Column

韓国戦の敗戦から、何を学ぶべきか?

2019.09.07

エラーを呼ぶ構造的な問題

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サヨナラに歓喜する韓国

 試合後、韓国代表の李聖烈(イ・ソンヨル)監督に、日本チームの印象を聞くと、「日本チームも一生懸命やったと思いますが、守備のミスで問題が生じました。韓日戦は、エラーで勝負がつくことが多いです」と語った。

 韓国の記者にこの試合の韓国を聞くと、異口同音に、「名勝負でした。でも……」と、日本のエラーの話が続いた。
 延長タイブレークに持ち込まれた試合は、最後まで目が離せない、力のこもった熱戦であり、名勝負だった。しかし、基礎がしっかりし、守りがいいはずの日本が、守りでミスをしては勝ち目がない。

 8回裏に三塁手・石川昂弥の暴投で韓国が同点に追いつくと、スタンドの韓国の観客から「ありがとうございます」の声が飛んだ。けれども、そんなことで感謝されても困る。

 これは石川だけの問題ではない。日本は国際大会で意外とエラーをしており、もっと構造的な問題があると思う。
 日本の高校球界が国際大会に本格的に参加するようになったのは、ソウルで開催された2012年になる。普段は金属バットを使っているために、木製バットの対応が課題になっているが、これは以前に比べれば、かなり対応できるようになったと思う。

 その一方で見落とされがちなのが、内野の天然芝グラウンドへの対応である。国際大会では、やや荒れた天然芝のフィールドで行われることが多い。
 日本では通常、長い距離の送球は、高く投げるよりは、バウンドしても、低く投げるように教わる。それは、整備された日本の土のグラウンドや人工芝のグラウンドでは有効である。しかし、天然芝のグラウンドでは、送球が遅くなったり、イレギュラーしたりするリスクが高い。

 そもそも、大会に備えての練習は、内野が天然芝のグラウンドでやるべきではなかったかと思う。

[page_break:韓国戦の「魔の8回」]

韓国戦の「魔の8回」

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日本ベンチ

 日韓戦で韓国の人たちに刷り込まれているのは、「約束の8回」という言葉だ。
 この試合でも、日本が2点リードしていても、スタンドの韓国人の観客からは、「8回がある」という声援が飛んだ。韓国の李監督も、「我々の先輩たちが作ったものです。我々にも勝機は来ると思っていました」と語っている。

 実際8回表に日本は、一死満塁のチャンスを併殺で潰したのに対し、韓国は2番の金智讃(キム・ジチャン)の執念のセーフティーバントでチャンスを作り、日本はエラーをして同点に追いつかれた。

 振り返れば、2000年のシドニー五輪の3位決定戦で、好投の松坂大輔が失点したのも、2008年の北京五輪の準決勝で李承燁(イ・スンヨプ)が決勝の本塁打を放ったのも、2006年の第1回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の東京ドームの試合で韓国が勝負を決めたのも、みんな8回であった。韓国の「約束の8回」は、日本にとっては「魔の8回」ということができる。

 韓国で「約束の8回」という言葉が生まれるきっかけになったのは、1982年にソウルで開催された、アマチュア野球の世界選手権の決勝の日韓戦であった。
 この試合、日本がリードして進んだが、8回に韓国が追い上げ、金在博(キム・ジェバク)が、完全に外された球に飛びつき、スクイズを決めて同点に追いつき、一気に逆転する。このスクイズは「ケグリ(カエル)バントとして、韓国野球の名場面として語り継がれている。

 逆に日本は、韓国の8回は気を付けろという意識はあったのだろうか。
 韓国も年々力をつけているが、トータルの力は、まだ日本が上ではないかと思う。それでも韓国が勝つことが多いのは、国際大会の経験の差ではないかと思う。

 1981年に始まるU18の世界大会の、第1回の優勝は韓国であった。この時は、後に中日の守護神として活躍する宣銅烈(ソン・ドンヨル)がいた。過去5回の優勝チームの中には、ホームラン打者の李承燁、メジャーで活躍する秋信守(チュ・シンス)、北京五輪時の日本キラーの金廣鉉(キム・グァンヒョン)らがいる。

 韓国はU18だけでなく、他の年齢層の代表の試合の記憶も受け継がれている。

 大会はまだ終わったわけではない。ただどういう結果であれ、この大会をしっかり総括し、教訓を受け継いでいってほしい。そしてその教訓が、国際大会の経験が一番豊富な社会人をはじめ、日本球界全体の記憶として、共有していくべきではないか。

(取材=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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