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奥川恭伸の完成形は菅野智之か?ある課題を乗り越えれば、毎年沢村賞を狙える投手だ!

2019.10.02

 奥川恭伸星稜)がプロ志望届を提出した。焦点となるのは、奥川はプロで通用するのか?という話になるが、突出した能力、成績面を見れば、間違いなく通用する投手だ。プロ野球の解説者からは1年目から一軍で勝てるという評価もあるが、それは大げさではない。

奪三振率12.53 そして驚異のK/BB 20!!

奥川恭伸の完成形は菅野智之か?ある課題を乗り越えれば、毎年沢村賞を狙える投手だ! | 高校野球ドットコム
笑顔の奥川恭伸(星稜)

 ここで、改めて奥川の高校3年間の全国大会の成績を紹介したい。
・2年春 センバツ ベスト8
・2年夏 甲子園 2回戦
・2年秋 明治神宮大会 準優勝
・3年 センバツ 2回戦
・3年春 北信越大会優勝
・3年夏 甲子園 準優勝

 こうしてみると、奥川は世代のトップを走っているのがチームの成績から見ても分かる。失点を与えない投手だけではなく、四球を最小限にとどめ、三振も奪える投手だ。特に2年生秋になってからの数字は素晴らしい。全国大会・地方大会の成績は以下の通り。

 2年秋 北信越大会 33回 41奪三振 1与四球 自責点0

 2年秋 明治神宮大会 15.1回 26奪三振 2与四球 自責点0 
 3年春 センバツ 18回 27奪三振 1与四球 自責点2

 3年春 北信越大会 15回 17奪三振 無四球 自責点1

 3年夏 選手権 41.1回 51奪三振 5与四球 自責点5

 3年夏 W杯    7回 18奪三振 無四球 自責点1

通算 129.2回 180奪三振 9与四球 9自責点 防御率0.62 奪三振率12.53 K/BB 20
 投手成績・各項目の数字をみてもそのすごさが分かるが、特に注目したいのはK/BB。この数値は1つの四球あたりどれだけ三振を奪えるか表したもので、投手の能力を測る上で重要なデータとなるが、驚異の「20」。いかに奥川は制球力が優れて、三振を奪えるかが分かる。

 そんな奥川のピッチングを見ていると、ある投手を思い出す。菅野智之(巨人)だ。 

 四球、失点も少なく、なおかつ三振が奪えて、さらにステップ幅があまり広くなく、体の沈み込みが小さいフォームで投げる菅野と奥川は共通点は非常に多い。菅野もK/BBが優れており、特に2016年にマークした7.27は素晴らしかった。プロ野球の基準だと「3.50」以上で優秀と呼ばれており、いかに優秀なのかが分かる。

 これまで甲子園を沸かせた剛腕といえば、松坂大輔ダルビッシュ有田中将大藤浪晋太郎がいるが、数値面でいえば奥川は、この4人を軽々と上回っており、また23奪三振を記録した智辯和歌山戦では、終盤まで150キロ台を計測。さらに縦スライダー、140キロを超えるフォークの落差も抜群だった。

 投手としてはぐうの音も出ないほどの実績、能力を持った奥川だったが、彼の課題は「勤続疲労」だといえる。先日の国体でのピッチングはやはり甲子園、ワールドカップの疲労は抜け切れていない印象。

 奥川がプロで活躍するには、本人の努力はもちろんだが、球団がどういうプランで育てるかが大事。1年目から一軍でそれなりに投げられて、勝てる実力は十分にある。1年目から10勝できるという声もあるが、それも大げさではない。ただ大事なのは、年間通して投手タイトルを争える投手になるために、計画性をもって育成することである。まだ高卒1年目〜2年目だと大人の体になっていない段階なので、多くの球数を投げると勤続疲労でパフォーマンスダウンしてしまうリスクもある。計画的に球数を制限しながら育てることが大事だ。

 今年、高卒3年目の山本由伸が防御率1点台&最優秀防御率を受賞したが、奥川も故障なく、順調に上積みができれば、高卒3年目以降から毎年、沢村賞が狙える投手になるだろう。

記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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