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【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】名門校の4番に相応しい活躍を見せた鵜飼航丞(中京大中京・3年)

2017.12.25

【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】名門校の4番に相応しい活躍を見せた鵜飼航丞(中京大中京・3年) | 高校野球ドットコム
鵜飼航丞(中京大中京)

 高校野球ドットコムでお馴染みの現地記者の皆さんが、今年一年、最も輝いていたと思う選手に贈る賞を発表!第二弾は、手束仁記者が表彰!中京大中京鵜飼航丞選手に、「2017年の最も輝いていたで賞」を贈ります!

秋季大会の敗退が成長のきっかけとなる

 毎打席のように長打が出る、この先どれだけ打つのだろうと思わせてくれた、春季大会の鵜飼航丞君だった。まさに、名門中京大中京の4番打者にふさわしいというか、それ以上の活躍といってもいいくらいのものだった。
3月にシーズンインとなってからは、好調そのものだった。ことに、春季大会では、打席に立てば出塁、打てば長打といっても過言ではないくらいに打ちまくっていた。本塁打も毎試合のように放っていて、通算本塁打も2年生までは30本そこそこだったものが、一気に40本を超え、50本に手が届く勢いだった。
とはいえ、その頃の打撃の特徴は、低いライナーで外野手の間を抜いていくという弾道で、それが上がっていったり、抜けて伸びていくと本塁打になるというものだった。本人も、「ボク自身は、ホームランバッターというよりは、外野の間を抜いていく中距離ヒッターだと思っています」という自覚だった。

 春からの絶好調の背景にあったのは、前年の秋季大会だった。センバツ甲子園を賭けた東海大会準決勝で、同県の至学館と対戦。試合は9回までリードしていながら逆転サヨナラで屈して、甲子園も逃してしまった。
その試合で逆転された直接の要因は、失策と四球が切っ掛けだったが、「そのことよりも、ボクが再三のチャンスで回ってきていたのに、打てませんでした。どこかで打っていれば、コールドゲームで勝てた試合でした」という悔いが大きかった。
その悔しさを胸に秘めて、一冬、徹底的に振り込んだ。
副主将という立場からしても、自身が身をもってチームを引っ張っていくという姿勢に徹していった。

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鵜飼君への信頼

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鵜飼航丞(中京大中京)

 その成果が春季大会に現れたのだった。
この夏、愛知大会はセンバツに出場して春季県大会も優勝し、東海大会も制した至学館中京大中京が優勝候補の双璧とされ筆頭格に挙げられていた。中京大中京としても、至学館は昨秋の苦杯を舐めさせられている相手だけに、どうしても倒さなくてはならない相手でもあった。
シード校として挑んだ愛知大会、中京大中京は3回戦からの登場となった。チームは、順調に打ち勝っていたが、夏本番を迎えて、調子もあげていったチームは強打で勝ち上がっていた。
しかし、春から絶好調だった4番の鵜飼航丞君だけがなぜか蚊帳の外で、まったく打てなかった。昨年夏に敗れた愛工大名電と当った準々決勝の第1打席で、やっと三塁線を破る二塁打が出て先制打となったが、自分が本来目指している打撃ではなかった。
高橋源一郎監督も、準決勝を前に、好調の諸橋駿君を4番に上げて入れ替えようかと考えたくらいだった。
しかし、4番打者は動かさないという信念で名門の4番を任され続けた。
それがプレッシャーにもなりかかってきた。準決勝では豊橋中央に5回コールドゲームで大勝はしたものの、鵜飼航丞君は引っ掛け気味の二塁打のみだった。それでも、諸橋君や下位の鈴村哲君などがよく打って、チームは2年ぶり28回目の甲子園出場を果たした。
ただ、名門の4番を任されていた鵜飼航丞君としては決して満足いく結果での甲子園出場ではなかったかもしれない。

[page_break:本来の姿を示せた甲子園]

本来の姿を示せた甲子園

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鵜飼航丞(中京大中京)

 強いチームは、甲子園でも地区大会を戦いきってきたメンバーや打順は基本的にはまずいじらない。もちろん、中京大中京もその方針である。
ただ、中には、愛知大会を通じて不振だったという印象の強かった鵜飼航丞君に対して、「4番があれだけ打てんじゃいかん。(打順を)下げた方がいいんじゃないか」という声もあった。
それでも高橋監督は、「あれだけ打っていた選手なんだから、大舞台になればきっと打てる」という思いはあった。それ以上に、鵜飼航丞君に対しての信頼が厚かった。だから、4番打者としては不動のままだった。

 甲子園の1回戦、相手は優勝候補の一角にも挙げる人がいるくらいの強豪広島広陵だ。1回戦では屈指の好カードとなった。しかも、今年から制定された山の日と重なって、第一試合ながら甲子園は朝から札止めの満員となっていた。
鵜飼君は初回の一死一二塁の得点機では三振、2打席目は四球で、3打席目も一死一塁で三降。ここまで、愛知大会から続く不振から脱出しきれてはいなかった。しかし、逆転されて迎えた7回の打席では、得点にこそならなかったものの鵜飼君らしい右前打を放った。そして、追い詰められた9回、二死走者なしから最後の打者になるかもしれないという場面で、「何が何でも出塁するという気持ちだった」という思いでスイングした打球はややつまり気味ながらも気持ちが乗って中前打。その後、味方が3点返して追い上げていくのだが、その切っ掛けとなる一打だった。最後は、「もう一度打席が回ってこいと、思っていましたが…」と悔しがった。

 それでも、数字としては4打数2安打で、不振の愛知大会からは立ち直り、100%とは言わないまでも、本来の打撃は示すことが出来た。
卒業後は、高校通算57本塁打という記録を抱えて、駒澤大に進学する。2年上には中京大中京でエースだった上野翔太郎君もいる。来春は4季ぶりとなる一部に昇格も決まった東都の名門で、まずは春からのベンチ入りを目指す。

(文・手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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