史上最強投手陣の運用ができなかった日本代表。他国と比べれば一目瞭然
第29回 WBSC U-18 ワールドカップ。世界一を目指した侍ジャパンU-18代表は5位に終わった。世界一を目指した選手たち、高野連にとっては痛恨の結果だろう。今、なぜ5位に終わったのか、各メディアで議論されている。
高校野球ドットコムでも、今回は数字を使いつつ、1つずつ検証を進めていきたい。まず投手運用についてだ。
特定の投手に頼った投手起用
3連投もあった西純矢
今年は「史上最強の投手陣」だと何度も伝えてきた。それは結果として現れている。4位までに入ったチームと比較すれば、今年の投手陣が優秀だったか分かるはずだ。
日本 防御率1.58 62.2回 93奪三振 奪三振率13.36
アメリカ 防御率2.69 67回 64奪三振 奪三振率8.60
韓国 防御率3.52 69回 80奪三振 奪三振10.43
オーストラリア 防御率3.75 67回 55奪三振 奪三振率7.39
チャイニーズタイペイ 防御率3.60 60回 57奪三振 奪三振率9.75
防御率、奪三振率はこの4か国よりも上回っている。他国の投手と違ったのは、三振を奪える変化球を必ず持っていたこと。18奪三振の奥川恭伸であれば、縦スライダー、西純矢であれば、フォーク。そういう意味で、日本の投手育成は改めて世界一ということを証明できた。
ただ気になる点はある。それは特定の投手に頼った投手起用だということ。去年は柿木蓮、根尾昂、吉田輝星だったが、今年は強豪国相手には西、宮城大弥、飯塚 脩人に集中する形となった。
西は13.1回、宮城は8.2回、飯塚は6回。特に西はアメリカ戦からパナマ戦まで3連投してから中2日の韓国戦で起用するなど、ほぼ西に頼った形だ。上位4か国の登板人数を見ると、一目瞭然。
日本 9名
チャイニーズタイペイ 9名
韓国 11名
アメリカ 12名
オーストラリア 11名
チャイニーズタイペイ以外、10人以上登板しており、投手運用を行っている。特にオーストラリアは右5人、左5人控えており、少し危ないと感じれば、躊躇なく継投をしていた。オーストラリアの投手陣の力量は世界的に見ても並みだが、先発・中継ぎ・ワンポイント・左の中継ぎと、役割分担ができていた。オーストラリアのフィッシュ監督は「投手起用に関しては、投手陣はコンディションが良かった」とコンディションの良さがうまく運用できた要因だろう。
一方、日本の投手運用はどうだろうか。奥川は甲子園での疲労、佐々木朗希は血豆。ダブルエースが第1ラウンドで登板できず、7人で回す形となった。5日連続の試合を7人で回して、球数制限がある中、勝利を目指すのは、今回の首脳陣に限らず、特定の投手に負担がかかるのは必然なのだ。
また、佐々木朗希は血豆を再発してしまい、わずか1イニングに終わったことも響いた。
数値が、すべての面で劣っていて、5位に終われば、単純に世界レベルに達していないと切り替えるだけでいい。
しかし数値面で優れているのに5位に終わるという結果はいろいろな面で問題がある。今回は20人すべてが思い通りに機能しなかったことが一番の敗因だといえる。なぜ機能しなかったのか?それは選考、戦術の面で多岐にわたって総括し、次の世代へ引き継ぐ必要がある。
(記事=河嶋 宗一)
関連記事はこちら!
韓国戦の敗戦から、何を学ぶべきか
「プロ野球第一」「大学進学のための全国大会」日本とは似て非なる韓国の高校野球事情