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ファンクショナルトレーニングとフォームの関連性 (2)

2011.01.26

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

ファンクショナルトレーニングとフォームの関連性(2)2011年01月26日

 今回は前回紹介したファンクショナルムーブメントスクリーンの続きについてお話したいと思います。
前回もお話した通り、このテストはあくまでも目安です。また、野球においてどんな動作の機能が衰えているのか知ることが大切です。(写真をクリックすると大きい画像がご覧いただけます。)

「ハードルステップ/インラインレンジ」
P1
「ショルダーモビリティー/アクティブストレート・レッグ・レイズ」
P2
「トランク・スタビリティ・プッシュアップ/ロータリースタビリティ」
P3
「オーバーヘッドディープスクワット・まとめ」
P4

ハードルステップ

  • ◯ハードルステップ(写1)

  • ○ハードルステップ(写2)

ポイント

・スタンスをしている足の固定力(中殿筋)
・またいでいる足の可動性(股関節)
・体幹の固定力

方法

1:足をそろえてバーの下につま先をあわせる
2:バーを脛骨粗面に合わせる
3:バーをゆっくり3回またぐ(逆方向も同様に)

点数

3点
・股関節・ヒザ・足首が一直線に位置する
・持ったバーを下のヒザのバーが一直線に位置する
2点
・股関節・ヒザ・足首のうち二つのポイントが出来ていない
1点
・足がゴムに触れる、体のバランスが崩れる
0点
・痛みが出る

このハードルステップでは、ピッチャーやバッターが足をあげる時の片足バランスの時を見ることができます。この動作ができず、例えば左に傾く場合、右の中殿筋が弱くなっていると捉えて、その筋のスタビリティなトレーニングが必要となります。

インラインレンジ

  • ◯インラインレンジ(写1)

  • ○インラインレンジ(写2)

ポイント

・前足の安定(足首、股関節)
・後ろ足の可動域と柔軟性(股関節、足首の背屈、四頭筋)

方法

1:頚骨の長さを測る
2:高さ5cm、幅15cmの角材の上に立つ
3:右足が前なら左手を上にして右手を下にしてバーを持つ
(バーは頭と腰の下につくこと)
4;後ろのつま先から頚骨の長さをマークしてその位置に踏み出し足のかかとをお気、後ろ足のヒザつけていく
5:1〜4を3回行う

点数

3点
・バーが頭〜背骨〜仙骨とキープしていて上半身が動かない
・足は前後一直線上
・ヒザが前足のかかとの後ろで板につく
2点
・上記3点のどれかが出来ていない
1点
・バランスを崩す
0点
・痛みがでる

この動作ではもしピッチャーで前ヒザが割れたり、体が接地してからつっこむピッチャーでは、前足の内転筋が弱くなっていたり、後ろ足の腸腰筋・大腿直筋の柔軟性の不足していたりすることが見て取れます。


ショルダーモビリティー

  • ◯ショルダーモビリティー(写1)

ポイント

・肩の外転、外旋
・肩の内転、内旋
・可動域のチェック

方法

1:手首から中指の先までを測る
2:こぶしを作り、背中までくっつける
3:この距離を測る

点数

3点:
・この距離が手の平の長さ以内
2点:
・手の平の長さの1.5倍以内
1点:
・手の平の長さの1.5倍以上
0点:
・インビンジメントの痛み

これは左右で差があれば、それは先天的なものではなく、後天的なものです。特に利き手の内転、内旋がいきにくいと思います。これは肩の後方の硬さまたは上腕骨骨頭の後捻の強さが出ており、外旋が強く出るフォームは肩の最大外旋位が強く出る分、肩のフロントに負担のくるフォームで前の部分を痛めやすく、その結果インビンジメント、二頭筋炎、スランプ、悪化すれば肩甲上腕関節の求心性を失いかねません。私はストリングトレーナー以外にも接骨院の院長もしていますが、肩の機能テストでよくこのテストを行って、治療の参考にしています。

アクティブストレート・レッグ・レイズ

  • ◯アクティブストレート・レッグ・レイズ(写1)

ポイント

・体幹を維持しながらのハムストリングスの柔軟性
・逆足の大腿直筋の柔軟性

方法

1:あお向けに寝て、手の平を上に向け、ヒザの下に高さ5cm幅15cmの角材を置く
2:足首を背屈させて上げていく。この時体幹、頭はキープ。逆足もキープする。
3:そしてトレーナーは内くるぶしにバーを当ててチェックする。

点数

3点
・上前腸骨棘と大腿の真ん中の間
2点
・お皿と大腿の真ん中の間
1点
・ヒザより下
0点
・痛みがでる

このテストは前回と同じく障害予防の観点で大切です。体幹をキープしながら大腿を上げられなければ、骨盤などの代償運動出てて、オーバーワークなどになり腰痛になってしまいます。プロ野球選手もこのハムストリングスの肉離れは多いのですが、このようにただのストレッチではなく、体幹を固定してよりスポーツ動作に近いことがこのテストの意義になります。

