
イップスの治し方、診かた2010年02月08日 さて、シーズンがオフになって当院にも色々な目的で選手が来院してきます。 プロ野球選手はキャンプまでのトレーニング。一番多いのが中学3年生、高校3年生、大学4年生の引退組です。 目的は次のSTEPに向けて、テクニック・フィジカルをもう一段階あげたいというものがほとんどです。 そしてもう一つ、オフの依頼で多いのが、イップスです。 私も長年、ベースボールトレーナーをしていて、イップスの選手が多いのに本当に驚かされます。そして今回のコラムは「イップスの治し方・診かた」について、お話しようと思います。 イップスを「心」と「テクニカル」の側面から見ていきます。 イップスの原因となる「心」を知ろう最初に心の面からのアプローチです。 まずは、自分自身の性格を客観的に知るという事が重要です。そして一つずつ対応策を探していきます。 私の場合は、アメリカの精神医科エリックバーンが創案した「交流分析」を使い、まず選手の性格の特徴を判断します。そこから対応策をとります。 ※分析の仕方はどんな方法でも構いません。自分の性格を客観的に知るということがまずは第一歩です。 「交流分析」では,性格を「CP・NP・A・FC・AC」の5つ分類しています。 CP【Critical Parent】(批判的な親心;家父長的) NP【Nurturig Parent】(育的親心;母親的) A【Adult】(合理的な大人の心) FC【Free Child】(無邪気な子供の心) AC【Adapted Child】(順応した子供の心) その5つの心の割合の高低とバランスがその人の傾向・特徴として考えられます。 当院でイップスの選手を分析したところ結果はNP とAC が強くでてきました。 NPとは保護的な親を表しており、優しい性格ですが、思った事を言えない、とか依存的な傾向が見られます。このようなタイプの選手は依存的な傾向がある為、他人の言葉等を受け入れやすい反面、流されやい傾向があります。 ACには、自己否定が強く出ると失敗し、のち極度に恐れるという傾向があります。 イップスに来る選手は名門の選手が多いです。プロもいる。あまり弱いチームの選手は来ることは滅多にありません。 強いチームほど失敗は許されないし、このようなプレッシャーの中で「ミスをしたらどうしよう」とか「失敗してコーチなどにしかられたらどうしよう。」と思いプレーしています。 そして、NP・AC傾向の選手は緊張のあまり投げれなくなってしまう。 特にAC傾向の選手はひきこもりをおこしやすいACの傾向を持っている為、チームにすらいけなくなり、野球をやめてしまう選手もいるくらいです。 ※今回は一つの例として述べさせて頂くので、他の3種類の性格に関しては割愛させていただきます。 しかし、強豪チームになれば、私はこのくらいのプレッシャーがあるものだと思っています。 時々、親御さんの中で指導者のせいにする人がいますが、チーム全員がイップスなのか、というとそうではありませんよね。きっと少数派だと思います。 指導者の悪口を言っても何も解決はしません。 まず選手には自身の性格についての分析結果をしり、その対策方法をしっかりとこなしてく事が重要だと思います。 今回の例でいうと、NP・ACのタイプは一つずつ、成功体験をさせながら認めながら教える事です。 ただ、そしてやはりより上のレベルにいけば、より強い心も必要です。 「優しい心を持つ事も大事です。しかし、グランドにたったらそこは戦場。強いハートを持って、自らの行動に責任を持つ事。注意されたのはあなたの送球ミスであり、あなたの存在を否定したわけではないのです。そして現状をきちんと把握する客観性を持つことが今後大切である。」 そこを選手に伝える事が一番重要です。 
イップスの原因の「テクニカル」を知ろう次に、テクニカルの面からイップス治療のアプローチに入ります。 私は長年の指導で、イップスは、ほとんどすべて治してきました。 理由は正しいピッチングフォームを知っていれば、間違ったフォームと比較ができるからである。 イップスになった選手の話を聞くと、イップスはメンタルの問題であると指導者の方などから言われ、実際に自分もそう思っているようです。 ただ、それは最初のなりやすい性格であって、イップスの特徴である, (1)「ボールを投げようとするととんでもない高い球を投げる」と (2)「地面にボールを投げつけてしまう」 とうのはテクニックの問題であり、メンタルの原因が分かっていても、今度はテクニックを治さなければ、根本的な解決にはいたりません。 今回は「ダートフィッシュ」というプロ野球でも導入されている分析器を使い、イップスの直し方を紹介します。 まずは(1) 「ボールを投げようとするととんでもない高い球を投げる」場合の治し方です。 写真(1)~(3)を見てください。 (1)の位置の左脚接地時からこの選手は、どんどん左脚のマーキングしたヒザの位置が後に来ているのが分かります。 写真(4)~(5)ではひざの角度が128度から155度まで伸びているのが分かります。 通常のフォームではこのような事はおこりません。 正しいフォームは写真(6)~(8)です。接地した足の位置はリリースまで固定しているのです。 色々な投手のフォーム分析の写真を本などで見てください。レッドソックスの松坂選手なんて全く動いていませんよね。 下半身の地面に接地している唯一の場所です。ここがリリースの時までに、動くというのは、リリースが安定しないのです。 ましてや、後ろにいくという事は、絶対にありえません。 何故なら、目標に対して重心は、その方向に進まなくてはいけないのに、逆にいくというのは、パフォーマンスを出すときに一番やってはいけないからです。 後ろに下がるというのは、後ろ歩きと同じ原理ですから、ヒザが伸びて、後ろにけっているのと同じですから、ヒザも伸びるのです。 以上のことから、重心が後ろに下がるため、リリースポイント時に身体が前傾できないことと、膝が伸びることで上体が高くなり、リリースポイントも高くなり、球が高くなるという結果が出てきます。 2回目の写真が(9)~(11)です。 また写真(12)(13)では、ヒザの位置が治っていますし、ヒザの角度も治っています。 この選手はこれで一発でイップスは治りました。
