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準硬式野球出身選手が硬式野球で活躍するポイントとは?

2016.11.24

 10月20日に開催された「2016プロ野球選手ドラフト会議 supprted byリポビタンD」
では例年以上に異色の野球経歴を持つ選手が数多く指名された。中でも変わり種は東北楽天ゴールデンイーグルスから6巡目指名を受けた鶴田 圭祐投手である。香川・藤井学園寒川高では硬式野球部に所属し、1年秋に投手から野手へ転向。帝京大学進学後は準硬式野球の世界で投手に復帰し、最速149キロをマーク。来季からは5年ぶりに硬式ボールを握り、日本最高峰の舞台に挑むこととなった。

 では、鶴田選手をはじめとする「準硬式野球」の選手が「硬式野球」へ順応するポイントはどこにあるのだろうか?実際に体験した選手の例も追いながら考えていきたい。

「準硬式野球」を経験することによるメリット・デメリット

小平 凌選手(徳島インディゴソックス)

「準硬式野球」
まずはこの日本オンリーワン競技の説明からしていきたい。ルールは軟式野球・硬式野球とほぼ同じ。異なるのは正式には「軟式H号」と呼ばれるボール。平たく言えば表現は軟式球と同じゴム製、中身は硬式球と同じコルクを使用する。当然ながら硬式野球とも軟式野球とも異なる現象が試合で生じる。
 

「投手であれば硬式野球に比べてツーシーム・カットボール・フォークが投げやすいんです。逆にチェンジアップは投げにくい。逆に打者の側からだと、準硬式野球のボールは縫い目の色が一緒なので見づらい。僕自身も最初はそこに苦労しましたけど、見極めの部分は磨けました」

 こう語るのは市立明石商(兵庫)から進学した立命館大では準硬式野球部。その後、社会人・全播磨硬式野球団で硬式野球に復帰し、今季から四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスでプレーする小平 凌内野手。「大学の準硬式野球では金属バットを使うので打球のスピードも違うし、ボールのバウンドはツーバウンド目で伸びてくる。どちらかというとソフトボールに近いですね」という守備対応も含め、準硬式野球を体験することによる硬式野球へのメリット・デメリットは両面あるようだ。

[page_break:鶴田選手の「正しい選択」。過去の成功者を追い、大きく羽ばたけ!]

鶴田選手の「正しい選択」。過去の成功者を追い、大きく羽ばたけ!

小平 凌選手(徳島インディゴソックス)

 では、小平選手は立命館大卒業後に硬式野球に復帰した際、どんなことに苦労したのだろうか?
「ボールが滑る感覚があって、はじめは送球が抜けていました。感覚が合うまでには3ヶ月くらいかかりました」

 その証言に倣えば鶴田投手は「正しい選択」をすでにしている。この秋は東都大学準硬式野球リーグ戦での登板を回避し硬式球での練習を継続。プロ入り後の戦いを見据えていた。

 それともう1つ。藤井学園寒川高時代から持っている人間性もプラスに働くはずだ。鶴田が3年時の1年間を共に過ごした同校野球部副部長・コーチの中野 宏俊さんは鶴田の高校球児時代をこう振り返ってくれた。
「当時、(宮武 学)監督(現:高松リトルシニア監督)さんも言っていたんですが、鶴田は能力は高かったけれど、伸び切れなかった選手でした。でも、彼は友だちやチームメイトの誰もが認める真面目で礼儀正しい好青年。その部分で壁を破れる要素は持っていたと思います」

 となれば、帝京大学準硬式野球部での飛躍も納得である。

 さらに言えば、準硬式野球出身選手がプロ野球で活躍した例もある。成功者の筆頭格は1999年ドラフト6位で同志社大準硬式野球部から西武ライオンズに入団した青木 勇人投手。2000年からの11年間で同球団と広島東洋カープで貴重な右サイドハンドの中継ぎとして計210試合に登板。現在は広島東洋カープ三軍投手コーチ・強化担当として鯉の若手投手陣を鍛え、故障選手を再び一軍に送り出す重責を担っている。

 自分の強みを活かし、正しい準備と手順を踏めば「準硬式野球出身」は決してデメリットではなく、メリットになりうる。先人たちと鶴田投手のここまでの歩みがそれを証明している。

 筆者にとっても2011年秋の四国大会では3番・右翼手で4打数2安打とスケール感の大きさは高校時代から印象深い選手だった鶴田。東北楽天ゴールデンイーグルスでもその能力を十分に発揮しつつ、今まで積み上げたものをさらに積み上げてプロと世間が抱く壁を破ってほしい。彼ならばきっとできるに違いない。

(文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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