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神戸中央シニア 有力高校球児を輩出するための育成方法

2018.04.17

 硬式野球が盛んな関西地方においても全国大会の成績や卒業生の活躍で大きな存在感を残している神戸中央シニア。昨年のリポビタンカップ第45回日本選手権大会ではベスト4に輝いているが、大会での結果以上に目を引くのが卒業生の甲子園出場者数だ。昨年は太田 英毅(智弁学園)や後藤 克基滋賀学園)など春夏合わせて17人が甲子園の土を踏んでいる。今年のセンバツにも文元 洸成(智弁和歌山)や池田 陵人明秀日立)らが出場した。今回は有力高校球児を次々と輩出する神戸中央シニアの育成方法と期待の選手について伺った。

昨年は17人の甲子園球児を輩出

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神戸中央シニアの選手たち

 神戸市営地下鉄の西神南駅から10分ほど歩くと神戸中央シニアの専用グラウンドである共栄第1野球場が見える。さらにそこから車で15分ほどのところにも専用グラウンドの共栄第2野球場・第3野球場もあり、学年ごとに練習を行うことができる。さらにコーチは元阪神の今西和夫コーチなど20人、トレーナー2人と指導陣も充実。このような恵まれた環境で多くの甲子園球児が育ってきた。

 チームを取りまとめるのが山田 高広監督だ。育英高校時代に自らも1992年の春に主将として甲子園に出場し、ベスト8の成績を収めている。その後日大に進学し、1998年に23歳の若さで神戸中央シニアの監督に就任した。就任後は毎年のように甲子園球児を送り出している。山田監督に指導の心構えを聞くと「部員全員に甲子園の道を断念することのないように夢の続きをというのがひとつです。それでなお且つ全国制覇を目指しています。個人が犠牲になるような指導はせずにみんなで同じ練習をしています」と話してくれた。野球少年にとって甲子園は夢舞台。その道を閉ざさないようにするのが山田の指導方針だ。

 昨年は春夏合わせて17人という驚異的な数の選手を送り出したが、その全員がエリートだったわけではない。17人のうち、眞藤 司滋賀学園)や岡野 佑大(神戸国際大付)など、約半数の選手はチーム内で控えの選手だった。神戸中央シニアがいくら強豪とはいえ、控え選手が高校でここまで活躍する選手が多いのは珍しい。その背景には体作りを重視する山田監督の指導法があった。「技術は追い求めてもゴールがないので、今は体作りをしっかりやっていくほうが良いです。体作りに関しては全員が平等にできるので食育も含めて力を入れています」と山田監督は言う。中学生は体が大きく成長する年代であり、その時期に体作りを徹底的にすることで高校でも活躍する選手になれるのだ。

 体作りにおいて力を入れているのが加圧トレーニングと食育だ。加圧トレーニングでは専用のベルトを着けて腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングを行う。食育では1日に3度の補食を行っている。また、定期的に体重の管理も行い、目の見えるところに各選手の体重を記入する仕組みを取っている。

[page_break:自立する精神を育む]

自立する精神を育む

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ランニングで汗を流す選手たち

 山田監督は肉体面だけでなく精神面の指導にも力を入れている。山田監督が選手たちに求めているのは自立する心だ。「高校に行ってからもこうすれば野球が上手くなるということを理論的に理解させるようにしています。だから自立させることが一つのテーマです。自分で考えて行動できる選手になってほしいです。自立すれば寮生活なんて苦ではありません。だから退部する者はほぼいません」と山田監督は自立の重要性を語る。強豪校に進めば寮生活を送る者も多い。親元から離れることになるため、自立しなければ寮生活が苦痛に感じることもある。しかし、神戸中央シニアで山田監督の指導を受けて自立心を育んできた選手たちは途中で退部することがほとんどない。野球だけでなく、人間性を高めることに力を入れるのが神戸中央シニアの特徴だ。

 今年のチームに関しても技術面より精神面に話が及んだ。今年のチームについて伺うと「未熟な部分が多すぎて、それが出るかどうかが結果に出ているので不安定です。野球に対する考えが成熟してこないと野球は安定しないですね。やってみないとわからないチームはトーナメントで勝てません。考え方が成熟してきて不安定要素が安定してきたら力通りに勝っていけると思います。不安定要素を安定させる根拠作りがこれから必要です」と山田監督の評価は厳しい。中学生は精神面が不安定になりやすく難しい年齢だが、高校で活躍する選手になるためにはこの時期に精神面を鍛えられるかが、カギになるだろう。

[page_break:晩成傾向の強い新チーム]

晩成傾向の強い新チーム

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チームのエースを務める渡邉純太

 今年のチームの戦力面について山田監督に聞くと「うちの長所は打力なんですけど、今年は迫力に欠けますね。ちょっと晩成の傾向が強いです」と答えてくれた。それでも第47回関西連盟秋季大会で優勝するなど早くも力を発揮している。今後の課題については「今はまず勝っていくに相応しい人間性を身に付けないとダメです。そうでないと、勝つことが長い目で見て返って本人たちの野球人生でマイナスになりかねません。努力に見合う結果、普段の生活に見合う結果にならないと。そこの根拠は凄く大事だと思います」と山田監督は話す。ここまでは好成績を収めているが、決して慢心はない。人間力を磨いて野球の完成度を高めていくつもりだ。

 伝統的に打撃をウリとしているチームで結果を残しているのがチームで中軸を打つ藤田 翔太(3年)だ。昨年末に台湾で行われた2017台北市国際AA野球大会に関西選抜で出場し、.625の高打率で首位打者を獲得。山田監督も「率は残していける子だと思います」と評価する。藤田本人も「まだ完璧な打撃ができていないので、夏には完璧に近づけるようにしたいです。将来は中田 翔選手のような勝負強いバッターになりたい」とこれからの抱負を語ってくれた。

 チームのエースを務めるのが渡邉 純太(3年)である。178㎝80㎏の体格から120㎞台後半のストレートとチェンジアップ、スライダーを投げ込む左腕だ。彼の投球について「左の割にコントロールが良いですね。総体的にストレートも変化球もレベルの高い投手だと思います。後は感情じゃなくて意図を持って投げられるようになれば、安定すると思います」と山田監督の期待値も高い。目標にしている投手を聞かれると「菊池 雄星投手のようなストレートも変化球も良いピッチャーになりたいです」と答えてくれた。

 キャプテンの髙橋 綺兜は「まだ声の連係が弱いと思いますが、一人ひとりの振りが強いのでチームプレーができれば強くなると思います。夏にむけてどんどん強くなっていきたいです」と今後の課題と夏に向けての意気込みを語った。まだ成長途上のチームだが、一丸となり、チーム力が磨かれていけば、全国でも有数のチームとなるだろう。

 

これまでに数多くの甲子園球児を送り出してきた神戸中央シニア。今年の春に卒業した選手も4月から大阪桐蔭、智弁学園、早稲田実業など大半が野球強豪校に進学する。恐らく彼らの多くが2年後、3年後に甲子園の地でプレーしていることだろう。現役生、卒業生を含め、彼らの今後の活躍に注目していきたい。

文=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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