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【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】鹿児島編・リスキーなプレーをみせた松永遥平(鹿児島)

2017.12.24

【2017年 キミは最も輝いていたで賞!】鹿児島編・リスキーなプレーをみせた松永遥平(鹿児島) | 高校野球ドットコム
松永遥平(鹿児島)

 高校野球ドットコムでお馴染みの現地記者の皆さんが、今年一年、最も輝いていたと思う選手に贈る賞を発表!第一弾は、鹿児島の政記者が表彰!鹿児島高校2年生の松永 遥平選手に、「2017年の最も輝いていたで賞」を贈ります!

勝敗分けた好守の真意

 この企画の依頼を受けて17年の鹿児島で該当するのは誰だろうか考えた。

 夏の甲子園3回戦明豊戦で延長12回表に二死満塁から起死回生のセーフティーバントを決めた神村学園後藤 拓真主将(3年)や、鹿児島大会決勝戦に代打で同点三塁打を放った前畑 太壱(3年)の名前が真っ先に浮かんだが、彼らはその時点で様々なメディアに取り上げられた選手である。「他のメディアではなかなか取り上げることのない選手」「政記者だからこそ知るエピソード」となるともうひと工夫がいる。

 この1年間を振り返って、1つだけその真意を確かめてみたいと思った場面があった。夏の鹿児島大会準々決勝鹿児島鹿児島実戦。第2シード鹿児島実が7回まで6対2とリードし、ノーシードから勝ち上がった鹿児島の快進撃もここまでかと思われたが、8回に5番・国本 悠志(3年)の2ランで再び流れを引き寄せると、9回にも3点を加え7対6で鹿児島が逆転勝ちした。「ある場面」とは9回裏、1点差を追いかける鹿児島実の攻撃、一死一塁から代打・外薗 海人(3年)が初球で送りバントを仕掛けたシーンだ。マウンドの2年生エース松永 遥平が鮮やかなフィールディング、二塁で刺した。

 松永が二塁に投げた瞬間、「えっ?」と私は目を疑った。普通に考えれば無理せず一塁で確実にアウトを取り、二死二塁、次打者勝負でOKの場面だろう。もし野選となり一死一二塁となれば逆転、サヨナラの走者を出すことになる。間違って悪送球となれば、その時点で同点となる可能性もあった。リスクの高いプレーだが結果的に二塁でアウトがとれたことで鹿児島の勝利はほぼ決まったといっていい。なぜこの場面で二塁アウトを狙ったのか? その真意を確かめたかったが、この試合は2ランを打った国本や福山 樹主将ら3年生をクローズアップしたので聞きそびれた。

[page_break:好守の真相]
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走攻守で躍動する松永投手

好守の真相

 大会後、陸上の大会を取材していた際、松陽監督の吉浦 知子さんから「夏の大会で甥っ子を取り上げてくれてありがとうございました」とお礼を言われた。松永は吉浦さんの兄・祐二さんの三男。吉浦さん、旧姓・松永 知子さんといえば鹿児島女時代の1988年に走高跳でマークした1m81は未だ破られていない鹿児島県記録である。

 件の好フィールディングや準決勝鹿屋中央戦で9回裏、犠牲フライの際にみせた思い切った走塁など、172cm、62kgと小柄ながら、松永が高い運動能力を感じさせるプレーを再三見せていたことが納得できた気がした。それだけに試合当日に聞きそびれたあの好フィールディングのシーンの真意を、いつか本人に確かめてみたいと思っていた。

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取材に応じる松永遥平投手

 「マウンドに呼び戻された時点で、監督さんがリベンジのチャンスを与えてくれたと思いました」

 この試合、6回でマウンドを降り、7回からライトの守備に回っていた松永は9回表一死一塁となった時点で福山主将に代わって再びマウンドに戻された。「リベンジ」とは前年秋の4回戦鹿児島実と対戦した際の苦い思い出に対してだ。5回まで2対0とリードしていたが5回、ランナー一塁の場面の送りバントで、松永は二塁に送球したがボールが浮いてアウトがとれなかった。続けて仕掛けられたセーフティーバントはボールが手に着かなかった。2つのミスが絡んで満塁となり、4番・西 竜我(2年)に走者一掃の三塁打を浴びたのを皮切りにこの回で11点を失って無念のコールド負けとなった。

 「あれから時間があればフィールディングの練習をしていました」。ベース上で捕球するのはケガで動けない選手に立ってもらった。ストライク送球をしない限りボールは後ろに逸れる。自分にプレッシャーをかけながら、いつかチャンスが巡ってきたときにリベンジするための磨いてきた技だった。

 「送らせて二死二塁でOKなら福山さんのままでよかったと思います。僕がマウンドに戻されたことは、『二塁でアウトをとりに行け』という監督さんのメッセージだと思いました」。
再びマウンドに上がったところで捕手・上之薗 大雅(2年)がマウンドに駆け寄った。

「分かっているよな?」
「分かっている!」

 この会話だけで十分だった。代打・外薗がバントを仕掛けたのは初球。三塁方向に転がった打球を松永は逆シングルでキャッチ、その勢いを利用して右回転して二塁に投げた。右足で踏ん張り左に向き直す送球は何度も練習しているが、これは「練習でもやったことないプレーでした」と苦笑する。そういった判断が無意識にできたところにセンスや運動能力の高さを感じた。

 「監督さんの期待に応えられたことが一番嬉しかったです」

 100%成功しない限り、大きなリスクを伴うプレーを選択したのは、決して偶然やその場の思い付きではなく、昨秋の苦い敗戦から始まって対策を練り、こういった場面で使うというチームの明確な意図があったことが確かめられた。ノーシードでありながら鹿児島が25年ぶりに決勝に勝ち進んだ理由がより分かったような気がした。

優勝候補の挑戦者

 夏準優勝を経験したバッテリー、主砲など主力選手が残り、新チームでは当然のごとく優勝候補に挙げられた鹿児島だったが、鹿児島市内大会では準々決勝で樟南に0対1で敗れ、秋の鹿児島大会鹿児島情報に敗れ初戦で姿を消した。

 「自分も、チームも、うぬぼれていたと思います」と反省する。「また夏の大会と同じように原点に返って、挑戦者の気持ちで粘り強く野球をしたい」と松永は言う。来春、そして夏に更なる輝きを放つことを期待して、私から「最も輝いていたで賞!」を贈りたい。

(文・政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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