩をウリにして、パンチ力ある打撃が魅力の多田 大輔(鳴門渦潮)にも注目したい。
内野手を見るとスピード感溢れる二塁守備、走塁、さらにヘッドスピードが速い打撃をウリにする小郷 裕哉(関西)、ヘッドスピードが速く、常に球速の速い打球を飛ばす遊撃手・古澤 勝吾(九州国際大附)などが挙げられる。
その他、甲子園で活躍を見せた植田 海(近江)は、盗塁タイム3.3秒前後で駆け抜ける俊足、守備範囲の広い守備、広角に打ち分ける打撃と走攻守三拍子揃った逸材で、将来のショートストップ候補が欲しい球団は是非狙っていきたいところだろう。
また梶谷 隆幸(インタビュー)を彷彿とさせるような縦のスイング軌道から鋭い打球を飛ばす宗 佑磨(横浜隼人)は将来的に長打が打てる野手へ育ちそうだ。そして関東屈指の大型遊撃手・野平 大樹(樹徳)はパンチ力ある打撃に加え、強肩が光る遊撃守備が魅力。4年間かければ強打の内野手に成長を遂げていきそうだ。
内野手では桒原などの強打型野手、外野手では脇本、浅間のようなスピード系野手に注目
脇本 直人(健大高崎)
また全国制覇をした大阪桐蔭からは香月 一也(インタビュー)が志望届を提出。香月は重厚な下半身を土台に力強い打球を飛ばす中距離打者だ。
木製バットに切り替えても広角に打ち分ける柔軟な打撃を見せていた。突出したポテンシャルがあるわけではなく、すべてにおいて高い水準を見せる選手だ。鈴木 大地(千葉ロッテ)のような選手を目指していくのが理想的だろう。
佐賀県ナンバーワン遊撃手と呼ばれる山田 遙楓(佐賀工)や昨年、春夏の甲子園で本塁打を放ったスラッガー・桑原 樹(常葉菊川)、同じく今年の選抜と選手権で本塁打を放った深江 大晟(八戸学院光星)。またチームではエースだったが、俊敏なフィールディング、シュアな打撃が評価される木村 聡司(常葉橘)、パンチ力ある打撃がウリの中泉 圭祐(日大三島)、強肩がウリの遊撃手・佐藤 正尭(愛知啓成)にも注目だ。
外野手では走攻守のバランスの良い浅間 大基(横浜)(インタビュー)、走れる選手ならば、脇本 直人(健大高崎)(インタビュー)が2トップになるだろう。浅間は打球反応が良い外野守備に加え、ベースランニングの早さ、木製バットでも長打に出来る技術など、おそらく早い段階から二軍でかなり試合出場を経験する選手になっていくに違いない。全てにおいてセンスのある選手なので、高いレベルにいってもすぐに順応していきそうだ。
山下亜文(小松大谷)
脇本は浅間のようなすぐに対応するセンスの良さを持った選手ではないが、不器用に見えても、一度掴んだ技術を大きな強みにすることが出来る選手。もともとは足が速くても盗塁が苦手なようだったが、根気強く取り組み、走れる選手へと成長。そのスピードは誰にも止められないものがあった。そしてパンチ力ある打撃も魅力的だ。
他では投手として最速140キロの速球、キレのあるスライダーで押す投球を見せながら、打者としても鋭い打球を飛ばし、守備範囲の広い外野守備を見せる山下 亜文(小松大谷)、最速140キロの速球に、高校通算25本塁打を記録する強打の外野手・佐田 梨貴人(京都国際)も候補に挙がるだろう。
大学・社会人は有力な候補が少ない。また今年、高卒4年目の山田 哲人(履正社-東京ヤクルト)が今シーズン右打者最多安打を更新する193安打を記録。高卒選手が早期で活躍している現状を踏まえると、有望な高校生野手を上位で指名する球団も多くなるだろう。各球団の戦略にも注目だ。
(文=編集部 河嶋 宗一)