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3年生座談会 県立菊池高校(熊本)「新監督と共に再スタートをした菊池高校」【前編】

2018.04.08

 秀岳館高校が前評判通り2年連続の甲子園行きを決めた、2017年夏の熊本大会。大本命を軸に戦いが進むなか、存在感を見せたのは県立菊池高校だった。

 2016年4月に新監督として渡邉 和雄氏が就任。旭志村(現・菊池市)出身でPL学園に進学し、三菱自動車水島の監督として都市対抗や日本選手権に出場した、いわば第一線で活躍してきた実績を持つ人物だ。新監督のもと練習に励んだチームは、2017年5月に開催されたNHK旗に25年ぶりに出場すると、八代東専大玉名熊本国府といった強豪校に勝ち進み九州学院に次ぐ準優勝。夏の大会では3回戦で春のセンバツに出場した熊本工業高校を相手に4対3で勝利し、24年ぶりのベスト8。阿蘇の外輪にある人口5万人に満たない地方都市は、地元の公立高校の活躍に歓喜した。

 チームの躍進は、どのような環境で生まれたのか。7人の3年生選手に対談してもらった。

【座談会参加メンバー】
芹川 遼汰(前主将) ショート ・ 宮本 辰生 ピッチャー
河津 颯太郎 キャッチャー ・ 後藤 遼太郎 セカンド
中尾 裕大 センター ・ 依田 拓己 ライト
坂本 大輔 ライト

マイナスから始まったチームの始動

3年生座談会 県立菊池高校(熊本)「新監督と共に再スタートをした菊池高校」【前編】 | 高校野球ドットコム
河津 颯太郎捕手

――まずは新チーム結成時についてお伺いします。

芹川:実は部内で不祥事があり、2016年の2月8日から8月7日まで対外試合禁止の処分が下りました。そのため新3年生は4月で引退となり、当時2年生になったばかりの自分たちの新チームが始動しました。

後藤:当初は自粛のためチーム練習もできなかったのですが、再開時のため、自主的に準備はしておきました。

河津:まずは、処分が解ける秋の大会でベスト8を目指そうと。気持ちを切らさないように目標を持ち続けました。

依田:他の学校よりも早く新チームが組めたし、つらい状況だったので仲間との結束も強まりました。

[page_break:新監督と共に再スタートをした菊池高校]

新監督と共に再スタートをした菊池高校

――そんな状況下で、4月から新監督が就任することに。PL学園時代に4番打者として活躍し、社会人野球の指導者としても実績のある渡邉 和雄監督が就任しました。

坂本:レベルが高い場所で、ずっと野球に携わっていた方。そんな凄い人と野球ができるなんて、本当にうれしかった。

芹川::監督についていけば、技術も気持ちもレベルアップできると思いました。

後藤::就任には、びっくりしました。もっと強くなれるかも、とうれしくなりました。

中尾:楽しみな反面、正直なところ不安もありました。あまりにも凄い経歴なので…。

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選手たちに語り掛ける渡邉和雄監督

――具体的に、監督の指導はどのような違いがありましたか?

芹川::監督は、チームの意識をひとつにして、うまくまとめていきました。監督は基礎練習に重点を置いています。素振り、ゴロを捕る練習、ランニングと、本当に基本的なことを繰り返し練習しました。

後藤::週に1~2回のミーティングを監督が導入したので、野球に対して考える時間が増えました。また、著名人が残した言葉や考えを学ぶメンタルトレーニングを導入し、監督と選手が個人で話す時間も増えました。野球に対する意識が変わりましたね。今までは感覚で野球をやっていたので。ベースの長さや距離などしっかり考え、頭を使って野球をするようになりました。

中尾:基礎を大事にするけれど、言っていることは細かいプレーなど難しいことも多かった。でも、練習を重ねるうちに自分が上達しているのがわかりました。僕も頭を使う野球ができるようになったと思います。ただ打っていたのが、配給を読んでプレーするようになりました。

宮本:実は、僕は2年生の冬までサードでレギュラーを争っていました。キャッチボールを見た監督とコーチが、ピッチャーに向いていると言ってくれたんです。結果的に、チームのエースになれました。凄い眼力です。

――渡邉監督はどんな人ですか?

芹川::とても明るい人です。野球以外の生活面の大切さも教わりました。「人間として成長できない奴は、野球の技術も進歩しない」と。

後藤::それまで、野球部はみんな授業で寝ていたんです。普段の学校生活からしっかりするように指導されました。野球以外の指導も大切にしている人です。

坂本:いや、僕はもともと起きていました(笑)監督はとても優しいですね。野球で失敗しても、辛抱強く教えてくれる。感謝しています。

依田:怒られて嫌になりかけた時期もありました。でも、何度言われてもできないのに、しっかり繰り返し指導してくれるんです。とても感謝しています。

[page_break:快進撃を見せた春季大会]

快進撃を見せた春季大会

――そして処分が解け、試合ができるようになりました

依田:やっと野球ができる、と。試合に出れる喜びです。本当にうれしかった。

後藤::あの時期はずっとワクワクしていました。練習にも身が入りました。

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座談会参加に参加してくれた3年生

――また、チームの質を高めるため、パートごとのリーダーを決めたと聞きました。

芹川::主将、副主将のほか、バッテリーリーダーが河津、内野リーダーが後藤、外野リーダーが依田です。自分はプレーで周りを引っ張るタイプで、口でまとめるタイプではないんです。チームの意識をひとつにするために、リーダー制度は良かったです。

河津::リーダーが各ポジションごとに細かく見ることで、チームの結束は固くなったと思います。

依田:仲が良すぎて監督から「仲良しクラブか」と注意されたぐらい、結束は固いです(笑)
 冬を越え、迎えた5月のNHK旗。25年ぶりに出場すると快進撃が続き、なんと決勝まで勝ち進み準優勝でした。

芹川::ベスト8を狙っていたので、自分たちでも驚きました。地道にやってきた練習が間違っていなかったんだと。正直、こんな勝てるなんて思わなかった。

宮本:決勝で当たった九州学院は、やっぱり強かったです。甘く入った球は全て持っていかれた。力の違いを感じました。

坂本:勝ったことが信じられなかった。自分たちの力が本当についているんだな、と。感激しました。

河津::秋の大会は2回戦で負けたのに、決勝まで勝ち進めた。野球に対する意識がさらに強くなりました。勝つことへの気持ちが強くなりましたね。

依田:公式戦で勝ち進んだこと自体、初めての体験でした。勝ち負けは気にせず、いつも通りやろうと思ったのが良かったのだと思います。

(取材・いとうりょう

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【僕らの熱い夏2017 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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