Column

戸塚リトルシニア「県内で2番目に古いシニアが強豪チームであり続ける理由」

2017.03.03

 神奈川県中学硬式野球チーム特集の第8回は、戸塚リトルシニアに訪問!

 1970年に発足されてから、長く県内を代表する強豪クラブとして注目を浴びてきた戸塚リトルシニア。 神奈川県内のリトルリーグでは2番目の歴史がある。過去には荒波 翔選手(横浜DeNAベイスターズ)、2015年東海大相模の優勝メンバーで、U-18代表入りした豊田寛選手(国際武道大)も輩出している名門シニアが、今年、第5回DeNAベイスターズカップに初出場を果たした。

元気の良さがモットー

戸塚リトルシニア「県内で2番目に古いシニアが強豪チームであり続ける理由」 | 高校野球ドットコム

吉島 良紀監督(戸塚リトルシニア)

 戸塚リトルシニアの練習場である舞岡・打越グラウンドは横浜市戸塚区の住宅街の奥にある。グラウンドに入ると選手たちの元気な声が響いてきた。チームを率いるのは、吉島 良紀監督。横浜高時代には選抜優勝(1973年)経験があり、選手としても実績のある吉島監督が大事にしているのは、技術の前に人間教育の指導を行うこと。元気よくプレーするのは、チームのモットーだ。
「グラウンドではヘラヘラせず、真剣に元気よくやる。ヘラヘラすると集中力を失いやすいですし、やはり怪我をしてしまいますからね」と吉島監督は語る。

 そして挨拶・礼儀・返事はしっかりと行う。選手たちはグラウンドに訪れた大人たちに元気よく挨拶をしていた。
「まずはそこをしっかりさせないと。基本ですから。技術だけ教えるということのないようにしています。人間的なことがしっかりとしないと伸びないというのは、これまでの経験上感じていることです」

 この指導を貫き戸塚リトルシニアを卒業した選手たちは、進学先の指導者から「戸塚リトルシニアの選手たちは礼儀正しく、気持ちが強い」と評価されるという。また吉島監督は選手たちの能力を引き出すために、対話も欠かさない。対話の重要性に気づいたのは、最近のことだという。

「僕は39歳の時に監督に就任しましたけど、最初は何が何だか分からなくて、どう指導すればいいか悩んでいました。最近になって対話をすることを意識するようになりましたね。やっぱり怒ってばっかりだと、選手はなかなか動かないです。選手によってどう対話すればいいか意識するようになりましたし、ある選手には、何も反論できないぐらい、指摘をすることもあります。そうすると選手たちは納得して動くようになります。もう60歳を過ぎましたけど、まだまだ指導者として勉強をさせていただくことばかりです」

 選手たちは吉島監督についてどう思っているのか。小島 歩空主将は技術的なことについてとても細かく指導を受けるという。
「元気よく行うのはチームのモットーです。基本となるものがしっかりとできてから監督さんから技術的なことを教えてもらいます。僕は捕手なので、監督さんからインサイドワークのことを細かく教えていただきます。教わったのは打者の反応を見てリードをすることです」

 選手の力量を見ながら、技術的なことを教えた方がいいのか、心構えの部分を教えた方がいいのかを見極めながら指導にあたっている。

[page_break:強豪校で活躍している先輩たちの存在は刺激となっている]

強豪校で活躍している先輩たちの存在は刺激となっている

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練習風景(戸塚リトルシニア)

 また食事の面にも気を配っている。
「僕は全く考えていなかったんですけど、最近は食事の重要性は伝えるようになりましたね。今まではただ食べろということしかなかったんですけど、4、5年前からトレーナーが入るようになってから本格的にやるようになりました。だから選手によっては技術よりも、まずは体力をつけなさい、食べて体を大きくしなさいとアプローチすることができるようになりましたね」

 昼食時はおかず含めて1キロを食べ、さらに昼食前にも補食の時間を入れておにぎりを2つ食べるなど、食べる習慣を増やし、そしてグラウンドで体重測定を行い、しっかりと増えているのかをチェックする。やり始めれば、徹底的なチェックと管理を行う。吉島監督の几帳面さと学習を継続する姿勢が戸塚リトルシニアを強豪チームに育て上げた。

