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肩部のコンディショニング1

2011.07.06

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

【動画】肩部のコンディショニング12011年06月07日

肩のコンディショニングをチェックをしよう!

 柔道整復師は救急処置が仕事のようなものです。その為、医療の国家試験があります。ひと通り整形外科の勉強もします。なぜなら現場のトレーナーについた時に処置の判断をしないといけないからです。Hopssを行ってプレーが出来るのか判断するための処置の方法、そしてダメなときの処置の方法を学ぶ学問です。私がこの医療資格を取ったのは、現場のトレーナーをしていて最も役に立つ資格だと思ったからです。

今回は肩について解説します。

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こちらのコラムの動画はWEBからアクセス!

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殖栗正登のイップス克服プログラム

1:肩関節前方脱臼、亜脱臼

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肩の脱臼といえばほとんどこれで僕も何回も現場で出会い、整復しきました。簡単に入れてあげられますが、ほとんど2回、3回と反復してしまいます。

原因は
A,関節窩前方関節唇の剥離=バンガート損傷
B,上腕骨頭後情報部の軟骨、骨欠損=ヒルサックス損傷
C,またAにプラスに下関節の上腕靭帯の損傷になれば肩関節の前方の静的組織の機能は役立たずです。
D,Aを何度も繰り返せば、上方の関節唇も一緒に剥離して関節唇の破壊が上にもいき、上方の不安定も出てインピジメントも出てきます。また関節包の損傷もあります。
E,上腕骨頭側の関節包の剥離⇒HAGL損傷
野球でも大変多く見られ、多いのはスライディングやダイビングキャッチした時です。

整形外科テストとは

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アプリヘージョンテストが有名で、外転、外旋位で45°、90°、120°と抵抗をかけて屈曲位で内旋で後方おしこみテストもあります。下方脱臼としてはサルカスサインがあります。コンヘル方orヒポクラテス方で整復をしたら包帯固定で三角巾でつるすことです。


整形外科テスト

①ドロップアームテスト

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棘上筋の断裂を見ます。90度外転させてゆっくり下げさせます。断裂しているとキープ出来なくなります。

②棘上筋断裂のテスト

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③ダウバーンサイン

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肩峰下滑液包炎のテスト。 限局的圧痛的(肩峰部)をおさえて他動的に外転させて圧痛点が消えます。

④ホーキンスとニア インピンジメントテスト

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棘上筋と上腕=頭筋のオーバヘットでのはさみこみテスト

⑤スピードテストとヤーガソン(肘中心で回外)テスト

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上腕=頭筋炎のテスト

⑥Abbott-Saundenテスト

⑦アプリベーションテスト

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靭帯・関節唇の損傷

⑨Apley スクラッチテスト 棘上筋炎


2:肩、腱板損傷

接骨院で治療していてよく出会います。50才以上の方に多く、まれにスローイング障害で出てる時もあります。50才から特に多く、退行変性で起こります。これに何らかの外傷が加わる筋が断裂してしまいます。レントゲンで骨頭上昇が見られて、これがインピンジメント症候群も引き起こります。MRIで確定診断が出ます。現場では結帯、結髪動作の有無、拘縮、ペインフルアーク、ニア、ホーキンスのインピンジメントテストでチェックします。

また、肩峰下滑液包に炎症がでれば、安静時痛、夜間痛が出ます。

炎症が取れて、疼痛が無くなっても、上腕骨頭の求心位がキープ出来ないと引っかかり脱力感が出てきます。
3ヶ月の保存治療で痛みがとれなければ、滑液包への注射、また棘上筋断裂がひどく、求心位がとれず機能的な動きがとれず、疼痛がひどい時はオペによる断端固定術が行われます。

3:投球障害肩

私が院長を務めるボディバランス接骨院もほとんどスポーツ選手が患者さんで、50%以上は野球選手です。なぜなら野球肩や野球肘、野球腰と言われる3大障害、外傷は野球の動作が原因で起こるからです。その為、野球のバイオメカニズムを知らなければ、最終的に痛みが取れてもまた投げれば痛くなるを繰り返してしまいます。

その為、痛めた原因のフォームを治す必要があります。

機能的に話せば野球のスローイング動作とは地面に足が着いているので必ずエネルギーは下からくるのが運動連鎖の流れです。下からのフォームの流れを見ていってそこに特の股関節の回旋機能の低下をチェックすると、特に踏み込み脚の外旋が大きくでて、内旋が小さい時は水平回転の時に小指側に流れやすい傾向があります。すると支点となる踏み込み脚の股関節が外へ流れていきます。軸が外にブレ、この時頭の位置もブレると姿勢反射、立ち直り反射が働き、上肢に逆方向へいくために投球腕で出てこなくなり、加速期において腕のみで投げなければならなくなり肩や肘を痛めてしまいます。

次のポイントは胸椎、胸郭、胸腰椎移行部です。ここは特に普段の姿勢がものを言います。胸椎関節の後弯が強く出て後方回旋がうまく出来なければ、最大外旋に腕をトップに持っていった時に肩前方の軟部繊維に痛みが出るでしょう。

