超高校級の右の技巧派・綱脇慧(花咲徳栄)。プロでの可能性について考える
9月22日、夏の甲子園優勝の花咲徳栄の立役者である清水 達也、綱脇 慧、西川 愛也の3人が提出した。その中で清水、西川は前評判も高く、ドラフト指名の可能性も十分に高い逸材だ。綱脇は、高校生トップレベルの好投手とはいえ、ストレートの最速は141キロで、普段の試合でも130キロ後半がほとんど。ドラフト候補として物足りなさを感じるかもしれない。しかし制球力、変化球の精度とともに、ハイレベル。さらにフォームの土台もよく、プロのトレーニング次第ではさらに球速もアップする可能性もある。甲子園では大会新記録となり6本塁打を放った中村奨成から三振を奪っている綱脇。今回は綱脇の成長の軌跡と今後の可能性について考えていきたい。
綱脇 慧(花咲徳栄)
中村奨成から三振を奪った配球
綱脇は2年生の時から実戦力の高さが評価されていた投手。綱脇は2年春、群馬で開催された春季関東大会で、選抜出場の東海大甲府と対戦。相手エース・菊地大輝との投げ合いとなった綱脇は自分の投球スタイルで東海大甲府打線を翻弄した。相手エース・菊地は、140キロ台の速球とキレのあるスライダーで勝負するのに対し、綱脇は常時130キロ前半と決して速くない。だが、球速表示以上と感じさせるストレートがあった。さらにカーブ、スライダーの精度も高く、野本真康(平成国際大)が綱脇の持ち味を存分に引き出し、完封勝利。全国レベルの強豪校相手にも、ピッチングができるすべがあった綱脇にはあった。しかし2年S寧の時は苦いピッチングも味わっている。
2度目の甲子園となった昨夏の甲子園。3回戦の作新学院戦で先発した綱脇は1.1回を投げ、5失点。さらに選抜甲子園を目指した秋季関東大会の慶應義塾戦でも撃ち込まれ、コールド負けを喫するなど、綱脇は全国レベルの大会では悔しい経験しかなかった。だが、この2つの負けが綱脇を大きくさせた。
盛岡大附・比嘉から三振を奪った配球
再び甲子園に登場した綱脇は見違えるような成長を見せていたのである。左足をしっかりと上げて、下半身主導のフォームから、繰り出すストレートは常時135キロ~141キロだが、回転数が高く、さらに両サイドへのコントロールも安定。120キロ前後のスライダー、120キロ前後のチェンジアップ、90キロ前後のカーブの3球種も、精度が高く、ストライクが取れる投手。さらに緩急が使えて、どのコースにもコントロールできる技術の高さは超高校級だ。
盛岡大附、広島広陵といった全国レベルと対戦することになっても、綱脇は動じず自分のピッチングを続けた。プロ志望届けを提出した比嘉をチェンジアップで空振り三振、中村には内角を中心につきながら、緩く曲がるスライダーで空振り三振に打ち取るなど、強打者封じに成功。36.1回を投げて22奪三振、自責点9。今年は大会通算68本塁打を記録した今大会。綱脇が許した被本塁打は1本のみ。突出した球速、変化球を持つわけではない綱脇が1本しかホームランを打たれていないのは、非常に評価ができる投球内容である。
綱脇の今後の可能性について述べると、まずフォーム技術が高く、しっかりと肉体強化をすれば、一気に化ける可能性を持った投手。ドラフト候補になる右投手は最速145キロオーバーが基準となるが、制球力がない145キロ投手よりも、制球力、投球術、フォーム技術が高い綱脇のほうがずっと評価できる。今回の優勝の実績がプロのスカウトがどう評価するのか、注目してみたい。
理想となる成長曲線は、高卒3年目でローテーション入りした二木康太(千葉ロッテ)。二木はプロ入り後、球速が130キロ台だった。そこから努力を重ね、ロッテには欠かせない先発右腕へ成長した。綱脇も、しっかりと積み上げをして、プロで活躍できる先発右腕へ成長することを期待したい。
(文=河嶋宗一)
注目記事
・2017年秋季大会 特設ページ