【目次】

「ハードルステップ/インラインレンジ」→P1
「ショルダーモビリティー/アクティブストレート・レッグ・レイズ」→P2
「トランク・スタビリティ・プッシュアップ/ロータリースタビリティ」→P3
「オーバーヘッドディープスクワット・まとめ」→P4

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トランク・スタビリティ・プッシュアップ

  • ◯トランク・スタビリティ・プッシュアップ(写1)

  • ○トランク・スタビリティ・プッシュアップ(写2)

ポイント

・上半身の動きにともなう体幹の固定力

方法

1:手を肩幅に開いてうつ伏せに寝る
2:両ひざを伸ばし、親指を頭の上にする
3:1回腕立て伏せをする
4:難しい場合、親指を顎にする

点数

3点
・頭の上で腕立て伏せができる
2点
・あごの位置で腕立て伏せができる
1点
・あごの位置で腰を下げて腕立て伏せができる
0点
・痛みが出る

このドリルは上肢を動かしても体幹がキープされているかを見ています。ピッチングでもバッティングでも強力な遠心力が腕によってかかってきますが、体幹がキープされて向心力もいるので力を発揮できます。この時、この力が弱ければ腕が抜けてルーズショルダーにもなり易くなります。また、上肢エネルギーが伝達されにくいともなり、エネルギーの流れが悪くなります。

ロータリースタビリティ(水平面での安定性)

  • ◯ロータリースタビリティ(写1)

  • ○ロータリースタビリティ(写2)

ポイント

・水平面における安定性を見て、回肢を動かす

方法

1:足首を背屈させてひざ、股関節、肩を90度にして四つんばいになる
2:両ひざ、両手を同じ位置に角材を横にする
3:同じ手、足を角材と平行の所まで上げる
4:この上げた肘とひざをくっつける
5:できなければ交差にして行う
6:3回繰り返す

点数

3点
・一連の流れを正しく1回できる
2点
・交差した状態で1回できる
1点
・一度もできない
0点
・痛みがでる

このテストは上から見てどこが傾くか確認することが大切です。特に骨盤の位置が開くのか閉じるのか、外にいけば外旋筋の硬さと内転の筋が弱くなっており、内にいけばその逆です。ピッチングで足を上げた時、水平面状に体がねじれたり、開いたりするのは、この機能の低下かもしれません。

【目次】

「ハードルステップ/インラインレンジ」→P1
「ショルダーモビリティー/アクティブストレート・レッグ・レイズ」→P2
「トランク・スタビリティ・プッシュアップ/ロータリースタビリティ」→P3
「オーバーヘッドディープスクワット・まとめ」→P4

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オーバーヘッドディープスクワット

  • ◯オーバーヘッドディープスクワット(写1)

  • ○オーバーヘッドディープスクワット(写2)

ちなみに前回紹介した、オーバーヘッドディープスクワットのポイントをおさらいします。

ポイント

・パワーポジション時の足首の背屈、ひざ股関節の屈曲、胸椎の伸展、肩の屈曲・外転

方法

1:肩幅で足を開き、腕を伸ばし肩幅でバーを持つ
2:スクワットをする

点数

3点
・上半身が頚骨と平行
・大腿骨が水平
・足の上にバーがある
2点
・5cmを丸太の上でならできる
1点
・できない
0点
・痛みがでる

これは1回目に説明しましたが、これが出来なければ動作の基本であるパワーポジションが作れません。ピッチングから足をあげてからドロップの姿勢が作れず、強い並進運動が出せません。

まとめ

さて今回は前回紹介したファンクショナルムーブメントスクリーンの残りのメニューを紹介するとともに、野球の動作へどのような影響を及ぼすかについてお話させてもらいました。体の使い方が上手ではないという選手は、この単一動作ではなく、運動連鎖が上手に出来ていないのが原因であることが多いです。
例えばオーバーヘッドテストでハムストリングスが固ければ、骨盤は後傾して、体の前傾姿勢がうまく作れなくなり、体を前に力を出す連鎖のつながりがうまく出来なくなります。つまりエネルギーの伝達効率も落ちてしまいます。

このような場合、単一の関節でパワーを出そうとするので力んだギクシャクしたフォームになるし、一関節に負担がかかれば障害の原因にもなります。このテストは全体で7割を合格としています。ぜひ一度皆さんも、チームでも個人でもトライしてみてください。

【目次】

「ハードルステップ/インラインレンジ」→P1
「ショルダーモビリティー/アクティブストレート・レッグ・レイズ」→P2
「トランク・スタビリティ・プッシュアップ/ロータリースタビリティ」→P3
「オーバーヘッドディープスクワット・まとめ」→P4

「覚悟の瞬間」殖栗院長

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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