昨秋のコールド負けから149キロ左腕へ!大変身を遂げた及川雅貴(横浜)
及川雅貴(横浜)
4月7日から開幕した春季神奈川県大会もベスト8が出揃った。3年連続の夏の甲子園出場を目指す横浜は、昨秋の県大会で鎌倉学園に痛恨のコールド負けを喫したが、しっかりと戦力を立て直し、今春はここまで全試合でコールド勝ちを収めている。その中で、著しい成長を見せているのが2年生左腕・及川雅貴だ。4回戦の横浜創学館戦で最速149キロのストレートを披露し、一躍、現役高校生最速左腕に躍り出た。
昨秋から平均球速が約10キロアップ!打者を寄せ付けない圧巻の投球
5回裏からマウンドに登った及川は、まず投球練習で魅せる。今年から電光掲示板が代わり、球速表示もされるようになった[stadium]保土ヶ谷球場[/stadium]。投球練習で及川が投じた球は、いきなり143キロを計測。その後、144キロ、147キロとみるみるスピードアップし、投げるたびに球場を沸かせた。
及川はまず、先頭打者の7番荒木 健太を高めの144キロのストレートで空振り三振に斬る。続く8番横田 嗣に対してはこの試合最速となる149キロのストレートで二ゴロに打ち取り、代打・伯耆原晃希に対しても三振に打ち取った。その後も140キロ台を連発し、打者7人に投げ4奪三振とほぼ完ぺきなピッチングを演出した。短いイニングとはいえ、ストレートはオール140キロ台。曲がりも鋭く130キロを超える高速スライダーも披露し、無四球と制球力の高さも示した。
瞬く間に高校生を代表する本格派左腕へ躍り出た及川だが、成長のきっかけとなったのが昨秋の鎌倉学園戦だった。先発マウンドに登った及川だが、140キロ台を連発した昨夏の甲子園とはほど遠いピッチングだった。あれだけ自慢だったストレートが走らない。1回裏に5番中野雅大にストレートを思いきりはじき返され満塁本塁打を浴び、2.1回を投げて6失点。この時、ストレートは常時120キロ後半から135キロ程度で、最速は138キロ。制球にも苦しみ、高校に入って初めての屈辱を味わった。
チームもコールド負けを喫し、敗戦の責任を痛感した及川は一冬で徹底的に肉体を鍛え上げたのだろう。マウンドに登る及川は、昨秋と比べても一段と体つきが逞しくなっていた。横浜創学館戦では球場のスピードガンでは常時140キロ~147キロを計測。そして筆者のスピードガンでも、140キロ~146キロを連発しており、昨秋と比べて平均球速が10キロ以上速くなっていたのである。
さらに、及川は投球フォームも良い。走者がいない場面でもセットポジションから始動し、右足を胸の近くまでバランスよく引き上げる。ヒップファーストで動く体重移動はスムーズで、テークバックでは内回りの旋回からトップを作り、リリースに入るまでの動きに無駄がない。さらに打者よりで離せる球持ちも良く、上半身と下半身の動きが連動しており、鋭く腕が振れる形となっている。183センチと大型ながらバランスよく体を使える投球フォームとなっており、冬に蓄えたエネルギーをしっかりと発揮することができている。
屈辱のコールド負けから立ち上がった及川。今度は自身の左腕で、チームを3年連続の夏の甲子園出場に導く。
(文・河嶋 宗一)