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小笠原 慎之介「『甲子園優勝左腕』から『竜のエース』へ」

2017.03.29

「侍ジャパン」や「一流選手」の称号へ向かって日々、レベルアップに励んでいる「プロ野球ネクストヒーロー」。このコーナーでは高校野球で一時代を築いた選手たちのプロ入りまでのプロセスと現在の活躍に迫っていく。今回の主役は中日ドラゴンズ・小笠原 慎之介投手。昨年ルーキーイヤーで一軍2勝を上げた左腕の、華やかな舞台で結果を残してきた経歴を振り返る。

中学で硬式野球日本一。東海大相模高での成長

小笠原 慎之介「『甲子園優勝左腕』から『竜のエース』へ」 | 高校野球ドットコム

小笠原 慎之介(東海大相模時代)

 小学校1年時、神奈川県藤沢市の善行スポーツ少年団で野球を始めた小笠原 慎之介。藤沢市立善行中では湘南ボーイズに進み、東海大相模で一緒にプレーした長倉 蓮(東海大2年)、杉崎 成輝(東海大2年)と共に、2012年「第6回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ」優勝。愛媛県松山市開催の「15Uアジアチャレンジマッチ」侍ジャパンU-15代表にも杉崎と共に選出と中学時代から華やかな道を歩んできた。そして小笠原は東海大相模入学後すぐ、潜在能力の高さを見せる。春季神奈川県大会準々決勝湘南戦。8回表から登板した小笠原は最速141キロのストレートを武器にぐいぐいと押していき2回無失点。[stadium]保土ヶ谷球場[/stadium]に集まった高校野球ファンを驚かす衝撃デビューを飾った。

 華々しいデビューを飾った小笠原だが、一時は苦しい時期もあった。1年秋は神奈川県大会準決勝横浜戦で先発。左腕・伊藤 将司(現・国際武道大3年)と投げ合い4回まで無失点も、5回裏に先制点を許し降板しチームも0対4で敗戦。さらに2年春は左ひじ痛により登板ができなかった。
 

 光が見えたのは2年夏、2014年・神奈川大会である。救援投手としてスタンバイした小笠原は準決勝で再び横浜と対戦する。試合は5対3で東海大相模がリードするも9回表に二死満塁のピンチとなり、ここでマウンドに登った小笠原は、再び[stadium]横浜スタジアム[/stadium]の大観衆を驚かす。小笠原は高井大地に対し全球ストレート勝負。最速146キロで右飛に打ち取り、リベンジ達成と甲子園出場を果たした。さらに甲子園の盛岡大付(岩手)戦では1回3分の1を投げて3奪三振。上々の甲子園デビューを果たした。

 そして最終学年を迎えた小笠原は球速も最速149キロまで伸ばし、高校生を代表する左腕として注目を集めるようになる。しかし3年春、小笠原は関東大会で屈辱的ともいえる敗戦を味わうことになる。

[page_break:屈辱を糧に、夏の甲子園優勝投手に]

屈辱を糧に、夏の甲子園優勝投手に

 山梨・甲府で開催された春季関東大会準決勝まで駒を進めた東海大相模は、その年選抜ベスト4まで勝ち進んだ浦和学院(埼玉)と対戦。もちろん、先発は小笠原 慎之介である。常時140キロ台のストレートで立ち向かうも、なかなか空振りが奪えないまま迎えた5回表。二死二・三塁から2番・臺 浩卓(国際武道大2年)に144キロのストレートを弾き返される三塁打で2点の先制を許すと、8回表には3番・津田 翔希東洋大2年)、6番・荒木 裕也(東海大2年)にも本塁打を許し4失点で敗れた。

「チェンジアップ、スライダーの精度が低い」
浦和学院の強力打線を通じ、新たな課題を痛感した小笠原。夏に向かってひたすらに変化球を鍛える。かくして、最後の夏、小笠原は神奈川県のみならず日本トップクラスの左腕高校生投手へ成長した。

 神奈川大会では27回・30奪三振、防御率0.00。2年連続で夏の甲子園出場を果たす。甲子園でも快投は続いた。2回戦聖光学院(福島)戦で自己最速152キロを計測。その後の試合でも先発・リリーフで活躍を見せ、決勝仙台育英(宮城)戦は、6失点を喫しながらも最速149キロのストレートを武器に粘り強く立ち向かい、9回表には小笠原自身が決勝本塁打。10対6で甲子園の頂点を極めた東海大相模の中心にいたのは小笠原であった。

 甲子園を終えると小笠原は3年ぶりに侍ジャパンのユニフォームをまとう。「第27回 WBSC U-18 ワールドカップ」の侍ジャパンU-18代表選手に選ばれ、計2試合で8イニングを投げ防御率0.00と準優勝に貢献。そして迎えたドラフトでは北海道日本ハム、中日ドラゴンズから外れ1位指名を受け、中日が交渉権を獲得。小笠原は湘南ボーイズの先輩・高橋 周平関連記事とともにプレーすることが決まった。

全国制覇を胸に、次は竜のエースへ

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小笠原 慎之介(中日ドラゴンズ)

 昨年、小笠原は一軍キャンプ入りするなど早くから大きな期待をかけられる。5月31日の福岡ソフトバンク戦で早くもプロ初登板初先発。7四球を与えながらも5回1失点。そして9月4日、読売ジャイアンツ戦に先発した小笠原は、7回10奪三振、3失点の力投。直後にチームが逆転し、念願のプロ初勝利を手にした。さらに9月18日の東京ヤクルトスワローズ戦で6回3分の2を投げ無失点でプロ2勝目。1年目は15試合に登板して2勝6敗・防御率3.36と負け越しに終わったが、12試合先発登板が光る。森 繁和監督をはじめ、首脳陣が大きな期待をかけている証拠である。

 1年目のオフは球団と相談して、左肘遊離軟骨除去手術を行った小笠原。本日3月29日、ウエスタン楽天戦に先発した小笠原は3回1安打無失点の好投。2年目は、真に勝負をかける年だけに上々のスタートを切った。

 チームスローガンを「原点回帰~ゼロからスタート~」と定めて、昨年セ・リーグ最下位からの巻き返しに燃える中日ドラゴンズの象徴こそが、頂点の味を知る小笠原 慎之介。ナゴヤドームのファンは近未来、かつて川上 憲伸が背負った背番号「11」が再び竜のエースとなって、多くの勝利を届けることを心から願っている。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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