Column

週刊せり高校野球『横浜隼人の強さを象徴する3つのポイント』

2017.05.19

 皆さん、こんにちは!『バトルスタディーズ』×高校野球ドットコム「強い者にはワケがあるキャンペーン」公式レポーターの芹 玲那です。

 いよいよ今週末、5月20日から春季関東地区大会が茨城県で開幕。
 厳しい代表校争いを勝ち上がってきた強豪校同士の対戦に今からワクワクが止まりませんね!この週刊せり高校野球でも激戦必至の関東大会を次回レポートします。

 今回は、代表校を決める熱戦が繰り広げられた春季神奈川県大会で、私が最も印象に残った学校をご紹介したいと思います!
 試合の練習開始前からその学校のとある取り組みに“強さのワケ”を感じ、試合を通して選手たちの一挙一動にくぎ付けになりました――。

高校野球ファンから愛される「横浜隼人」

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試合前に盛り上がる横浜隼人ナイン

 この春季大会で、絶対観戦したいと思っていたチームがあります。それは、横浜隼人です!
 念願叶い、4月29日に[stadium]サーティーフォー保土ヶ谷球場[/stadium]にて行われた春季神奈川県大会準々決勝第2試合、桐光学園横浜隼人戦を観戦してきました。

 横浜隼人は横浜市に学校があり、1977年の学校設立と同時に野球部が創部。水谷 哲也監督は横浜隼人の監督を務めて26年。2009年、就任18年目で悲願の甲子園初出場を果たしました。
 この大会2回戦で対戦した花巻東佐々木 洋監督は、かつて横浜隼人のコーチを務め、水谷監督を“恩人”として慕っています。結婚式を水谷監督夫妻の結婚式に合わせ仲人を頼むほどの親密さ。試合前の監督対談では、「恩人の水谷監督と甲子園で対戦できるのは夢のよう。感動している」と語っていました。

 “師弟対決”は菊池 雄星投手擁する花巻東が4-1で勝利しましたが、両チームともチームの色である選手の笑顔が光る好ゲームでした!また、花巻東の一回戦のアルプススタンドに横浜隼人の応援団が駆けつけるなど、大いに高校野球ファンを沸かせました。

 近年も8季連続で県大会ベスト8入りと、全国屈指のレベルを誇る神奈川県内でも上位常連校となっています。昨年は部員156人と県内最多。今年も142人の部員が在籍。腰を低く落として行う独特グラウンド整備は「隼人園芸」としてメディアでも取り上げられ、多くの高校野球ファンに愛されている学校です!

 神奈川県の“聖地”としてファンに愛される[stadium]サーティーフォー保土ヶ谷球場[/stadium]。
 この日、受付などのお手伝いをされていたのが横浜隼人の部員の皆さんでした。訪れる人たち一人一人に元気に挨拶をしている姿が印象的でした。ハキハキとした声で「こんにちは!」と挨拶!私はとても嬉しい気持ちになりました。
 元気な挨拶ってやっぱり見ていて気持ちいいですし、自分がされるとこんなに嬉しいものなのだと感じたと同時に、「この選手たちはどんな野球をするんだろう」と横浜隼人の野球をいっそう観てみたいと思いました。

 また、試合で見たかったのは横浜隼人の部員の皆さんの“笑顔”です。
笑顔をモットーにしている学校は多くありますが、横浜隼人の選手たちが笑顔の理由、それは「笑顔がいい人たちには神様が降りる」からだそうです!

 野球の神様がチームに微笑んでくれると――。

 これは2009年に横浜隼人が甲子園に初出場した時にTV取材語っていたチームの合言葉です。甲子園という大舞台で、チーム全員が笑顔で闘う姿が印象に残っている高校野球ファンの方も多いのではないでしょうか!
この“笑顔”が新チームでも受け継がれているのか、是非とも球場で観てみたいと思ったんです。

 ワクワクしながら[stadium]サーティーフォー保土ヶ谷球場[/stadium]で試合開始を待っていると、みるみるうちに球場の席が埋まっていきます。野球少年の息子さんを連れてやってくるお父さん、高校野球ファン仲間の男性方、中には女性同士でいらっしゃっている方もいます。
 3塁側・横浜隼人応援スタンドには大勢の野球部員と保護者の方をはじめとした大応援団!横浜隼人ファンの方も含め青い応援メガホンを持った方が多くいらっしゃいました。
また、県大会で[stadium]サーティーフォー保土ヶ谷球場[/stadium]のグラウンド整備も担当する横浜隼人。試合前から会場を沸かせます。

[page_break:整備と用具から感じた強さのワケ]

整備と用具から感じた強さのワケ

週刊せり高校野球『横浜隼人の強さを象徴する3つのポイント』 | 高校野球ドットコム

名物・隼人園芸!

 「整備行くぞ!」と大きな掛け声。トンボを片手に、一斉にグラウンドに駆け出す部員たち。ひざを90度近くまで曲げて腰を落とし、素早くトンボをかけていく姿――。

 スタンドからは拍手や声援が送られ、「これが隼人園芸か」と見られたことに喜んでいた方も!私はバックネット裏の方から観ていたのですが、一塁側も含め、球場全体から拍手が送られているのを感じました。
 試合前から横浜隼人という学校が高校野球ファンから愛されていることが伝わってきます。この「隼人園芸」が見たいと球場に足を運ぶ方もいるくらいですから、本当にすごいですよね!