 戸塚リトルシニアは、これまで荒波選手をはじめとした5人のプロ選手や、甲子園優勝メンバーとなった豊田選手を輩出しているが、近年では、横浜高の現3年生で大型セカンドとして活躍した戸堀 敦矢國學院大進学予定)、抜群の強肩とリードの上手さが評価される好捕手・福永 奨(現2年)、走攻守三拍子揃った二塁手・斉藤 大輝(現1年)もこのチームの出身チームだ。

 横浜高で活躍する3人の活躍は今の選手たちにとって大きな刺激となっており、主将の小島は、「やはり福永さんは憧れですね。肩が本当に半端ないです」。福永のような強肩捕手を目指して、手首や足腰を鍛えるトレーニングに懸命に励んでいる。選手たちと話すと、横浜や、東海大相模横浜創学館などでプレーしている先輩たちに続きたい思いがあったり、強豪校でプレーできる選手になりたいと思いがあるようだ。それがモチベーションとなって、強さを生む一因となっている。

[page_break:エース・松本は今大会注目左腕!他にも投打に逸材が揃う!]

エース・松本は今大会注目左腕!他にも投打に逸材が揃う!

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左から 小島 歩空捕手、松本 隆之介投手(戸塚リトルシニア)

 DeNAベイスターズカップ初出場の戸塚リトルシニア。今年のチームの注目は、エース左腕の松本 隆之介だ。中学生としてはかなり大きい183センチ68キロの長身左腕で、ストレートの最速は132キロを誇る。小学生までは主に外野手だったが、中学に入ってから投手に転向。松本は肩の可動域の広さが特徴で、その柔軟性を生かした腕の振りから投げ込むストレートには非常に威力がある。中学1年生の時は170センチだったが、この2年間で13センチも伸びたことで角度のあるストレートを投げられるようになり、さらに体重も55キロだったのが、68キロまで増量し、ストレートも急激に速くなった。そしてスライダー、フォークを投げ分ける本格派として、今大会注目投手となるだろう。

 リードする小島は、「内外角どちらでも強いストレートを投げられます」と信頼を寄せる。吉島監督も、「将来的にはプロに行ける素材」と高く評価している。松本は、横浜DeNAベイスターズの今永 昇太投手を憧れにしており、今永投手のような球速表示以上と感じさせる切れ味抜群のストレート、そしてコントロールを身に付けるのが目標だ。そして主将で正捕手・3番を打つ小島は、吉島監督からインサイドワークの上手さが評価されている捕手。先ほど横浜の福永が憧れにしていると語った小島は、MLBトップクラスの強肩を誇るサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)のことも好きな選手。スローイング技術を磨き、そして大会では勝負強い打撃が期待される。

 4番ファーストの伊藤 由浩は180センチ85キロと中学生離れした体格を誇る右打ちのスラッガー。チームの中でも食べる選手で、「肉が好きです!多い時はどんぶりめし4杯いけちゃいます」と笑う。伊藤には2人の兄がおり、長男は今年から道都大でプレーし、次男も現在横浜創学館で投手として在籍している。

 さらに1番打者ながら本塁打を打てて、俊足巧打の左投げ左打ちのライト・金井 真人も控えている。また2番手として大きく伸びた竹島 俊並は160センチと小柄で、スピードも110キロ程度だがコントロールが抜群で、内外角への出し入れが上手い右投手。吉島監督は、連戦になる大会だからこそ、竹島の活躍がカギを握ると見ている。

 吉島監督は今大会へ向けて「この大会は、その後の公式戦につながる大会になります。勝つために、ディフェンスをなんとかしているところです。今までの大会では、1イニングで、2つも3つも失策が出て大量失点につながった試合もあります。それはなくしていきたいです」と守備力を課題に挙げた。主将の小島は、「勝つためにはチームが1つにならないと勝てないので、方向性をしっかりと定めていきたいと思います。全力で優勝を目指していきます!」と意気込みを語った。

 40年以上の歴史もある戸塚リトルシニアは一致団結でベイスターズカップに臨み、新たな1ページを刻む。

(取材・文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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