Column

オコエ 瑠偉(東北楽天ゴールデンイーグルス)「『あふれる吸収力』を武器に」

2017.03.05

「侍ジャパン」や「一流選手」の称号へ向かって日々、レベルアップに励んでいる「プロ野球ネクストヒーロー」。このコーナーでは高校野球で一時代を築いた選手たちのプロ入りまでのプロセスと現在の活躍に迫っていきたい。第1回で登場するのは東北楽天ゴールデンイーグルスのオコエ 瑠偉外野手。ナイジェリア人の父を持ち、関東一高時代は2015年夏の甲子園で躍動。侍ジャパンU-18代表としてもWBSC U-18ワールドカップ準優勝の立役者となった彼の少年時代からここまでを紹介していく。

スイッチが入った「関東一高1年の秋」

関東一時代のオコエ 瑠偉

 東京都東村山市出身のオコエ 瑠偉。秋津東小学校時代は東村山ドリーム(軟式)でプレーし、読売ジャイアンツジュニアとしてNPBジュニアトーナメントに出場するなど、早くから高い潜在能力を見せていた。
ただ、東村山シニア、関東一高と進む中で1つの課題も浮き彫りになる。関東第一高・佐久間 和人コーチいわく「素質は高い。プロに行ける選手」を確固たるものとする継続性。高校入学当時、オコエは練習時間が長くなると、飽きが来てしまう傾向があった。そのオコエが変わるきっかけとなったのは、1年秋の秋季東京都大会である。この大会で関東一は2年ぶり3回目の優勝を果たし、翌2014年のセンバツ出場へ前進したが、このときの中心選手の多くは1年生。主力打者の伊藤 雅人(現・國學院大2年)、左腕・阿部 武士(現・青山学院大2年)らが先を駆け抜けていった。

 そんな「ライバル」の存在がオコエのスイッチを入れた。目の色を変えて技術練習に取り組み、寮での食事量も多くなり、栄養バランスも考えるように。身体もみるみると大きくなった。結果、センバツのメンバー入りは逃したが、2年春の都大会ではセンターポジションを奪取。しかも「1番」。そして國學院久我山戦では先頭打者本塁打。二盗・三盗も軽々と決め、彼はド派手な高校デビュー戦を飾る。

 あふれる潜在能力に吸収力が兼ね備われば、成長への道が開けるのは必然の理。2年夏の東東京大会では22打数12安打と爆発したオコエは、厳しい内角攻めでベスト4に終わった2年秋も、彼は冬練習の肥やしに変えた。すべては意識にある「高卒プロ入り」のために。

[page_break:進化を重ね、甲子園を沸かせ、最高評価でのプロ入りへ]

進化を重ね、甲子園を沸かせ、最高評価でのプロ入りへ

U-18ベースボールワールドカップ出場時のオコエ 瑠偉選手

 かくして3年春になると右投手が攻めるインコースを打てるまでに上達したオコエ。さらに「ボールを引き付けて打ち返す技術」を習得し、以前よりも右中間への打球が増えるようになった最後の夏。東東京大会では25打数11安打、打率.440、1本塁打、6打点、6盗塁と圧倒的な活躍で関東一、そして自身初の甲子園出場を成し遂げた。

 迎えた甲子園、オコエは規格外のプレーで大観衆を虜にしていく。まず2回戦高岡商(富山)戦では一塁強襲安打を50メートル5秒94の足を駆って二塁打にすると、史上2人目となる1イニング2三塁打を達成。3回戦中京大中京(愛知)戦では、一回表、二死満塁から佐藤 勇基(現:法政大1年関連記事)が放った左中間への当たりを背走キャッチ。サヨナラ勝ちへの流れを作った。さらに準々決勝興南戦では、変則左腕・比屋根 雅也(現:立教大1年)が投じる内角直球を狙い通り振り抜き決勝2ラン。準決勝では優勝した東海大相模(神奈川)に敗れたが、直後には「第27回WBSC・U-18ベースボールワールドカップ」の侍ジャパンU-18代表入りを果たす。

 ここでも西谷 浩一監督からの打撃指導や、平沢大河仙台育英-東北楽天関連記事)の打撃フォームを採り入れたオコエは打率.364、7打点、4盗塁と勝負強い1番打者として活躍し、大会最優秀守備賞を受賞。世界の野球関係者からも認められる存在となる。

 そして2014年10月23日、東北楽天ゴールデンイーグルスが1位指名したのは「オコエ 瑠偉」。吸収・成長を続けた外野手は、最高評価でのプロ入りを果たした。

[page_break:マイナスもプラスに変える「吸収力」で、再起を期す]

マイナスもプラスに変える「吸収力」で、再起を期す

オコエ 瑠偉選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)

 2016年、トリプルスリーの3+3+3を意識した背番号「9」で一軍キャンプからプロ生活をスタートさせたオコエ 瑠偉。キャンプイン当初は木製バットへの対応に苦しんだが、池山 隆寛コーチから連日マンツーマン指導を受け、持ち前の吸収力の高さで日に日に成長。オープン戦でもアピールし続け、高卒野手としては東北楽天ゴールデンイーグルス史上初となる開幕一軍入り。3月25日の福岡ソフトバンクの開幕戦では代走としてデビューし、続く3月26日にプロ初盗塁と順調なデビューを果たした。

 打撃面で結果を出せず4月14日に二軍降格しても、立ち直りは早かった。約1か月間で打撃面の見直しを図って、セ・パ交流戦開幕前に一軍再昇格すると、5月31日の阪神タイガース戦で念願の一軍初安打を記録。6月18日の横浜DeNAベイスターズ戦で、駒澤大卒ドラフト1位の今永 昇太関連記事から高めのストレートを振りぬいて、プロ初本塁打。また、交流戦の通算安打は15本と一定の力を一軍で残している。

 結局、2016年のルーキーイヤーは一軍で51試合に出場し、1本塁打、6打点、打率.185を記録。二軍では54試合に出場、5本塁打、24打点、14盗塁、打率.222と高卒野手としては及第点といえる成績を残す。
秋にはナイジェリア人の父の血を引いた骨盤の前傾を活かした打撃フォームに修正したオコエ。結果、10月のフェニックスリーグや11月のアジアウインターリーグでも快打を披露し、2年目のブレイクを誰もが期待した。が、好事魔多し。今年2月のキャンプでは早々に指を痛め、右手薬指を剥離骨折。競技復帰は5月ごろとなることが決まった。

 しかしながら、悉くマイナスをプラスに変えているこれまでのオコエを見ていると、今回の怪我も成長のきっかけとなるはず。まずはしっかりとリハビリに努め、さらにスケールアップを果たし、甲子園で魅せた規格外のパフォーマンスを、今度は[stadium]Koboパーク宮城[/stadium]で魅せていきたい。その先にあるのはもちろん、東北を代表するスターと2020年・東京五輪での「侍ジャパン」のユニフォーム姿だ。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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