田浦文丸(秀岳館)のピッチングは高いステージで活躍する左投手のお手本だ
第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップで一番評価を上げた選手は、田浦文丸(秀岳館)だろう。リリーフを中心に13.1回を投げて29奪三振。最多奪三振とベストナインのリリーフ部門を受賞し、この大会で人生を変えた投手だった。その投球を紐解くと、田浦のピッチングは左腕投手のピッチングの基本を実践していた投手だといえる。
田浦文丸(秀岳館)
右打者への配球
田浦はストレートの球速が140キロ前後と決して突出して速いわけではないが、回転数が非常に高く、球速表示以上に勢いを感じさせる。素晴らしいのはストレートのコマンド能力。内角、外角へギリギリにコントロールする制球力の高さは田浦自身を助けることができていた。田浦の代名詞となったチェンジアップ。チェンジアップの基本的な握りであるOkボールの握りからスクリュー気味に落ちるチェンジアップで、世界の打者を翻弄した。
ストレートとチェンジアップのコンビネーションが抜群だった。投球を振り返れば、初登板となったアメリカ戦。田浦は6回のピンチから登板し、スライダー、チェンジアップを中心に追い込んでから、最後は右打者の内角ストレートで見逃し三振。リードする古賀悠斗の攻めも素晴らしく、相手打者の裏をかく配球だった。
左打者への配球
それからは快調なピッチング。田浦は「外国人の打者はどんどん振ってくるので、自分にとって投げやすかったです」と語るように、大会期間中のピッチングは打者を見下ろすようなピッチングだった。左打者にはスライダーを決め球に、右打者にはチェンジアップを決め球に多くの三振を積み上げた。かといって、変化球に頼りせず、ここぞという場面ではストレートで厳しいところに投げ込むなど、攻めの気持ちを忘れなかった。変化球多様する場面、ストレートで押す場面を、打者の反応を見ながら投げ込んでおり、まさに技巧派左腕のお手本といっていい投球だ。
ストレートも今大会145キロを計測するなど、ストレートにも力があった田浦。魔球・チェンジアップで評価を上げた田浦だが、内外角に投げ分ける制球力の高さもあり打者を見ながら状況に応じて配球を組み立てる田浦のピッチングは高い評価を受けるだろう。
プロ志望だという田浦。ドラフト会議ではどんな評価を受けて、プロ入りの扉をこじ開けるか楽しみだ。
(文=河嶋宗一)
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