最速146キロ左腕・山下輝(木更津総合)が今年の高校生No.1サウスポーである4つの理由
7月21日、木更津総合vs東京学館浦安戦。木更津総合の先発・山下輝の投球は、今年の高校生ナンバーワン左腕と印象付ける投球だった。春の県大会で、山下は最速146キロを計測。それだけではなく、出所が見にくいフォーム、ボールのキレ、冷静なマウンドさばきなど、去年のエース・早川隆久(現・早大)をいいとこどりをした投手と評したが、夏の山下はさらにパワーアップをしながらもテクニックもレベルアップするという理想的な成長曲線を描いていた。今回は山下がナンバーワン左腕と推せる4つの理由について紹介したい。
大きな欠点がない大型左腕
山下輝(木更津総合)
1.左腕投手なのに、先発投手なのに、平均球速が140キロ以上!
高校生の場合、140キロを出す投手でも、それがすべてではなく、130キロ台の方が多く、特に左腕投手はその比率は少なくなる。しかし山下の場合、対学館浦安戦の投球を振り返ると、1回~9回まですべてが140キロ超え。長いイニングを投げるとなると、球速が抑え目という投手は多いが、この日の山下は抜群の出来だった。初回は、平均球速141.5キロという立ち上がりで、特に凄かったのが、3回は、145キロを2球計測するなどオール140キロ超え。平均球速142.9キロと高校生左腕として破格の球速をたたき出した。終盤になってもその球速を衰えることなく、マックス146キロは8回表に出したもの。9回表には、ストレート5球のうち、4球が143キロ。真夏の中、140キロを維持するスタミナは驚異的といえるだろう。また山下のストレートだが、角度があり、重量感たっぷりのストレートは、今年の高校生左腕でもトップクラスだ。
2.制球力の高さ
球速が速いと、コントロールを乱しやすい投手が多い。今年もドラフト候補に挙がる左腕は、制球力を乱しやすく、ピッチング自体も荒削りなのだが、山下の場合、それはない。ここまで3試合に登板して、17イニングを投げて、わずか2四球と抜群の安定感を誇る。186センチと長身ながら体の使い方が良く、球もちの良さで、内外角に投げ分けられる制球力の高さは高校生としては高いレベルに達している。
3.開きが遅いフォーム、クイックの巧さから感じるテクニックの高さ
山下は、常時140キロ台のストレートを投げられる投手だが、長打を打たれることはほとんどなく、差し込まれるような当たりが多い。ワインドアップから始動し、右足をゆったりと引き上げていきながら、しっかりと踏み出して、着地に入った時、左ひじが頭の後ろから隠れた状態となり、なかなか見えない。そこから長い腕を生かして、一気に腕を振りだすのだから、想像以上に打ちにくい。さらにクイックタイムは1.2秒前後と標準タイムと器用さもうかがえる。
4.自分のテクニック、パフォーマンスを発揮できるメンタルの強さ
山下の強さはここに尽きる。気持ちは強い。ただそれを全面に出す投手ではなく、冷静に淡々と自分のやるべきことをやっていく投手で、どんな場面でも動じることなく、自分のピッチングができるところは早川に通じるものがある。
技術、ポテンシャル、メンタル、すべてを兼ね備えた山下。またレベルアップするために貪欲に追求してきた様子が夏のピッチングからも感じさせてくれた。目指すは2年連続の夏の甲子園出場。そして早川のように、千葉県、そして甲子園の歴史に名を残すピッチングを見せるだけだ。
(文=河嶋宗一)
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