廣岡 大志(智辯学園ー東京ヤクルトスワローズ)「セ・リーグではピカイチの有望株!廣岡が目指すスラッガー像とは?」
「侍ジャパン」や「一流選手」の称号へ向かって日々、レベルアップに励んでいる「プロ野球ネクストヒーロー」。このコーナーでは高校野球で一時代を築いた選手たちのプロ入りまでのプロセスと現在の活躍に迫っていく。第3回は2015年ドラフトで東京ヤクルトスワローズから2位指名を受けた廣岡 大志選手(智辯学園出身)の活躍を振り返る。
廣岡はタイミングのとり方を重要視している
智辯学園時代の廣岡 大志
智弁学園2年生だった廣岡大志の1学年上に岡本和真(現巨人<関連記事>)がいたため、廣岡にはスカウトの目が常に付いて回った。2014年選抜1回戦の三重高戦は岡本が2本塁打を放ち智弁学園が7対2で勝った試合で、3番岡本のあとの4番に入った廣岡も4打数2安打1打点と結果を残している。
廣岡は2回戦の佐野日大高戦で1番(右翼)を打ち、大会屈指の左腕・田嶋大樹(関連記事)から5打数1安打を放っている。相手投手の格や、センターへの二塁打という結果を見れば大騒ぎしていい選手だが、私は廣岡のことをほとんど書いていない。岡本に注目しすぎたため、同じ右のスラッガータイプの廣岡に目がいかなかったのだろう。
今映像で見返すと、滞空時間の長い一本足打法で、ピッチャーにタイミングを合わせようという意図がはっきりわかる。先輩の岡本はミートポイントが先天的にキャッチャー寄りだったため、ステップでタイミングを合わせなくても、ボールを長く見る形が自然とできていた。
「目標とする打者は中村 剛也(西武<関連記事>)」と紹介されることが多いことに対して、「全然タイプが違います」と取材ではっきり否定された。右打ちのホームラン打者ということで参考にしたことはあるが、ピッチャー寄りのミートポイントで打つ中村とはタイプが真逆だというのだ。キャッチャー寄りのミートポイントに対しては「そう打とうと意識しなくても最初からそうなっていた」と話す。この岡本に対して廣岡はミートポイントがピッチャー寄りなので、ステップでタイミングを取る必要があった。
ヤクルト入団後、「打つ形が似ている」と言われる山田 哲人を廣岡は「タイミングの取り方がうまい」とテレビで評しているが、廣岡にとって「タイミング」はバッティングを語る上で重要なキーポイントなのだろう。ちなみに、元中日の立浪 和義も「バッティングで重要なのはタイミング」と断言し、ティーバッティングではタイミングを外すように一拍置いてトスされる球を打つことが多かった。
2015年のドラフト会議でヤクルトの2位指名を受けてプロ入り。山田(当時24歳)、川端 慎吾(29歳<関連記事>)という20歳代が守っていた二塁、三塁に対して、遊撃は大引 啓次(関連記事)を筆頭に今浪 隆博、森岡 良介という32歳のベテランが守ることが多かった。2位指名という評価を見ても、将来のレギュラーショートの期待を担っての入団だったことがわかる。
廣岡 大志(東京ヤクルトスワローズ)
ファーム1年目の成績は次の通りだ。
<404打数、88安打、10本塁打、47打点、打率.218>
これらの数字以外では141三振が目を引く。そもそもイースタン、ウエスタン両リーグで100三振以上しているのは、内田 靖人(楽天)101、宇佐美 塁大(日本ハム)102、青松 慶侑(ロッテ)104、青柳 昴樹(DeNA)104を入れて5人しかいない。100三振と並んで少ないのが10本塁打以上で、これも両リーグで21人しか記録していない。三振は積極的に打って行く姿勢を表してもいるので、私の中では評価が高い。
高校時代とプロ入り後のバッティングフォームだが、かなり大きな変化がある。高校時代に比べて足の上げ方が大きくなり、また高校時代は普通に足を上げていたのが、プロ入り後は空中を蹴るようなアクションが入る。これはもちろん山田 哲人を彷彿とさせる。またバットを持つグリップの位置も変わった。高校時代は肩くらいだったのが、プロ入り後は耳くらいまで上がっているがこれも山田に似ている。廣岡本人は照れなのか、「マネはしていません。意識はしていますけど」と言う。
2016年9月29日は‟ハマの番長‟こと三浦 大輔(DeNA)の引退試合として記憶に残るが、この試合でスタメン出場した廣岡は2回表、一死一、三塁の場面で三浦の内角低めに落ちる129キロのフォークボールを捉えてレフトスタンドにホームランしている。腕をたたんで捉えた前半はコンパクトで、インパクトからフォロースルーまでの後半は大きい動き。これは理想的なバッティングの流れと言ってもいい。
三振が多くてもスケールの大きさが魅力的
シーズン終了後には台湾で行われた2016アジアウインターベースボールリーグにNPBイースタン選抜の一員として参加し、17試合に出場し、打率.191(安打9)、本塁打1、打点7という成績が残っている。もちろん芳しくない成績だが、NPBウエスタン選抜戦では左腕・齋藤 綱記(オリックス)の縦スライダーをフルスイングしてレフトスタンドに放り込んでいる。
欧州選抜戦でも右投手の投じる外角低めのスライダーを捉え、レフト方向に大きい打球の三塁打を放っているが、ともに大きなフォロースルーに特徴があり、山田、川端とともに内野陣を形成したら若さとスケールの大きさならセ・リーグナンバーワンの布陣になるのではないか、という夢が持てる。
ちなみに、現在の背番号は「36」は‟ブンブン丸″の異名を取った池山 隆寛(楽天チーフコーチ)が入団年の84年から91年までつけていた背番号と一緒。通算1521安打、304本塁打したスラッガーで、杉村繁チーフ打撃コーチは「山田より池山に似ているのではないか」と言っている。内角のさばき方は山田、外角のさばき方は池山、というのが私の見方。
走力は14年選抜1回戦の三重高戦、第2打席でレフト前ヒットを放ったときの一塁到達が4.38秒、選手権1回戦の明徳義塾高戦、第3打席でショートゴロを放ったときの一塁到達が4.38秒でわかるように「まあまあ」というくらいの速さがある。ショートの守備は強肩に特徴があり、昨年のファームでの26失策、守備率.945でわかるように安定感はない。不用意な失策がなくなり全打席全力疾走できるようになれば、それが一軍へのGOサイン。ロッテの平沢大河とともに若手のショートストップとしてはピカ一の存在である。
(文=小関 順二)
オススメ!
第89回選抜高等学校野球大会特設サイト