Column

「四国」だからこそ、できること

2018.04.23

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し12年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に日々四国内外を飛び回る寺下 友徳氏の新連載コラム「四国発」がスタート!毎週1回を基本に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしていきます。
 第1回の題名は『「四国」だからこそ、できること』。はたして、どんなお話がとびだすのでしょうか……。

ミステリアスな魅力を持つ「四国」 

「四国」だからこそ、できること | 高校野球ドットコム
練習試合の開始を待ちわびる高校野球ファン、これが四国週末の日常風景だ

 首都東京から西南西へ約600キロの彼方。徳島県・香川県・愛媛県・高知県の4県からなる島「四国」。海と山の幸が共にある土地柄。古来から平家落人の伝説が引き継がれ、幕末には日本の歴史を変えた志士・坂本 龍馬を輩出。明治期には三菱財閥を築いた岩崎 弥太郎をはじめ、今治タオル、井関農機といった産業も生み出し、世界に誇る「阿波踊り」、「讃岐うどん」なども四国発祥である。

 実際、四国12年目を迎え、津々浦々まで道を走ってきた筆者も、いまだ未開の場所が数多くある。住めば住むほどミステリアスさに惹かれ、好きになっていく。それが「四国」の大きな魅力といえよう。

 そんな四国の象徴といえば、4県合わせて参加200校に満たないにもかかわらず、これまで甲子園で数々の栄光をつかみ、球界に名選手たちを輩出してきた高校野球をはじめとする「野球文化」があげられる。

 たとえば週末朝に高校グラウンドへ足を運ぶと、どこから情報を手に入れてきたのか、近隣のファンが集まり、野球談議に花を咲かせながら練習試合を見守る。100人から話を聴けば、必ず野球関係者がその中に数人いる。営業トークでも切り出しは野球のことが一番スムーズだ。

 これはもはやスポーツを超え、四国の文化的財産といっても過言ではないだろう。

「野球王国」復権のかぎは「独自性」

 ところが、そんな四国の野球が最近、ちょっと元気がない。高校野球を例にとればセンバツでは2013年済美(愛媛)、2016年高松商(香川)が準優勝。明治神宮大会では2015年高松商(香川)、昨年明徳義塾(高知)が優勝を果たしたが、夏の甲子園優勝は2002年明徳義塾を最後に15年間なし。

 さらに言えば夏の決勝進出も初出場で春夏連覇を目指した2004年の済美以来なく、20132016年のベスト4はじめ、夏に無類の強さを発揮する明徳義塾を除けば、過去5大会の夏の甲子園複数勝利は昨年済美三本松(香川)の2勝<三本松はベスト8入り>、2013年鳴門(徳島)の3勝、ベスト8入りと限られたものに。

 このセンバツも90回記念大会で4校が選ばれたにもかかわらず、勝利をあげたのは明徳義塾の1勝のみ。現在における他地域との野球人口比率を比較すれば「健闘」という見方もできるものの、「野球王国」を自負する四国としてはやや寂しさを禁じ得ない。

  ではなぜ「元気がない」のか?明快に言えば「独自性がない」からだと筆者は思う。

 明徳義塾でいえば、基本練習に立脚した全国NO1の守備力。済美は圧倒的なスイング、エルゴメーター含むトレーニング量。三本松ならば、「野球部訪問」「3年生座談会」でも取り上げた短期・中期・長期の計画立案から練習・試合へのアプローチ。鳴門はこれも「野球部訪問」で取り上げた指導陣も含めた組織づくりと、冬の徹底した練習量。すなわち躍進したチームは例外なく、全国へ発信できる「独自性」を有していた。

 もちろん「フライボール革命」「機動破壊」など球界のトレンドを知識として入れることは必須。その上でどうアレンジし、独自のものとするか。かつてウエイトトレーニングを採り入れ、甲子園を席巻した池田(徳島)のような「時代の先駆者」になること、これが「野球王国」四国、しいては四国地域が元気を取り戻すキーワードである。

「四国」だからこそ、できること

 とはいえ、四国で過ごす私たちは現状に対し懐古主義や悲観的になる必要もない。なぜなら、最初に記したように四国には「ここにしかない」ものがまだ数多くあるからだ。オンリーワンを積み重ね、発信し、レスポンスを改善点に変え、仕上げる。都会の雑踏で得られない空気や自然・文化から創り上げる野球スタイルは、次の100年へ向かおうとしている高校野球をはじめ、全国・世界に新たな野球を提示できるとと筆者は信じてやまない。

 ということで、第1回は非常に硬い文章でしたが(笑)、第2回以降は四国を中心に野球界の「オンリーワン」を紹介し、広く皆様に知って頂くことを目標にしていきます。そして、取材の中で出会った風景も写真で紹介していきますので、末永く、どうぞよろしくお願い申し上げます!

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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