- トップ
- コラム一覧
- 殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング
- ピッチングとフィジカルテスト及び球速との関連性について
第12回 ピッチングとフィジカルテスト及び球速との関連性について2010年04月15日

前回の第8回『ピッチングトレーニング理論編1 ピッチャーの体調管理とシーズンオフの過ごし方』 でピッチャーのトレーニングについてお話させてもらいましたが、はたして何を目標にトレーニングをすればいいのか、これを明確にしないとトレーニングとは言えません。
私も選手として、トレーナーとして、長きにわたりこの世界に関わってきました。選手時代は、いろいろトレーニングについて調べ、自分の体で試し、結果を出して、というサイクルを繰り返していました。そしてトレーナーになり、いろいろな選手をみてきました。トレーニングもその時代時代に流行ったトレーニングなどもどんどん取り入れてきましたが、それがどれほどピッチングに反映したのかがさっぱりわかりませんでした。だからこそ、いろいろなトレーニングに飛びついていったのだと思います。
特にランニングについてはどの位の距離を、どの位の量走ればピッチングの能力が上がるのかずっと疑問でした。高校、中学はひたすら毎日10km走って、家に帰れば5km走ったり、高校時代には親に頼んで駐車場にバーベルセットを用意してもらったりと、自分なりに研究したものです。しかし、答えがないのでいつも、ただやるだけのトレーニングになっていました。
プロ野球ピッチャーの体力レベル
当院に来る選手にはあるプロ野球チームのピッチャーの体力レベル(一番上のレベル)を示しています。
| 平均 | MAX | ||
| 身体筋力 | |||
| 握力 | 利き手 | 59.7kg | 73.0kg |
| 非利き手 | 56.3kg | 68.0kg | |
| 背筋 | 206.2kg | 272.0kg | |
| 腹筋(10kg錘付、傾き有) | 12.6回 | 26.0回 | |
| 筋持久力(30秒腹筋) | 35.1回 | 45.0回 | |
| パワー系 | |||
| 垂直跳び | 68.2cm | 82.0cm | |
| 10m走 | 1.29秒 | ||
| 30m走 | 3.68秒 | 3.5秒 | |
| 50m走 | 6.24秒 | 5.59秒 | |
| 100m走 | 12.11秒 | 11.27秒 | |
| 柔軟性 | |||
| 体前屈 | 15.3cm | 25.5cm | |
| 上体そらし | 61.1cm | 79.0cm | |
| 呼吸循環系 | |||
| 肺活量 | 5132cc | 6800cc | |
| 神経系 | |||
| 反応時間 | 290msec | 353msec | |
ちなみに参考までですが、有勝利のピッチャーと非勝利のピッチャーのフィジカルで差が出たのは背筋と握力です。このデータを見て思うのですが、私の見ている選手でも背筋、50m走、垂直跳び、握力の4つがこちらの数値に近いデータを出せる選手は、プロや上のレベルに進んでいる傾向を感じます。
プロ野球ピッチャーの体格
| 平均 | |
| 身長 | 180.8cm |
| 体重 | 79.7kg |
| 体脂肪 | 15.70% |
| 除脂肪体重 | 67.0kg |
| MAX | 80.9kg |
| MIN | 57.2kg |
| 頭囲 | 56.9cm |
| 頚囲 | 37.3cm |
| 胸囲 | 95.8cm |
| 腹囲 | 82.3cm |
| 腰囲 | 97.2cm |
| 上腕囲 | 右:28.7cm |
| 左:28.7cm | |
| 前腕囲 | 右:27.3cm |
| 左:26.8cm | |
| 大腿囲 | 右:58.2cm |
| 左:58.5cm | |
| 下腿囲 | 右:38.8cm |
| 左:38.7cm |
ピッチャーの体型でわかるのは、まず体が大きいということ、そして、除脂肪体重(筋肉のだいたいの量の事)の最小が57.2kgであることです。単純に言えば、筋肉の量は、57.2kgは最低ないといけないと考えられます。しかし、この量は平均から10kgも少ない量ですから、さらにテクニックが求められると思います。
よく選手に、「目先のことではなくプロまで目指すなら、最低限の筋量はつけよう」と話します。だから私はウェイトトレーニングを課しています。他の特徴としては、上腕、前腕ともに利き手の方が太く、大腿筋は踏み込み足の方が太いこと。これは前脚の後部、ハムストリングスが股関節ひいては下半身の回転の支点となり、大腿筋が力点として働くからでしょう。また、下腿は右脚が太いことが見られます。これは、下腿筋は投球中アイソメトリックス(ずっと同じ位置で固定される)で働くことが多いからだと考えられます。特に軸脚は片脚で働き、体を支えることが多いためもあると思います。あと、私は選手のコンディショニングをみて思うのは、非利き手の広背筋の発達です。これはこの筋が上肢の回転の力点として働いているからだと思います。
球速と身体筋力の関係
さて、ここで次に球速と身体筋力についての関係を述べたいと思います。
| スピード(km/s) | 選手 | 身長(cm) | 体重(kg) | 体脂肪(%) | 大腿四頭筋(kg) | ハムストリングス(kg) | 腹筋(kg) | 背筋(kg) | 内旋筋(kg) | 外旋筋(kg) |
| 140 | 高校生A | 177 | 77.5 | 12.6 | 84.8 | 45.9 | 113 | 195 | 16.1 | 23.2 |
| 141 | 高校生B | 175 | 70 | 16.2 | 84.2 | 40.2 | 80.5 | 200.5 | 17.2 | 27.4 |
| 143 | 高校生C | 175 | 81 | 20.71 | 88.1 | 44.4 | 86.3 | 145.6 | 16.4 | 16.6 |
