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石川、森、韮澤…。プロ志望表明のU-18代表野手はプロで活躍できる魅力が備わっている

2019.09.26

  8月30日から開幕した第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ。世界一を目指した侍ジャパンU-18代表は残念ながら5位に終わってしまった。今回は投手編に続き、プロ志望の野手のパフォーマンスを紹介したい。

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プロ志望のU-18代表選手のパフォーマンスを総括!奥川、西、宮城らの活躍が光った投手陣

強肩捕手・山瀬慎之助と、打撃が光った韮澤雄也、石川 昂弥

石川、森、韮澤…。プロ志望表明のU-18代表野手はプロで活躍できる魅力が備わっている | 高校野球ドットコム
石川 昂弥(東邦)

山瀬慎之助星稜)
打撃成績 6試合 2打数0安打

 今年の高校生捕手を代表する強肩捕手。同世代の捕手に聞いても、「山瀬君のスローイングは本当に凄い」と絶賛。また星稜の林監督も「肩の強さならば私が見てきた中でもナンバーワン」と評価する。中学時代は投手も兼任し、投手のほうが活躍できると評価されながらも仲の良い奥川恭伸とバッテリーを組んで甲子園に行きたい夢を持った山瀬は捕手として甲子園に行くことを目指した。

 星稜では4度の甲子園出場に導き、準優勝1回、ベスト8は1回と計9勝に導いた。しかし今大会では6試合出場ながらもスタメン固定ではなかった。山瀬は「あまり試合に出場できなかったのは悔しかったです」と振り返り、攻守両面で課題があると振り返った。特に打撃面については「今のままでは全然ダメなので、打撃を強化していきたい」と新チームの練習に加わりながら打撃強化に取り組んでいる。

韮澤雄也花咲徳栄
打撃成績 8試合 29打数10安打4打点 打率.345

 不慣れな一塁手。今まで守っていた遊撃手とは違う一塁守備の難しさを感じながらも、打撃面では日本代表トップとなる10安打を記録。さらにスタメン出場した野手の中では最小の1三振と、自身がウリとするバットコントロールの高さを木製バットでも発揮した。

 今大会で対戦した投手の多くは140キロ越えの投手ばかり。そういう相手に実力を発揮したことはプラス評価だろう。こうした活躍が評価され、ベストナインを獲得。韮澤は「守備の評価は間違いなくないです。おそらく打撃だと思います」とコメント。

 また一塁の経験についても「もしプロにいくことがあれば、一塁をやることは絶対にあると思います。そういう経験ができたのはプラスになりました」と前向きに捉えている。ただ、プロの舞台では遊撃手として挑戦したい気持ちは当然ある。
「僕の遊撃守備は監督の岩井(隆)先生から教わったものです。その守備は世界大会では発揮できなかったですけど、プロの舞台では教えてもらったことを生かしていきたいです」

石川昂弥東邦
打撃成績 試合 24打数8安打 1本塁打9打点 打率.333

 今年の野手で最も評価をあげた選手だろう。夏の愛知大会終了後、すぐに木製バットで打撃練習を開始。150キロを超えるマシン相手に数をこなしながら、木製バットに慣れつつ、国際大会で対戦が予想される速球投手の対策も行ってきた。

 国内合宿から4番として活躍。特に大学代表との試合ではフェンス直撃の二塁打を含む「あれで自信になりました。世界大会の活躍も大学生から打てたことで、前向きに打席に入れました」と振り返る。そして今大会ではパナマ戦で3ラン。苦手だった内角ストレートを振りぬいた。

「あの打撃内容は僕にとって自信になりました」と石川はこの大会でさらにレベルアップした。ただ、その石川も長丁場の大会スケジュールに苦しんだ。9日間で8試合は誰もが経験がない。二次ラウンド以降、「体力面でいっぱいいっぱいで、全然自分の打撃ができませんでした」と精彩を欠いた。しかしそういう経験も大きなものとなったはずだ。

 石川の打撃について、巨人・長谷川国利スカウト部長も木製バットの対応力を絶賛。石川はプロで活躍する歴代の4番打者のように活躍ができるか。

[page_break: 遊撃手ながら外野ポジションもこなした遠藤 成、武岡 龍世、森敬斗]

遊撃手ながら外野ポジションもこなした遠藤 成、武岡 龍世、森敬斗

石川、森、韮澤…。プロ志望表明のU-18代表野手はプロで活躍できる魅力が備わっている | 高校野球ドットコム
森敬斗(桐蔭学園)

遠藤成東海大相模
打撃成績 8試合 16打数3安打 3打点

 高校通算45本塁打の強打の二刀流は5番打者を任されるなど信頼は高かった。初戦のスペイン戦で適時二塁打を放つなど、貢献度の高い活躍を見せたが、その後は10打数ノーヒットと苦しんだ。それでも、長谷川スカウト部長からも木製バットの対応力は高いと評価されており、力強いスイングから繰り出される打球の力強さは素晴らしいものがあった。

 遠藤は結果を残すために、右足の挙げ方を変更するなど試行錯誤する様子が見られた。このように工夫しながらも結果が出ない苦しさもプロの世界に進めば当然ある。先にこういう苦しさを味わったのは本人にとっては貴重な経験になったことは間違いない。

武岡龍世八戸学院光星
打撃成績 8試合 24打数3安打6打点

 外野手をこなしながら、遊撃手としてスタメン出場。武岡はどのポジションでもそつなくこなしてしまうセンスの良さがあるが、やはりショートの守備力は代表選手の中でも一番上手い。パナマ戦では雨が降り、試合前練習も行わず、慣れないグラウンドのまま試合に入る不運もありながらも粘り強く守った。

 天然芝で、デコボコのメイングラウンドでも難なく対応し、ダイレクトスローでアウトにしたプレーもあり、改めて遊撃手としての能力の高さを実感させてくれた。

 ただ打撃では3安打にとどまった、大会中、武岡は打撃の調子が上がらず、ぶら下がり取材をしても、苦しんでいる様子が伺えた。打撃ではしっかりとハマった時は素晴らしい打球を放ち、守備でも安定感のあるゴロ捌き、強肩と高いステージで活躍できる能力は備わっている。そのパフォーマンスを常に発揮できる技術をどう身に着けていくかが今後の課題となるだろう。

森敬斗桐蔭学園
打撃成績 8試合 25打数8安打1打点  打率.320

 日本代表は正規ポジションからのコンバートは必ずあるが、1番センター・森は最もハマった選手といえる。森の持ち味である脚力、強肩は良く生きていた。また上手いセンターと比べるともちろん差はある。ただ1年間、じっくりと練習していけば、名手レベルの選手になる可能性はある。

 打撃も体幹をうまく使ったフルスイングから放たれる打球は鋭さがあり、アメリカ戦では150キロを超える速球を投げ込む投手からいきなり三塁打を放った打撃は見事で、巨人の長谷川スカウト部長も木製バットの対応力が高いと絶賛している。

 俊足巧打型でも小さくまとまらず、長打を打てる野手の代表例といえば、セ・リーグ新人の最多安打記録を達成した近本光司の名前が浮かぶが、近本は170センチと小柄ながら9本塁打を放っている。173センチの森もそういう方向性で本塁打も打てる俊足巧打の野手に成長してほしい。それぐらい森のポテンシャルは素晴らしいものを秘めている。

記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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