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ピリオダイゼーションと夏の大会に向けての調整法【後編】

2016.06.11

 みなさんこんにちは。殖栗 正登です。前編では年間計画におけるトレーニング期の特性についてお話をしましたが、後編はより実践的な話をしていこうと思います。

ストレングスピリオダイゼーション

ダッシュする選手たち

 野球において、ストレングストレーニングの意義は大きく、トップリーグのNPB、MLBともにトレーニングコーチ、ストレングス&コンディショニングトレーナーを配置していることからもよくわかる。

 なぜなら野球はパワーの運動能力が大切だからだ。短時間でより大きな力を発揮する能力を表すパワーは、スピード、クイックネス、最大筋力の総体であるといえる。

◆解剖学的適応期(一般的筋力)
これは試合期の後の移行期で、ストレングスは行わないでその後の一般準備期で行われる。その目的は、その後の長く続くトレーニングの為に全ての筋群をバランスよく鍛えることで筋、靭帯、腱、関節を鍛える為である。ここでは10~12種を上下バランスよくメニューを組み、60パーセントの負荷で8~12日を2、3日セット、インターバル60秒で約1ヶ月から1ヶ月2週行う。

 高校1年生の新入生は入学したら負担を40パーセントから始めて60パーセントまで上げながら、8~12週(3ヶ月)行うことで、身体の土台を作り上げていくことが大切である。なので4~7月は1年生はしっかりとしてストレングストレーニングで土台を作り、ケガの予防にも努めていって欲しい。

◆最大筋力期
最大筋力のレベルや、パワーと筋持久力の両方に影響を及ぼすので、最大筋力が高くなれば平均的なパワーでさえも出せないであろう。この時期の目的は最大筋力の向上であり、1~3ヶ月必要になってくる。10~11月を解剖学的適応期にあてたら12~1月は最大筋力期となる。

◆転換期(専門的)
転換期で、鍛えた最大筋力をより野球に必要なパワーに転換していく時期である。ここは1~2か月は必要であるが最大筋力は、維持していかなくてはならない。この転換期は準備期後半から試合期前半まで行う。徳島インディゴソックスから楽天に入団した入野 貴大との対談インタビュー(Vol.1Vol.2)でも話をしたが、徳島インディゴソックスでもこの専門的トレーニングを開幕の4月から6月まで行った。

◆メンテナンス期(維持)
この時期は獲得した筋力を維持することだが、野球は最大筋力とパワーと筋持久力を維持する必要があり、最大筋力を週1回、パワーを週2回、筋持久力を1回は入れていきたい。これらの能力を維持するエクササイズを4種目行えたら理想だ。高校野球も夏に向けて5~7月は実戦がメインだと思うが、ストレングストレーニング、この維持期のプログラムは必ず導入して欲しい。

◆休止期(テーパリング)
本番2週間前からストレングストレーニングの量を落として、体力と疲労を考慮していく。そして大会の5~7日前にはストレングスプログラムを落としていかなくてはならない。

◆補強期
もし大会が終了したら、移行期として疲労の除去、メンタルの回復、エネルギーの補給、ケガの回復の為レクリエーション的な補強期を導入する。

 選手は人間であって、機械ではない。心身の回復が大切である。

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持久力のピリオダイゼーション

 持久力のトレーニングは、有酸素性持久力期、有酸素性専門的持久力期、専門的持久力期の3つに分けられる。有酸素性持久力は移行期から準備期の前半に、そして有酸素性専門的持久力期のプログラムは特に大切である。インターバルトレーニングなどの強度の高いプログラムを処方して、それを専門的な持久力へと移行していく。ここが一番運動量の多いところ。

 プログラムは専門的期準備期から試合期に処方されるが、特に野球に必要な直線、方向転換、ピッチャーならば上半身、体幹を連動したパワーの持久力としてパワーロープやダンベルフライングスプリット、ツイストMBウェーク、プッシュプレス、クリーン、ミニハンドルジャンプ、サーキットトレーニングをインターバルで行うことなどが大切である。

 専門的持久力期は、試合期に行われる。あくまでも野球の場合はパワーの持久力(6秒以内のATP-CP系の回復力)がメインにあるので、50メートル~30メートルのインターバルが必要である。
ピッチャーはAT~LTレベルまでバランスよくコンディショニングを維持しなくてはならない。(最大心拍数は85パーセント~90パーセント=ポール間走など)

スピードのピリオダイゼーション

 スピードの期分けは、一般的準備期に有酸素、無酸素性持久力期となり、テンポランニングなどが進められる。

 専門的準備期に入ると、非乳酸性スピード、乳酸性スピード、スピード持続力、専門スピード。試合期には専門的スピード、アジリティ、リアクション、スピード持続力が必要となる。(テンポラン最大速度の60~70パーセントで200~600メートルのランニング)

トレーニング量と強度のダイナミズム

 トレーニング量と強度は年間計画におけるトレーニング負荷を決めたり、ピーキングを考える際に大切である。野球のようなスピード、パワー系の種目は量よりも質の高い強度が大切になる。まとめると、

(1) テンポランと1RM(最大挙上重量)の80%以下の負荷
(2) 400メートル×6~8本 (VO2MAX 60パーセント)
(3) 200メートル×10~12本(VO2MAX 70パーセント)1セット
(4) 80~100メートル×12~15本(VO2MAX 70パーセント)1セット
(5) 50メートル×8~12本(VO2MAX 95~100パーセント)1セット

上記のような流れになると思われる。そこにバランス良くストレングストレーニングとして解剖的学的適応期、最大筋力期、パワー期を組み込んでいくのが大切になる。

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総合的なピリオダイゼーション

 ピリオダイゼーションを成功させるためには、各期に最適な食事方法や心理的スキルを組み合わせていくことが大切になってくる。まとめてみると、

◆一般的準備期(オフ期)
スピード:有酸素性/無酸素性持久力
ストレングス:解剖学的適応&最大筋力
メンタル:スキルの評価、新しいスキルの学習、エネルギー保存
栄養:バランスの良い食事

◆専門的準備期(春季大会前、夏季大会前)
スビード(前半):最大スピード(短)/無酸素生持久力維持
スピード(後半):最大スピード(短)/最大スピード(中)/最大スピード(長)
ストレングス:最大筋力&パワー
メンタル:トレーニング目標に向けたメンタルスキル、可視化、イメージトレーニング、リラクゼーション、エネルギー管理
栄養:高タンパク(最筋力)、高炭水化物(パワー)

◆大会前(夏季大会前)
スピード:野球に必要なベースランニングや方向転換
ストレングス:ローテーションストレングス&筋力維持
メンタル:メンタルリハーサル、エナジャイズ、ポジティブトーク、コンセントレーション、ゲームシュミレーション、応処
栄養:高炭水化物

◆大会中
スピード&ストレングス:大会前と同じ
メンタル:特異的な問題に対応するメンタルスキル、ストレングスマネージメント、リラクゼーション、エナジャイズ、コンセントレーション、メンタルリハーサル、ポジティブシンキング、楽観性
栄養:ゲームに合わせながら

この時期オススメするローテーションストレングス

 最後に、この時期に是非行って欲しいローテーションストレングスを4つ紹介しようと思う。

(1)チューブヒップヒンジ
(2)チューブダイアゴナルリフト
(3)MBヒップヒンジローテーションスロー
(4)MBサイドヒップヒンジローテーション

 ベストな状態で夏の大会に挑めるように、今回紹介したことを取り入れて、夏へ向けてしっかりと準備をしていきましょう!


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2016年度 春季高校野球大会特集

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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