3年生座談会 新居浜南高等学校（愛媛） 「みんなで」つかんだ、愛媛大会初ベスト8【後編】
済美の甲子園2勝に沸いた2017年夏の愛媛高校野球。その一方で愛媛大会では「史上初のベスト8」入りを果たした躍進校があった。
1964年創部の愛媛県立新居浜南高等学校。秋山 拓巳（阪神）を擁し、西条で2009年春夏連続甲子園出場を果たした田邉 行雄監督が2014年4月に赴任後、着実に力を蓄えてきた彼らは、南宇和戦を皮切りに八幡浜、三瓶を撃破。準々決勝では松山聖陵に力及ばずも、甲子園出場校2校を破った粘りは高く評価できる。
では、彼らどうやって最後の夏に最高のチーム結果を出せたのか？3年生4選手の言葉から、その軌跡を振り返ってみたい。後編ではベスト8進出の裏側、そして高校野球を通じ学んだこと、次への抱負を語っていただきます。
＜メンバー＞
入江 寮（いりえ・つかさ）前主将・一塁手・178センチ69キロ・右投左打・新居浜リトルシニア出身
小野 瑞己（おの・みずき）左翼手・164センチ65キロ・右投右打・西条リトルシニア出身
木本 林太郎（きもと・りんたろう）投手・右投右打・170センチ62キロ・新居浜市立西中出身
平木 快（ひらき・かい）捕手・170センチ74キロ・右投右打・新居浜市立角野中出身
着実に積み上げ、狙い通り愛媛大会ベスト8へ
木本 林太郎（新居浜南）
――いよいよ「最後の夏」がやってきました。南宇和・八幡浜・三瓶・松山聖陵4試合を戦った感想を聞かせてください。
小野：初戦の南宇和戦（13対9）では終盤、選手たちの気迫がすごくて（8回裏・9回裏で6失点）「そこに勝ったからには彼らのためにも次は勝たなくてはいけない」と思いました。
入江：八幡浜戦では先発の松本（直哉・3年）の変化量が多かったので、朝礼台の上にバッティングマシンを上げて、大きな変化を打つ練習をしたことがよかったと思います。
小野：僕はここでスタメン。ここが最後のチャンスだと思いました。（結果は決勝スクイズ安打含む2安打2打点・4対3で勝利）
田邉監督：この代のチームは練習試合2試合でも18人を使うことをしていたんです。ですから、投手のタイプに対して組み替える準備はしていました。小野は打撃では右打ちを徹底して課していた子なので、悩んだ末に使ったんです。
平木：三瓶戦（6対5で9回サヨナラ勝ち）は序盤に大量点を取れたことがよかったです。ただ、終盤は僕もベスト8がかかったことで冷静さを失っていました。
木本：八幡浜戦での発熱が引いて7回から僕はマウンドに上がったんですが、人生初といったくらいストライクが入らなかったんです。心が落ち込んで「負けたらすべてがだいなしになる」と思って、サヨナラヒットを打っても全く笑えなかったです（苦笑）
入江：三瓶戦は後半まではいい雰囲気で進んでいたんですが、8回表・9回表に計4失点。でも「こんな形で終わりたくない」と思ったので9回裏の攻撃前に「この回しかない」とハッパをかけました。
――そして初の準々決勝。結果は春に敗れた松山聖陵に1対8。7回コールド負けでした。
入江：準決勝で新居浜リトルシニアでチームメイトだった八塚（凌二・3年）と対戦したかったんですが……。ボコボコにされました。
平木：目標にしていたベスト8が達成できたので、ホッとした部分が出てしまったと思います。みんなで春、松山聖陵戦のリベンジは言っていたのですが、強かったです。
小野：ベスト8入りは親も喜んでいたんですが、松山聖陵は春と違って打ってくるし、守備も堅かったです。
木本：ここまで古館（龍都・2年）が先発で踏ん張ってくれてたので、なんとか9回まではやりたかったんですけど。三瓶戦ほどではなかったですが、全く球速が出なかったです。
入江：僕は8回の3人目で代打で出る予定でした。自分がもう1回打席に立ちたい思いはありましたが……。最後に試合が終わった時、古館が悔しがっていたことが印象に残っています。
松山聖陵戦で得た課題を胸に「次のステップ」へ
平木 快（新居浜南）
――こうして高校野球が終わり、みなさんは次のステップに進みます。最後に高校野球を通じ学んだことと、次への抱負を聴かせてください。
木本：僕は最後の夏、自分の力が全然出せなかった。不完全燃焼で悔いが残ります。今後はホテル関係の専門学校に進もうと思っていますが、大事な時の前の体調管理やメンタルをもっと整えていきたいです。
小野：僕のバッティンググラブは1学年上の主将から受け継いだもの。1年から主力を目指す目標はなかなか達成できなかったけど、最後の夏、すべてをぶつけけ先輩たちの想いを引き継いで打てたことはよかったです。今後は工業系の方面に就職しようと思っています。
平木：高校で最初に硬式球を打った時は本当に不安でしたが、僕は父も新居浜南の野球部だったので、誰よりもベスト8入りにこだわっていました。そこに最後入れたのは本当によかったです。ここで培った体力・精神力・人間力を次の製造業に就職した時も発揮していきたいと思います。
入江：今後は進学しますが、野球はしないと思います。高校野球は中学野球と違って細かいところなど、難しい部分が多かったですし、夏までは長くて辛くて嫌な2年半でしたが、終わってみたら早かった。僕はそんなに試合に出る機会はなかったですが、新居浜南・愛媛大会ベスト8のキャプテンで本当によかったです。
対談の間、試合のごとく、ずっと4人を見守り、合間合間にはコメントも入れてくれた田邉監督は言う。
「入江は内側から野球部を作ってくれた。ベスト8入りは彼の力。平木は捕手に転向した最初ワンバウンドが捕れなかったが、よく努力して最後はいい捕手になってくれた。木本も最後は力を出せなかったが2枚看板としてよくやってくれたし、小野は学校でもムードメーカーでし、ネガティブがまったくない。これからもそんな生き方をしてほしいです」
田邉監督が注ぐまるで親のように包み込む愛情。それに応え、彼らは育ち、快挙を達成した。そして後輩たちも東予地区新人戦で西条にコールド勝ちすると、秋季愛媛県大会では2大会連続となる県大会ベスト8入り。こうして新居浜南のファミリーは歴史と成長を重ねながら、想いを引き継いでいく。
（構成／寺下 友徳）
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