そして、もう一つ(2) 「地面にボールを投げつけてしまう」ケースの治し方です。 これは私も手術の後にこの症状のイップスになってしまい、徹底的に自分で研究しました。結果は「リリースの瞬間で親指が離れない。」という事でした。 肘が伸びるのが怖くて、肘を屈曲させてしまい、結果、手首も連動して屈曲してしまい手首の背屈(反り)がでないで押し出すようなフォームになりました。 選手でよくあるのは、最初に球が高くなるイップスになり、次に投げるのが怖くなってしまうパターン。リリースの瞬間にボールに力が入り、強く握ってしまうためです。そのため、親指が離れなくなります。試しに、親指をつけて写真(15)のようにリリースポイントを作ってみてください。すると、リリースの角度が地面に向くのがわかると思います。 写真(14)が正しいリリースの瞬間で、写真(15)が親指が離れないフォームです。 テクニック・理由が分かったので、私はすぐに自分で治しました。 このようにイップスは大抵この2つの理由でおかしくなっている事が多いです。 理由がわかっているので、治し方も分かる。それを処方すれば、選手はイップスから治ります。(イップスが多い名門の選手はのみこみも早くすぐ直ります。)
最後に、私がイップスの選手を治す時、気をつけるのは 「テーマを多くしないこと」 「フォームの見える化」 「明確に原因を伝える」 この3つです。 殖栗正登の考えるトレーニングに取り組む姿勢~現場からの日々雑感~私は競技における人間形成は大事だと考えています。 1つは「勝つ為にベストをつくせる。」という事であり、その為の努力・練習に耐える忍耐力をつけられると言うことである。 ただ、それは勝つ為に何でもやるといるのでありません。人として正々堂々とベストをつくす、ここに清々しさが生まれてくる。そこに競技の魅力があると思うし、素晴らしい人間が形成されるのではないでしょうか。 さわやかな笑顔・この心を育てる事がスポーツの良さである。 しかし、現在は過保護になり過ぎている為、なんでも簡単に手に入ってしまうと思ったり、いざとなれば、誰かが何とかしてくれるだろう、という無責任さが自然に通ってしまっている気がします。 私は選手の本質をみる時にその選手のちょっと上のレベルのトレーニングをやらせてみる事があります。 弱い選手は大抵、下を向いて、あきらめます。またそれを態度に出す。これは人にアピールして助けてもらおうとする逃避行です。 競技には勝ち負けという結果があります。そして、トレーニングは自分ひとりの戦い。トレーニングくらいで下を向くようではチームでレギュラー争いをして、なおかつ相手に勝つのは難しい。この傾向は1.5軍~2軍の選手やイップスの選手にも多いですね。 素質はあってもいまひとつ伸びがないのは、私は心に原因があると思います。 1軍で活躍する選手、心の強い選手の反応は「ヨッシャ!」と気合いの入る言葉を出して、前向きに取り組む選手が多い。 また弱い選手にあるもう一つの要素は「怒り」をだす事。かなり交感神経が高ぶっている。こういう選手はマウンド上や緊張する場面で、興奮しすぎて身体が緊張して良いパフォーマンスを発揮しづらい傾向があります。 一流選手は物事に対して、ポジティブに、または冷静に=心はあつく、頭はクールに、を実践できている選手だと思う。まさにイチロー選手はそうだと思います。 トレーナーとして選手を見る時、少しきついレベルの練習で下を向く選手や感情のコントロールができずにイライラする選手は、そのようなネガティブな感情にならないように丁寧に見ながらトレーニングを処方していきます。 ただそれでは当然、ポジティブに前向きに自らやろうという選手に比べて、高いレベルの指導を提供しにくいというのが正直なところです。例えると、親が子供をなだめながら、トレーニングという戦いをやるようなものです。戦う以前の問題ですよね。 まだ1対1のパーソナルトレーニングなら良いですが、チームになって、このようなパーソナリティの選手はチームに良い影響を与えないでしょう。 選手の皆さんは、もう一度、よく自分がハードトレーニングをしている時の態度を客観的に見つめなおしてみてほしいと思います。そして、もし下を向いたり、文句を言ったり、イライラしているのなら、それは自分を守る為の防御反応行動でしかないと思います。 厳しいトレーニングをポジティブに取り組み、強くなることへの達成感を感じ、自分に勝ち、勝負に勝って欲しい。私は是を「ストロングスタイル」と呼んでいます。 競技選手でTOPを目指している選手ほど、是非「ストロングスタイル」で正々堂々さわやかに、ポジティブにトレーニングにゲームにそして私生活でも取り組んで欲しいものですね。 イップスという恐怖から開放された選手達は、「今度はバッティング」、「次は変化球」と、どんどん前向きになっていきます。私は選手が壁を乗り越え、前向きになる、「この瞬間」を一緒に共有できる喜びを感じます。そしてより熱く指導しようと、心が「ストロングスタイル」になるのです。 

- 殖栗正登先生
- 生年月日:1976年1月22日
- 出身地:新潟県
- 新発田南高校卒業後、立正大学に進学。
- 怪我のため、野球部を退部するもプレイヤーとしての情熱を持ち続け、米国、台湾で野球(2軍練習生)として夢を追う。しかし、度重なる怪我によりプレーヤーとしての道を断念し、引退。
- その後整体やカイロプラクティックなど、体に関する様々な分野を学び、整体とスポーツトレーニングを融合したボディバランス整体院を開設。
現在、ボディバランス整体院で、多くのプロ野球選手から大学野球,高校野球などのアマチュア選手まで幅広く指導。モデルなども指導している。
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