| 141 | 大学生A | 179.1 | 68 | × | 84.8 | 46.4 | 99 | 181.1 | 14 | 23 |
| 144 | 社会人A | 181 | 73 | × | 94 | 44.4 | 94.5 | 182 | 14 | 20.4 |
| 147 | プロA | 181 | 85 | × | 96.3 | 53.3 | 128 | 213.2 | 22.5 | 31.5 |
| 150 | プロB | 186 | 87 | × | 109.2 | 57.8 | 107 | 181.8 | 25.1 | 21 |
このデータからわかるように、スピードが上がるほど、筋力が上がっているのがわかります。大まかに、140km/s以上投げるためには大腿四頭筋は85~90kg、ハムストリングスは42.5~45kg、背筋は180~200kg、腹筋は90~100kg、内旋筋は15.0~18.0kg、外旋筋は20~27kg、150km/sを投げるためには、大腿四頭筋は90~100kg、ハムストリングスは45~50kg、背筋は180~210kg、腹筋は90~105kg、内旋筋は22.0~25.0kg、外旋筋は25~31kg必要と考えられます。
このデータを見て思うのはまず、
①一番大きい力を出しているのはずば抜けて背筋である。また、腹筋はその半分の力である。
②スピードを上げるためにはただの腹筋や背筋ではなく、重りを使ったトレーニングで筋力をつける。
③肩の内、外旋もチューブトレーニングではここまでの負荷はかけられない。
よって、ここはダンベルを使って筋力をつける。
実際に、筋力を上げることでスピードを上げた例を見てみましょう。踏み込み脚の筋力が強いのがわかりますし、背筋はみんな210kgオーバーです。
| 例1:高校生A | 身長 | 173cm | 体重 | 71.0kg |
| 球速 | 119km/s | → | 140km/s | |
| 大腿四頭筋 | 右 | 50.2kg | → | 76.5kg |
| 左 | 49.3kg | → | 78.2kg | |
| ハムストリングス | 右 | 30.8kg | → | 42.7kg |
| 左 | 30.6kg | → | 42.5kg | |
| 腹筋 | 60.5kg | → | 150.5kg | |
| 背筋 | 130kg | → | 213.9kg | |
| 外旋筋 | 11.0kg | → | 14.5kg | |
| 例2:大学生(左投) | 身長 | 175cm | 体重 | 81.1kg |
| 球速 | 119km/s | → | 144km/s | |
| 大腿四頭筋 | 右 | 68.3kg | → | 98.1kg |
| 左 | 60.5kg | → | 83.2kg | |
| ハムストリングス | 右 | 38.5kg | → | 52.0kg |
| 左 | 36.2kg | → | 47.5kg | |
| 腹筋 | 70.1kg | → | 103.5kg | |
| 背筋 | 140.0kg | → | 214.0kg | |
| 外旋筋 | 8.2kg | → | 18.0kg | |
| 例2:プロA(中日ドラゴンズ) | 身長 | 183cm | 体重 | 95.0kg |
| 球速 | 137km/s | → | 152km/s | |
| 大腿四頭筋 | 右 | 87.4kg | → | 92.0kg |
| 左 | 89.2kg | → | 94.9kg | |
| ハムストリングス | 右 | 51.2kg | → | 54.0kg |
| 左 | 55.3kg | → | 60.9kg | |
| 腹筋 | 123.1kg | → | 150.5kg | |
| 背筋 | 189.0kg | → | 214.0kg | |
| 外旋筋 | 18.0kg | → | 20.2kg | |
フィジカルはプロに近づくことができる
今回はピッチャーのフィジカルトレーニングをデータ、それと体型・スピードと筋力の相関性についてお話させてもらいました。私は海外で野球を見てきて思ったのが、まず体が大きいということです。
データから見てわかる通り、上にいくためには最低限の筋量や筋力、走力をフィジカルトレーニングによって作る必要があります。それがフィジカルトレーニングをする理由なのです。ぜひ、体力テストをして具体的な数値として自分に必要な筋力、走力を知って欲しいと思います。
私が選手に伝えているのは、「フィジカルはプロに近づくことができる」ということです。
フィジカルは努力次第で上にいくチャンスを作れるのです。ぜひ皆さんも上を目指してピッチャーに必要なフィジカルトレーニングをして下さい。
参考文献
中村 好志、水野 雄仁(2004)『ピッチング革命―「捻転投法」で球速は確実に20km/hアップする!(The newest science of sports)』 永岡書店
『Training Journal』ブックハウス・エイチディ
- 殖栗正登先生
- 生年月日:1976年1月22日
- 出身地:新潟県
- 新発田南高校卒業後、立正大学、東京医療専門学校へと進学。
- 怪我のため、野球部を退部するもプレイヤーとしての情熱を持ち続け、米国、台湾で野球(2軍練習生)として夢を追う。しかし、度重なる怪我によりプレーヤーとしての道を断念し、引退。
- その後柔道整骨術やカイロプラクティックなど、体に関する様々な分野を学び、整骨とボディバランス整体とストレングス・コンディショニングを融合したボディバランス整体院トレーニングルームを開設。
現在、ボディバランス整体院で、多くのプロ野球選手から大学野球,高校野球などのアマチュア選手まで幅広く指導。モデルなども指導している。 - ■ 講演依頼はこちら

殖栗正登facebook









コメントを投稿する