Column

丸亀と丸亀城西「伝統の定期戦」

2018.05.28

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に日々四国内外を飛び回る寺下 友徳氏の新連載コラム「四国発」がスタート!毎週1回を基本に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしていきます。
  第6回でお伝えするのは今年、第60回を迎える「伝統の定期戦」。香川県立丸亀高等学校と香川県立丸亀城西高等学校との間で行われる「第60回丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」の様子を通じ、昨今世間の話題になっていることにも触れていきます。

60回目を迎えた「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」

丸亀と丸亀城西「伝統の定期戦」 | 高校野球ドットコム
第60回丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦開会式での丸亀城西(手前側)と丸亀(奥側)

 この5月、日本のスポーツ界……。いや、日本じゅうではこのことが大きな話題となっています。5月6日に端を発する「日本大学アメリカンフットボール部フェニックス、悪質タックル問題」。現在に至るプロセス、事後対応の異質さはもちろんですが、悪質タックルが通算51回目、数多くの観客が詰めかけた関西学院大学体育会アメリカンフットボール部FIGHTERSとの「春の定期戦」で起こったことにも、ショックを禁じえません。

 

 ではそもそも「定期戦」とはどのようなものでしょうか?実はこの「定期戦」。アメリカンフットボールに限らず、スポーツでは恒常的に使われている言葉です。最も有名なのは早稲田大学と、慶應義塾大学との「早慶戦(慶早戦)」。1903年の野球に端を発し、現在では種目を問わず行われています。他にも関西では同志社大学と立命館大学との「同立(立同)戦」、関西大学と関西学院大学との「関関戦」など、全国各地にお互いの技量を競い、交流を図る「定期戦」は存在しています。

 

 もちろん四国にも「定期戦」は各地にあり、最も盛んなのはやはり高校野球。さる5月26日には1959年の開催再開以来、最も伝統を誇る「第60回丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」が香川県丸亀市の[stadium]レクザムボールパーク丸亀[/stadium]で開催されました。

 

 では、実際の様子を少し映像で見てみましょう。

 

 まず驚きなのが定期戦の勝者には丸亀市寄贈の旗が渡され、翌年までそれを保持できること。自らも丸亀商時代のOBである丸亀城西・河本 浩二監督(1984年センバツ出場時のエース)によれば「僕の現役当時は[stadium]丸亀城内球場[/stadium]で開催されて、両校とも応援団が出てすごい盛り上がっていた」とのこと。その意識は1993~1994年には主将・捕手としてチームをけん引した丸亀・桑嶋 裕二監督にも強く残っています。
 「甲子園に行くためには倒さなければいけない相手。現役時代も必死でやっていた記憶がありますし、僕の中では公式戦です」

[page_break: 「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」に見る「高校野球の本質」]

「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」に見る「高校野球の本質」

丸亀と丸亀城西「伝統の定期戦」 | 高校野球ドットコム
丸亀先発・東山-玲士(3年)

 事実、60回目の「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」は公式戦さながらの内容でした。前年、0対10で丸亀城西に敗れた雪辱を期し、プロ注目の丸亀右腕・東山 玲士(3年)が6回1安打1失点で抑えれば、打線も2回裏に打者11人を送り込んで5点を先制。ただ、丸亀城西も4番・塩田 小次郎(3年・一塁手)のランニング本塁打などで最後までファイティングポーズをとり続けました。

 

 

 結果は丸亀が9対2で勝利し、対戦成績を丸亀21勝・丸亀城西33勝・引き分け6としましたが、両監督が「夏に向けて、いい緊張感でできた」(丸亀・桑嶋監督)「この結果を夏に生かさなくてはいけない」(丸亀城西・河本監督)と語ったように、両校にとって意義あるものに。昨年は定期戦から約2か月後、香川大会準決勝で熱戦を演じた両校のライバル物語は、これからも定期戦の歴史とともに積み上がっていくことでしょう。

 

 

 ちなみに「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」の歴史をさらにたどろうと思い、2002年に発行された「丸髙野球部史」(香川県立丸亀高等学校野球部部史編纂之会:発刊)を見ると、こんな記述がありました。

 

昭和21年8月24日
戦後の第一戦
対丸商戦

*丸商は丸亀商(現在の丸亀城西)の略称

 

 この当時、両校の選手たちはきっと「野球のできる喜び、高めあえる対戦相手が身近にいる喜び」を享受しあいながら、ボールを追ったはずです。この時、私は日本中の支持を集め、人気を博してきた「高校野球」の理由を垣間見たような気がしました。

 

 

 これから「最後の夏」に向かい、勝利が最も求められ、勝利を求める時期に入る高校野球。きっと「勝つしかない」と思い詰める高校球児の皆さん、関係者のみなさんも多いと思います。ただ、「丸亀高校・丸亀城西高校野球定期戦」の起源にあるような、喜び合う仲間と正しく対戦する「本質」なくしては、周囲の支持は得られない。そこだけは胸に刻んでいただければと願っています。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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