中四国地区「大学野球事始」
2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に日々四国内外を飛び回る寺下 友徳氏の新連載コラム「四国発」がスタート!毎週1回を基本に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしていきます。
第4回の題材は「大学野球」。今回は瀬戸内海の向こう中国地区にも触れながら、全日本大学野球選手権出場を目指す各連盟・春季リーグ戦の状況についてお伝えします。
中四国地区大学野球は「素材開花」の場
右から近藤 弘樹(東北楽天1位指名・投手)・赤木 貫人監督・蔵本 治孝(東京ヤクルト3位指名・投手)
四国地区大学野球連盟 創立1949年 加盟11校(1部6校・2部5校)
中国地区大学野球連盟 創立1974年 加盟21校(1部6校・2部6校・3部5校・4部4校)
広島六大学野球連盟 創立1967年 加盟6校
現在、中四国地区の大学野球はこの3連盟・38校で活動中。歴史と伝統を誇る東京六大学野球連盟・東都大学野球連盟・関西学生野球連盟などに比べ知名度は低いですが、磨けば光る素材が数多く在籍しています。
特に昨年は中四国地区大学野球にとってエポックメイキングな年になりました。6月の全日本大学野球選手権では現在、西濃運輸の主戦格として活躍中の四国学院大(四国地区大学野球連盟)・小久保 気(当時4年)が東北福祉大(仙台六大学野球連盟)を完封すれば、岡山商科大(中国地区大学野球連盟)・近藤 弘樹(当時4年)も、近畿大(関西学生野球連盟)に2失点完投勝利。
続く秋季も、リーグ戦で岡山商科大とのデッドヒートを制し、明治神宮大会3連盟代表決定戦でも安定した実力を披露した環太平洋大が、明治神宮大会2回戦でも慶應義塾大(東京六大学野球連盟)相手に高祖 健輔(当時4年・現:トヨタ自動車)の好リードが光り、5対1で快勝。そしてドラフトでは近藤 弘樹が東北楽天ゴールデンイーグルス1位指名、岡山商科大同僚の蔵本 治孝も東京ヤクルトスワローズ3位指名を受けました。
ちなみにここであげた4名はいずれも高校時代はドラフト候補からは遠かった存在。これだけでも中国地区大学野球が「素材開花」の場ということがお解りいただけるのではないでしょうか。
近藤 弘樹・蔵本 治孝選手が指名された時の記事はこちらから。
英明での控えから四国学院大4番にのし上がった山田 晃(2年・外野手)
2018年春・中四国地区大学野球の現在地
では、新シーズンとなった2018年春、中四国地区大学野球の現在地はいかなる状況なのでしょうか?実は、すでに3連盟中2連盟で全日本大学野球選手権進出チームが決定しています。
すでに5月5日にリーグ戦が終了した四国地区大学野球1部リーグは、四国学院大。香川西高校コーチから今年大学コーチに転じ、急きょ3月から昇格した元東北楽天ゴールデンイーグルススカウト・中尾 明生新監督の下、四国学院大が勝ち点5で3季連続24回目の優勝と、2年連続12回目となる全日本大学野球選手権出場。英明(香川)高では、公式戦でほとんど出場機会のなかった山田 晃(2年)が4番・指名打者で大活躍するなど、適材適所の人材配置が光りました。
一方、中国地区大学野球1部リーグでは5月13日(日)・徳山大が2014年秋以来7季ぶり28回目の優勝と、全日本大学野球選手権7年ぶり13回目の出場を完全優勝で決めました。同大OBでNTT西日本でも外野手・マネージャーとして活躍後、2017年から指揮を執った中村 光宏監督の下、各所に基本を徹底した成果が実った形です。
なお、両校は全日本大学野球選手権初日の6月11日(月)・東京ドームでの第3試合(14:00開始予定)で直接対決することになっています。
そしてまだ2週を残す広島六大学野球で現在トップを走るのは、3季連続優勝中の近大工学部でも、柳田 悠岐(福岡ソフトバンクホークス)を輩出している広島経済大でもなく……。なんと、国立の広島大。5月19日(土)・20日(日)に行われる広島経済大戦で勝ち点を取れば、2009年秋以来12度目の優勝と、1983年以来35年ぶり3度目の全日本大学野球選手権出場を勝ち点5で決めることになります。
その大黒柱として君臨するのは宇部(山口)高出身・最速148キロの中田 朋輝(4年)。この異色の国立大右腕については、中四国地区大学野球3連盟の注目選手と絡めて、改めて触れていこうと思います。
ちなみに、広島六大学野球優勝校の全日本大学野球選手権初戦は、大会初日の6月11日(月)・明治神宮球場での開幕戦(9:00開始予定)。大会3年連続出場の名門・東北福祉大(仙台六大学野球連盟代表)相手に、どんな試合を展開できるかが、今から楽しみです。
(文・寺下 友徳)