3年生座談会 県立梼原高等学校(高知)「梼原町」だからできた高知大会準優勝【前編】
明徳義塾の8年連続優勝で幕を閉じた2017夏の高知大会。ただ、近年では県立校の進出が目立つ。昨年は初の決勝進出で健闘。その後、秋季県大会決勝戦で明徳義塾を下して翌年センバツ21世紀枠出場につなげた高知中村。
そして今年は県北部の標高400メートル超・四国カルストがある人口3,627人(7月末現在)梼原町唯一の高校・高知県立梼原高等学校が決勝戦へと進出。決勝戦では4回裏までの5失点が響き3対7で敗れたが、地元梼原町出身・横川 恒雄監督に導かれた中盤の反撃は三塁側スタンドを大いに沸かせた。
では、創部11年目の梼原野球部はなぜ、大躍進を遂げることができたのか?今回は3年生たちの対談から「梼原町」だからできた成長過程を探ってみたい。
<メンバー>
和田 吉展(わだ・よしのぶ)前主将・一塁手・181センチ75キロ・右投左打・佐川町立佐川中出身
浅井 大地(あさい・だいち)投手・178センチ78キロ・右投右打・土佐清水市立清水中出身
市川 雷夏(いちかわ・らいか)外野手・右投左打・170センチ66キロ・須崎市立朝ケ丘中出身
長岡 星河(ながおか・せいが)捕手・174センチ75キロ・右投右打・宿毛市立東中出身
中山 洸希(なかやま・こうき)外野手・170センチ64キロ・右投右打・四万十町立窪川中出身
*特別参加:岩崎 智久部長
秋の敗戦後、横川恒雄監督から与えられた「ジャッジメント」
和田 吉展(梼原)
――まずは昨年、新チームが立ち上がった際の状況を教えてください。
和田 吉展(以下、和田):前チームは高知大会1回戦で室戸に敗れたので、夏の練習試合では意識を高く持って、勝ちにこだわっていこうという話をしました。
浅井 大地(以下、浅井):その室戸戦では2回勝ち越しながら追い付かれ、最後は追い越されたので、僕自身のスタミナも含めてスタミナを切らさないこと。制球力を付けることを心掛けました。
――では、連戦が続く夏の練習試合ではチームとしては、どのように進めていったのですか?
和田:試合が終わるごとに全員で寮に集まって試合のミーティングをして、野球ノートに書き、次の日に全員で徹底して練習試合に取り組みました。
市川 雷夏(以下、市川):「『今日の試合ではフライが多かったから、次は徹底してゴロを打とう』とか、ミスがあったシーンでは『その前にみんなで確認していこう』という感じで進めていきました」
長岡 星河(以下、長岡):打たれた球があったら、次にどのような配球をしていくかとか、打者のタイプによる弱点を研究していきました。
――その流れの中で新人戦を迎え、準々決勝では明徳義塾と対戦します。結果は1対2の惜敗。ここで得られた収穫と課題はありますか?
和田:打線がつながった部分もあったんですが、走塁ミスが大事なミスが見られました。そこからは「一本打ち」(ケースバッティング)の練習を取り組むようになりました。
市川:僕はその試合で右翼手を守っていたんですが、打者ごとに外野手同士で確認をしながらポジショニングを取っていくことはうまくできたと思います。ただ、ランナーコーチとしてははっきりとした指示ができなかったので、以後はランナーコーチも固定して、一本打ちをやってきました。
中山 洸希(以下、中山):明徳義塾は補球への入り方がうまいので「そこはみんなで見習おう」ということは確認しました。練習でもそれを意識してするようにしました。
――皆さんが言うようにいい経験ができた夏でしたが、秋は2回戦で岡豊に0対2。結果を出すことができませんでした。
長岡:新人戦の明徳義塾戦では1球に対する集中力が高かったのに対して、この試合ではミスで負け。打線も伊與田 (耕平・3年)くんの角度・伸びがあるストレートに対する課題が残りました。
和田:最初は高めのボールに手を出さないことが徹底事項だったのですが、カット系のスライダーに惑わされてしまいました。
浅井:直接の失点はミスであっても、そこに至ったのは僕が安打や死球を出したからです。
和田:岡豊戦の後、僕らは梼原に帰ってすぐ練習したんですが、その時に(横川 恒雄)監督さんが「野球を楽しくやるのか、本気でやるのか決めろ」と話をされて、全員が「本気でやります」と一度は答えたことがあります。
冬の葛藤を超え、春に壁を破る
中山 洸希(梼原)
――ただ、冬は梼原特有の練習をしながらも(詳しくは「野球部訪問」にて)いろいろな葛藤が続いたと聞いています。
中山:そうなんです。この後にも僕ら選手は「楽しくやる」「本気でやる」についてずっと話し合いをしいていました。
ここで話を聴いていた岩崎 智久部長が口火を切った。
岩崎部長:冬場には選手全員と面談をしたんです。野球の技術的なところから生活面のことまで、少なくても30分。長い選手では2時間しました。
浅井:岩崎先生との面談で話したのは「最速145キロを出して、高知県NO1の投手になること」。ここで夏までにどうしていくかを話したことで最速は140キロまででしたけど、高知大会決勝までいくことができたと思います。
和田:実は冬を越えてもなかなかまとまらない状態が続いたんです。でも、岩崎先生と選手全員が面談をしたことで、僕もチームの現状を把握して、前に立って動かないといけないと思いました。
僕自身も寮で悩みのある選手たちとは個人的に話をして、最後は「みんなが何のためにこの梼原へ来たのか」ということでみんなが「本気でやらなければ損だ」ということで1つになったんです。
――結果、春はベスト4進出。準決勝の高知中央戦も4対5の接戦を演じます。
中山:冬を越えてみんなが精神的強さを得られたので、ほとんどのことに動じなくなったと思います。
浅井:高知中央戦、序盤の4失点は課題でしたが、逆に言えばここを修正すれば「いける」と思えるようになりました。
和田:梼原は内野のスローイングに課題があったんですが、僕は一塁手の立場から回転などについて指摘していました。最後の夏にはここも改善できたと思います。
後編では最後の夏の裏側、そして高校野球を通じ学んだこと、次への抱負を語っていただきます。
(構成/寺下 友徳)
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