Column

世田谷学園高等学校(東京)

2017.07.07

秋初戦敗退から乗り越えて

■有名な柔道家を多数輩出している世田谷学園
東京都世田谷区にある世田谷学園は、1592年、曹洞宗吉祥寺の学寮として設立され、長い歴史を経て、1948年に世田谷学園高等学校が開設された。多くの著名なアスリートを輩出しているが、特に素晴らしいのは柔道。柔道界のレジェンド・古賀稔彦氏をはじめとして、バルセロナ五輪で、柔道78kg級金メダリストの吉田秀彦氏、リオデジャネイロオリンピック柔道73kg級金メダリストの大野将平氏、アテネオリンピック柔道90kg級銀メダリストの泉浩氏など多くの柔道家を輩出した。

 一方、野球部は、1992年の明治神宮大会で優勝、1993年の選抜高等学校野球大会に出場しており、全国大会出場の経験がある。OBではソフトバンクでプレーした清水貴之投手がいる。現在も、強豪校として注目される世田谷学園。夏の大会へ向けて日々どんな取り組みをしているのだろうか。


集合写真(世田谷学園)

■発声禁止のルールがある!?
学校内にある野球部グラウンドは他部活との兼用で、全面が使える日は週3回。全面が使えない日はグラウンドに隣接されている室内練習場で、トレーニングをする。限られた環境下だが、1993年選抜甲子園出場時に、コーチとして出場していた成瀬監督曰く、当時の方がもっと狭かったという。全面使える日ではノッカーがノックを打つ場所、野手が守る場所を変えたりしているという。

 また都心のど真ん中にあるグラウンドということで、18時半まで発声可能だが、18時半以降は発声禁止というルールも設けられている。

■投打に逸材が揃う今年の世田谷学園
 
今年の注目選手はエースの舘野朝陽。180センチ76キロと恵まれた体格から振り下ろす速球の最速は135キロ。球質が重く、思わず詰まってしまうような威力あるボールが特徴だ。制球力が現状の課題で、成瀬監督は「あとは打者を見ながら投げたり、状況に応じて投げられる実力を身に付けたい」と語り、舘野は正捕手の植松 颯太と二人三脚で実践で勝てる投手を目指している。正捕手の植松にも注目。植松は、スローイング1.8秒台を誇る強肩捕手。またパンチ力ある打撃も魅力の選手だ。投手とのコミュニケーションは欠かさず取ることができており、ディフェンスのかなめ。

 また打線では3番を打つ川上 和真に注目。素振り、ティーバッティングを見てもインパクトまで滑らかなスイング軌道でシャープな打球を連発する選手。春の都大会では背番号ながら、快打を連発して勝利に貢献した。選手たちは「川上の打撃は本当に凄いです。体は小さいですけど、飛ばしますし、足も速くて、便りになります」とナインの評価も高い。また川上も足には自信を持っており、ヒットを打った時、二塁に行けると思ったら、二塁に陥れる脚力、積極的な姿勢を持ち合わせている。

■世田谷学園が取り組んできた強化ポイント
世田谷学園は、昨秋ブロック予選1回戦で堀越に敗れた。この試合の状況について、太田祐介主将はこう振り返る。
「あの時はただがむしゃらにやっただけで、いざ本戦になった時にチームが1つにならなかった」
 秋の大会後、選手たちは強化ポイントを明確にして、練習に励んだ。選手たちの強化ポイントは以下の通り。
・総合的な攻撃力(打撃・バント・走塁)
・総合的な守備力(バッテリーの強化・内外野の守備力)
・体づくり
・メンタル

こうして迎えた春の大会ではブロック予選を突破して、都大会に進出。都大会では3回戦まで勝ち進み、あと一歩でシード権獲得はならなかったものの、「あと一本が出ないところが課題となりましたが、春の段階では自分たちのやりたい野球は出し切ることができましたし、チームもレギュラー、ベンチ外の選手が1つとなって勝利に向かうことができました」と振り返った太田主将。

 夏へ向けての課題として、走塁力の強化に励んでいる。「走塁では東京都ならばどこでも負けないチームを目指したい」と意気込む太田主将。取材日でも走塁練習、そして細かな守備連携に励む姿があった。
最後に夏の大会へ向けての意気込みを語った。
「自分たちの野球をやって全うできる夏にしたいですね。甲子園出場が目標ですけど、まずは一戦一戦必勝に戦っていきたいです」
初の夏の甲子園を目指して、積み重ねを大事に、一戦必勝で激闘の西東京大会に臨む。

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[page_break:投打のキーマンが語る夏へ向けての意気込み!]

左から川上 和真選手、舘野 朝陽選手(世田谷学園)

投打のキーマンが語る夏へ向けての意気込み!

ここからは川上和真選手(3年)と舘野朝陽投手(3年)にお話を伺いました。

Q.夏へ向けて見つけた課題を教えてください。

川上:チャンスで打てる打者になることを課題にしています。
舘野:併殺でとりたいところで取れる変化球がなかったことです。

Q.ここまで振り返って、高校野球で一番の思い出を教えてください

川上:思い出に残っていることは一学年上の世代からベンチ入りしていましたので、先輩たちと一緒にプレーしていたことが思い出として残っています。

舘野:この春、シード権をかけた試合で、東京実に敗れた試合ですね。

Q. 応援する方々へ自分のここを見てほしいというのを教えてください!

川上:自分の打撃と、足の速さを生かした走塁を見せてほしいです。
舘野:力強いストレートと、春から成長した投球と見てもらいたいです。

Q.このチームの好きなところは、または他のチームに負けていないところはどんなところですか?

川上:チームの仲が良いところです。
舘野:チームの仲が良いこと。そしてチームのために選手たちが思ったことをしっかりと言い合えることだと思います。

Q. この夏はこういう夏にしたい!という意気込みを教えてください

川上:3番打者として、勝負強い姿を見せていきたいと思います。
舘野:勝てる投球を見せていきたいと思います。

川上選手・舘野選手、ありがとうございました!

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[page_break:機動力+バッテリー強化で頂点を狙う]

練習風景(世田谷学園)

機動力+バッテリー強化で頂点を狙う

  ここからは成瀬 智監督にお話を伺いました。

Q. 主将の太田君から話を伺いましたが、機動力を大事にしているチームだと聞きました。

 元来、世田谷学園は、機動力野球を含めた総合的な打撃力、強弱をつけた野球などを大事にしています。
 西東京は強打のチームが多い。さらに夏はどこも打撃面の力をつけてくると思います。我がチームは力をつけることはもちろんですが、やっぱり犠打、盗塁、エンドランなどを大事にして、何がやるのかわからない野球を持ち味にしています。

Q. 練習の時からそういう細かな野球を大事にしているように見受けられました。

 勝つには、盗塁などの機動力、打撃の中でも、強弱をつけながら、心理的に駆け引きをした野球をしていきたいと思っています。

Q. 夏勝つにはさらにどんなことが必要でしょうか。

バッテリーの強化です。うちは、常時140キロ台を投げられるような凄い投手はいない。だからこそ勝つ投手になりなさいといいます。しかしエースの舘野はまだ物足りないですね。試合状況、相手に応じた投球ができていません。それは捕手の植松も同じことが言えると思います。

成瀬監督、そして世田谷学園野球部の皆様、ありがとうございました!


今年も大好評!
僕らの熱い夏 特設ページ
各チームのページ下部にあるフォトギャラリーもお見逃しなく!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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