スピード向上プログラム part1
第72回 スピード向上プログラム part12012年09月25日
皆さんこんにちは。ベースボールトレーナーの殖栗正登です。今回は特別編として、スピード向上に必要なトレーニングに関してお話していきたいと思います。
さて、アスリートのパフォーマンスに影響を与えるものは、ストレングスやアジリティ(敏しょう性)、クイックネスなど様々ですが、それらが実際に身体のどのような働きに関係しているのかわかりますか?そこで今回、スピード向上のために必要なことについて一つずつ解説していこうと思います。
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アスリートのパフォーマンスに影響を与える要素
A:パワー
スポーツにおいて最も必要な能力だと考えられるのがパワーです。なぜなら、スポーツでは短時間で力を発揮するシーンが多いからです。
野球のように、短時間で最大力を発揮するスポーツでは、パワーの要素はスタートダッシュ。自分の体に多くの力を瞬間的に加えることが必須となります。
B:ストレングス
最大の力を生み出す土台は筋肉の量であり、より強く筋を収縮できるのは速筋です。速筋を鍛えるにはどうすればよいのでしょうか?まずは筋肥大トレーニングで筋の横断面積を広げ、次に運動ごとの瞬間的な力を発揮する最大筋力トレーニングを行うことで筋肉の土台を作らなくてはなりません。そのためのトレーニングがストレングストレーニングです。
C:スピード
スピードを上げるためのトレーニングがスプリントトレーニングです。このトレーニングを簡単に言うと、AからBまでの距離をより早く移動できるかでありスピード向上につながるものとなります。
E:アジリティ
アジリティとは、方向転換のともなったスピードのことです。アジリティを鍛える上で、ストップ動作、各ステップ動作の習得は必須です。
F:コーディネーション
コーディネーショントレーニングとは、体の協調性のトレーニングと言えるでしょう。更に言うと、神経と筋の協調性のトレーニングです。バッティングであれば目で見て情報を処理し、中枢が反応し、神経を通じて筋に命令を出すことで体が動き、バットが出てボールを打つという流れがあります。この動作が正確なほど、コーディネーション能力が高いと言えるでしょう。
G:クイックネス
クイックネスとは、刺激に対する反応時間の速さのことを言います。触覚、視覚、聴覚、イメージなどの刺激に対して、正しく反応する能力です。
H:局所性持久力
局所性持久力とは、筋活動を繰り返し実行できる能力のことです。特にトップアスリートならば高いパワー出力を繰り返して行う能力が高いです。なぜなら、全体の8割を超えるスポーツは高いパワー出力を長時間にわたって繰り返し再生する無酸素能力が重要だからです。乳酸が蓄積してPHが下がった状態の筋疲労状態でパフォーマンスが出せるようなコンディションプログラムが大切です。
I:有酸素性能力および持久力
酸素を使いATPを再合成する能力を有酸素性能力と言います。マラソンなどがそれにあたりますが、遅筋の筋繊維が使われ、ミトコンドリアの増加、脂肪のエネルギー利用率の向上、毛細血管数の向上がみられます。また、細胞に酸素と栄養を運び、二酸化炭素と代謝産物の除去というフィジカルコンディショニングの再生プログラムとしても大切です。
[page_break:スピード向上にはまず筋力向上]スピード向上にはまず筋力向上
スピード能力を向上させるためにはまずベーシックの筋力向上が必要です。物体が加速するために必要なこと、それは物体に力を加えることです。その結果、物体にベクトルの方向と速度が生まれます。またそれを一気に加えることがスタートダッシュの加速につながります。
どのスポーツでも正確に技術を適切なスピードで行うことが大切であり、パフォーマンスを決定づけるといっても過言ではありません。また、トレーニングでは各スポーツにおける1:コーディネーション、2:バイオメカニクス、3:生体エネルギーを基準にすることも重要です。最大筋力やスピードトレーニングにおいては、仕事量(力×距離)を制限して、代謝ストレスをなくすことを意識しましょう。しかし、筋肥大トレーニングには逆に仕事量を増やして疲労をピークまで持って行くことが必要になるので、トレーニングの目的によって意識することが異なると覚えておいてください。
スピードトレーニングと力学について
力の立ち上がり速度をRFD(Rate od Force Development)といいます。スプリントにおいては設置はわずかに0.1秒〜0.2秒以内です。立脚期にパワーを発揮しなくてはなりません。またスタートにおいては自分の体に一気に力を加えて、ゴールに向かい身体を加速させます。力の大きさ、方向、RFDの向上はスピードトレーニングには欠かせません。
ストレッチショートサイクルと反応筋力
ストレッチショートサイクルとは伸張と短縮の繰り返しのことで、伸張反射と弾性エネルギーを利用します。償却期間を短くするスプリントトレーニングには必須です。トレーニングはリバウンド型、反動型(カウンタームーブ)に分けられます。固いバネのように身体を使うことで筋の要素以外に身体を速く動かすことが可能になります。この能力と筋力は独立した能力なので、段階的にプライオメトリックストレーニング(短時間で爆発的な力を引き出すためのトレーニング法)を処方しなくてはなりません。
パワートレーニング
パワーとは仕事率、もしくは力と速度の積のことをいいます。より多くのパワーを生むためには筋腱複合体の伸張吸収作用が必要となります。そのためには1:短縮時のパワー発揮(コンセントリックパワー)2:伸張局面初期のブレーキング作用に必要なエキセントリックな力をが大切です。3:ブレーキングがかかったら、素早く筋収縮させる反応筋力の獲得が最大パワーの獲得に不可欠です。
そのため、より高いスピード、加速を行う上で筋力の役割は大きく、特にパワーや素早い立ち上がりには、速筋の割合と適切に活動させることが必要です。また、等尺性やスピードの伴わない大きい筋力の発揮には、筋横断面積(サルコメアの数)重要です。固有筋力(40〜45N/cm2)の限界にきたら、力とスピードの向上には速筋の肥大と、筋力以外の要素のトレーニングが必要になります。
▶スピード向上プログラム part2に続く。
(解説・殖栗正登)