その選考は世界を意識したものだったか?野手編成から見えた見通しの甘さ
史上最強と評された投手の一方で、野手に対する評価はマチマチだった。遊撃手が多すぎて、偏った選出との声もあった。ではこの選出のプラスの面とマイナスの面について語っていきたい。
国際大会まで見据えたメンバーだったのか
遊撃手6名
今年の代表選手は、正規のポジションが遊撃手だった選手が6名いた。その選手たちの打撃成績は以下の通り
遠藤 成(東海大相模) 16打数3安打3打点 打率.188
森 敬斗(桐蔭学園) 25打数8安打1打点 打率.320
韮澤 雄也(花咲徳栄)29打数10安打4打点 打率.345
坂下 翔馬(智辯学園)24打数3安打4打点 打率.125
武岡 龍世(八戸学院光星)24打数3安打6打点 打率.125
熊田 任洋(東邦)22打数7安打8打点 打率.318
単純に6人も揃えたのは、走攻守の総合力を高く評価しての選出だろう。遠藤は高校通算45本塁打の長打力、最速145キロを投げる強肩を生かした遊撃守備。森はとびぬけた俊足と強肩が光る守備。そして韮澤は高校生トップクラスを誇るバットコントロールと軽快な守備。
坂下は小柄を補うパワフルな長打力と俊敏な守備。さらに、武岡は広角に打ち分ける打撃技術と安定性と強さを兼ね備えた遊撃守備。熊田は卓抜したバットコントロールと強肩を生かした遊撃守備が評価されてのもの。
ただ普段と違うポジションを短期間で出来るほど甘くはなかった。特に一塁手に入った韮澤は、想像以上の難しさを感じたという。
「まずファーストミットに慣れませんでした。バウンドする打球の処理にも苦労しました。それだけではなく、投手の声かけ、ポジショニング、一、二塁間の打球に対しての、セカンドとのやり取り。またカバーリング。ファーストはあまり動かないから楽といわれていますが、そんなことはなく、想像以上に難しいポジションでした」
韮澤は一塁手としてベストナインを表彰されたが、「取ると思っていなかったです。守備の評価ではなく、打ったことが評価されたと思います」
そしてセンス抜群の武岡も外野のポジションの難しさをこう語る。
「真剣に外野をやってみてわかったのは、外野手は打球勘だけではなく、カバーリング、送球するときの距離感など覚えることがたくさんありました」
また、外野に回った遠藤はフライの対応に苦しみ、いくつかミスがあった。
唯一、妥当なのは、森のセンターコンバート。森のショートの守備は一歩目のスタートが切れるのが遅かったり、なかなか前に出ていけない欠点があった。また、目切りが早く、捕球ミスが多く、外野コンバートは必然だった。身体能力が高い選手の外野コンバートは良くある話で、他国でも韓国の1番センターの李主形(イ・ジュヒョン)はもともと内野手だった。ただこれは森ほどの野球センスが高い選手であるからこそ成り立つ事案である。
今回、この編成で首脳陣、選考にかかわった方々はどのレベルを求めたのだろうか?確かに複数守れる選手は強い。しかし、ほぼ経験がない選手が代表入りして短期間で守備練習しても無理があるのは明白。
今大会で4位以内に入った台湾、アメリカ、韓国、オーストラリアは内外野ともに鍛えられており、上手い選手でなければアウトにできないファインプレー、失点を防ぐプレーができていた。
2年生の外野手2名
また対照的に日本は天然芝の対応に苦しむなど、計9失策。そのうち内野手の失策は7つ。タイムリーエラーは、パナマ戦で1つ、韓国戦で2つ、オーストラリア戦で1つ。史上最強投手陣をもり立てることができず、逆にこの投手陣でなければ大量失点は免れない編成だった。
また外野手で選手された横山陽樹は6試合に出場したが、韓国戦ではベンチスタート。鵜沼魁斗はわずか3試合、2打席で終わった。外野手選出がわずか2人で、宮城大弥、西純矢と投手が優先的に起用され、外野手で選出された鵜沼がほとんど出場できないということは、選考する側と現場側の間で人選にミスマッチがあった。二刀流を選ぶことが悪いのではない。実際に他国は投手登録の選手が野手に出場している。しかし貴重な外野手の枠をベンチウォーマーに回したことは勿体ない。
この1年間、研修合宿を組むなど、国際大会の準備を行い、予選ラウンドまで打率.318、5本塁打と課題だった木製バットの対応は成果が見える。しかしこの守備編成を見ると、国際大会を想定した選考はできておらず、見通しが甘かったと言わざるを得ない。
(記事=河嶋 宗一)
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