 このグラウンド整備、動きや仕上がり、部員たちの連携に「美しさ」を感じました。
腰を低くすることで、凸凹がないかチェックすると同時に下半身の強化トレーニングも兼ねているそうです。
この日ごろからグラウンド整備を大切にする姿勢、鍛えられた技術から“強さのワケ”を感じた一つ目のポイントでした。

 そして、二つ目のポイントは、“ベンチ前に綺麗に並べられた用具”です。
 第一試合後のグラウンド整備の間に、ベンチ入り選手たちはアップ。ふとベンチの方に目を向けると、グローブやヘルメット、アームガードがベンチ前に綺麗に列で並べられていたのです。

 なぜこの2つポイントが気になったのかというと、この“グラウンドや用具を大事に使うこと”の大切さは、『バトルスタディーズ』作者・なきぼくろ先生のPL時代の恩師・藤原 弘介監督(現・佐久長聖監督)に取材させて頂いたときに語っていらっしゃったんです。また『バトルスタディーズ』作中(第4巻36話)でも描かれています。

 ボールは一球たりとも無くしてはいけない―。
 毎日ボールが無くなっていないかしっかり確認し、夜中までかかっても一球一球大事に磨く。
 グラウンド整備の厳しい指導―。
 イレギュラーや転倒が起きないようグラウンドの土の高さを均一にし、手の皮が剥けるまで土を叩いて固める。

 …ここまでやるのかと驚くような事ばかりが多く描かれています。
初めは単純に「すごいな」という気持ちで読んでいたんですが、藤原監督のお話を聞いてから捉え方が少し変わったんです。この徹底されたグラウンド整備をしているシーンで、主人公・狩野が「強いモンにはワケがある!!」とDL学園の強さのワケを感じていることにすごく共感するようになりました!

 「ボール一つがあることに、練習できる環境があることに感謝しつつ
思い描いてきた夢を現実にするために
僕たちは一秒一秒を生きている――」

 この言葉がとても印象的で、なきぼくろ先生がPL時代に藤原監督から学んだことを大事にしていることがひしひしと伝わってきました。
 “感謝する気持ちの大切さ”。
 そしてそれは、今の教え子である佐久長聖の選手たちもしっかり受け継いでいました。ボールやバットなどの用具が練習中もしっかり整頓されている佐久長聖の練習場の風景が今でも頭の中に残っています。そこに感動さえ生まれたのですが、横浜隼人の整頓されたベンチから、そして、選手たちの「ありがとうございました!」と感謝の言葉を多く口にする野球への向き合い方から同じ感動を感じたのです。

 ここに横浜隼人の強さのワケがあると――。

[page_break:試合前からも感じる横浜隼人の強さ]

試合前からも感じる横浜隼人の強さ

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しこを踏む横浜隼人ナイン

 そして3つ目のポイントが“選手たちの纏まり”です。
 横浜隼人の試合は、是非少し早めに来て試合前のアップから観て頂きたいと思いました!アップ中にグラウンドにいる選手全員で円になり、部訓か何かを唱和したり、シートノック前には全員で四股を踏み、3回ジャンプして元気よくグラウンドに駆け出すなど独自のルーティンに私はとても惹かれました。
 シートノック時のボール回しも、同じポジションの選手が一斉にスタートし、3人同時にボールを投げる動作も揃ってる!練習の随所にチームの纏まりを感じ、元気よく声を出しながらプレーする姿に私も自然と笑顔になって見ていました。

 試合中も、序盤から両校のカラーが出る、見応えのある試合でした。
例えば声かけの仕方。横浜隼人の元気のいい「ここからだぞー!」という声やアウトでも拍手する一方、桐光学園は強気な声かけ。「甘いの来るぞ、たたけ!」「○○出ろよ!」といったプレッシャーをかけるような声出しをするんです。
神奈川の強豪校でもそれぞれの強さがあり、そのレベルの高い強さがぶつかり合うから面白いですよね!

 1回裏、3番・秋元選手、5番・村瀬選手の適時打で横浜隼人が2点先制するも、桐光学園がすぐさま反撃。3回4回5回と4番桂川選手の本塁打などで連続して得点を挙げていきます。
 横浜隼人が5回裏に2点を返し、5-4と桐光学園が一点リードする展開。グラウンド整備後が終わり、両校のスタンドに一層熱が入ります!そして7回表、この回から登板した浅野投手の立ち上がりを桐光学園が一気に攻め、一挙7点。12-4と横浜隼人を突き放します。

 この試合中で印象的だった場面が、その裏の横浜隼人です。
 得点を挙げなければコールド負けというピンチでも横浜隼人のベンチの明るさは衰えません!例え打者がアウトになってもベンチ、スタンド両方から拍手が起こり、正にチーム一丸となって横浜隼人の野球を貫いているように見えたんです。これだけの大所帯でも全員の意識を統一させていける横浜隼人の野球をもっともっと知りたくなりました!

 1点を返すも反撃及ばず、5-12で7回コールドと横浜隼人にとっては悔しい敗戦となりました。ですが、この日横浜隼人の野球をスタンドから観て、

グラウンドや用具を大切にする姿勢
大所帯ながら、一人一人がしっかり役割を考え、意識の統一されたチーム力
そして受け継がれた“笑顔”――。

 たった一試合観ただけなのに、今まで私が観戦する中で探してきた「強さのワケ」を3つも感じたんです。
そして、長年受け継がれている伝統が強さに結びついていることは、2009年の甲子園出場や上位常連校となったことに表れていると思います。まだ横浜隼人の試合を観たことがない方は是非球場に足を運んでみて下さい!きっと“高校野球ファンに愛されている理由”を肌で感じることが出来ると思います。

 これから夏に向けて熾烈なレギュラー争いが繰り広げられていく横浜隼人。私も夏にまた絶対球場へ試合を観に行きます!

 以上、芹視点での横浜隼人野球部紹介でした!
週刊せり高校野球第6回は、春季関東地区大会後すぐに大会レポートをお届けします。また来週お会いしましょう!

(文=芹玲那

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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