次に肩甲胸郭関節、胸鎖関節、肩関節です。特に肩甲骨は靭帯で結合されておらず、本当の関節ではないので筋肉により固定されています。筋の弱化、長胸神経マヒ、肩甲上神経マヒ、副神経マヒなどにより、筋肉の機能が低下して、翼状肩甲骨になると先ほどと同じようにトップの位置と外旋の距離が出て、インピジメントやストレインの痛みが出てきます。

次に肩甲上腕関節で、棘下筋マヒはフォロースルの時の痛みを引き起こし、棘上筋の拘縮は三角筋の代償により肩峰下の隙間を狭くする為にインピジメントを引き起こします。

靭帯、関節包、関節唇の損傷はルーズショールターをよびます。不安定肩となり、肩の求心位を保てなくなり、抜けるために骨頭がズレて痛みをよぶ最悪の事態となります。

最も多いのは最大外旋位からの加速期にかけてのインターナルインピンジメントでしょう。この部分が投球パワーのメインだからです。スローイング時に求心位を保てず、前上方に一緒に上がってくれば、前方部でインピンジメントが起こります。

ドクターに見せて必ず関節唇損傷の有無を確認する事が大切です。その上で求心性を取れるようなフォームの改善、筋の緊張を取り、筋機能の低下を改善して包内運動を行い、再び疼痛テストを行い、改善の有無を見ていきます。

3ヶ月以上の痛みは必ずドクターに診せ、MRIをとり関節唇のチェックをしてもらうことが大切です。

時々ある症状が

A,肩甲上、神経絞扼障害

オーバスローでかけていると、この神経の運動技がのばされました。特に肩甲棘基部、外側縁を滑に接して回るため、ここで痒疹がおこり、棘下筋の萎縮、マヒをきたします。また肩甲切痕部で棘上筋を萎縮させるときもあります。

B,腋窩神経絞扼障害

小円筋と上腕三頭筋長頭と大円筋と上腕骨で出来る間隙をクアドリラテラルスペースとよびます。ここには後上腕回旋動脈と腋窩神経が通るため、スローイング動作で絞扼すると三角筋の萎縮マヒ、肩側面の痛み、血行障害が起こります。

C,副神経、頭神経のマヒ

スローイング動作で首を強く回旋するとこれらの筋の絞扼マヒが起こり、僧巾中筋上部の萎縮が起こり、肩甲骨が下制します。
などの神経障害で投球での痛みが出る事もあります。また、リリースの時は上腕骨頭軸と臼蓋面が一致する高さ90°、水平両転5°が理想です。テークバック伸展、後ろに大きくなればなれば骨の後方にかかる力がおおきくなり、インターナルインピンジメントを起こすでしょう。リリース時、外転角が小さければ腕を上げるため体の傾きが出て、体が開き、インターナルインピンジメントとなります。いずれ投球障害についてはきちんと紹介したいと思います。


肩の機能テスト

①SSD=Scapula spine distance

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肩甲骨の内側縁と背骨の距離

②CAT=Combined abduction test

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純粋な肩甲骨と上腕関節の外転のテスト

③HFT=Horizontal flexion test

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水平内転のテスト

④HERT=Hyper external rotation test

インターナルインピンジメントを見るテスト

⑤Loose test

前方、後方、下方のルーズショルダーのテスト

⑥Impingement test

ニアーとホーキンスで第2肩関節のインピンジメントテスト

⑦EET=Elbow extension test

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上腕三頭の筋力テスト。肘屈曲100°以上で伸展させると脱力がおきる時がある。

⑦EPT=Elbow Push test

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肘で前方に押す、前鋸筋のテスト

⑨ISP

徒手筋力テスト 棘下筋

⑩SSC

筋力テスト 肩甲下筋

⑪SSP

棘上筋の筋力テスト


体幹・下肢の評価

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①ストレートレングレイジングの可動域
②指床間距離
③踵、殿部間距離
④股関節の内旋角
⑤脊髄柱の回旋


4:肩鎖関節脱臼

野球においてはあまり見られませんが、肩から地面にぶつかると、その外力で鎖骨の遠位端と肩峰をつなぐ肩鎖靭帯と鎖骨と烏口突起をつなぐ烏口鎖骨靭帯の損傷が起こります。

Ⅰ度 肩鎖靭帯の部分断裂
Ⅱ度 肩鎖靭帯の完全断裂
Ⅲ度 Ⅱ度に烏口鎖骨靭帯も断裂して完全脱臼=ピアノキー症状出る

整復法

助手は上肢と後上方へ押します。術者は上方から下方へ鎖骨を押しこみます。その後テーピングで固定する。包帯で胸部に上腕骨を固定させて三角巾でつるします。

今回は脱臼筋損傷と投球肩についてもお話させてもらいました。症状と救急処置のポイントを知っていただければ幸いです。

終わりに

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(文・解説:殖栗正登) 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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