グラブの刺繍に込めた青春コトダマ【春日部共栄編】
昨今、自分のお気に入りのグラブに、好きな言葉を刺繍でいれて愛用するプレーヤーが増えてきました。グラブの刺繍の言葉には、選手一人ひとりどんな思いがあるのでしょうか?今回は「コトダマ」企画の特別編として、球児たちのグラブの刺繍にまつわるエピソードを取材しました。
今回は3年ぶりの甲子園出場を狙う春日部共栄。主力選手たちにグラブについてのエピソード。そして、最後の夏へ向けての意気込みを聞きました。
春日部共栄ナインが刺繍に込める想いとは
川畑 光平(春日部共栄)
川畑光平(3年・二塁手)
「その信念を貫け」
「笑顔と感謝」
春日部共栄の本多利治監督、チームメイトからの信頼が厚いのが主将・川畑光平だ。1年秋からベンチ入りして、巧打堅守でチームを支える川畑選手。グラブには、「その信念を貫け」と刺繍してあります。この言葉を刻んだ理由とは?
「高校に入ってから強い気持ちをもってやってきました。それが、自分にとっての信念なのでそれを貫こうと思いました。そして『笑顔と感謝』も大事にしていて、このグラブと一緒なら絶対に忘れないですし、一度プレーから離れた時にこの刺繍を見ると、大事にしないといけないと思いますね。一戦一戦を大事に、粘り強い野球を見せていきたいと思います」
夏の大会でも強い気持ちを大事に、ナインを引っ張る。
又吉 一瑳(春日部共栄)
又吉一瑳(3年・捕手)
「気づく心」
長打力があり、スローイングタイム1.8秒台の強肩を誇る大型捕手・又吉一瑳。沖縄・豊見城ボーイズ出身の又吉は、2014年の春日部共栄が龍谷大平安を破った試合を見て、春日部共栄に憧れた又吉は猛勉強の末、春日部共栄入学を決めた。
そんな又吉がキャッチャーミットの刺繍を入れているのが、「気づく心」だ。これは中学時代の監督から教えられた言葉だが、今でもこの言葉の大事さを感じている。
「自分にとって苦手なことなんですが、これができないといけないので。やはり相手の作戦や野球の小さなことに気づかなければ試合に勝てないので」
練習試合では日々、本多監督から注意されることが多いが、それもチームが勝つためと思って、受け入れている。そして捕手として迷ったときはキャッチャーミットに刻まれている「気づく心」を見て、原点に立ち返っている。そして最後の夏へ向けての意気込みを聞いた。
「とにかく自分がやることは、投手の良いところを引き出すこと。それができるように引き出していきたいです」
憧れは3年前の甲子園出場の正捕手・守屋 元気。持ち前の強打、強肩。そして磨き続けてきたリードで、甲子園に導く。
投手への想い、自らの個性…それぞれの想いに迫る
山本 大貴(春日部共栄)
山本 大貴(3年・一塁手)
「臥薪嘗胆」
春日部共栄の打の柱として注目される山本 大貴。勉学も優秀で、なんとオール10!学年トップの秀才だ。世田谷西シニア時代は慶応義塾のスラッガー・正木智也とともにプレー。山本は当時から最速130キロ中盤を投げる右腕で、さらに成績も優秀。慶応義塾に行ける学力は十分にあった。
しかし、「智也と違うところでプレーしたくて、そして勝負をしたかった」という思いで、春日部共栄に入学。大学進学を目指して、平日は夜11時~2時まで勉強するというスケジュールで、学力をつけていった。しかし投手として活躍したい思いはかなわず、故障が続き、2年秋に、本多監督の勧めで、野手に専念した。
それでも投手の想いを諦めておらず、投手用のグラブは今でも持っている。
「大学に進んだら投手に戻りたいんです」と語る山本。その投手用のグラブの刺繍には「臥薪嘗胆」と刻まれていた。今の苦労を乗り越えた先には、大学では、投手として輝く日々が待っている。
森 圭佑(春日部共栄)
森 圭佑(3年・三塁手)
「愉快活発」
チーム一の元気印だ。本多監督は「あいつはキャラがいいんですよ。落ち込まない。そこがいい」と絶賛する人柄を持つ森。その森のグラブを見せてもらうと「愉快活発」の刺繍が。自分のキャラクターがよくわかっている。森はこの刺繍を入れた意図をこう話す。
「2年秋からこの刺繍を入れているのですが、自分はもとから明るい性格なので、それを忘れないようにこの刺繍を入れています」
夏でも、チャンスの場面になっても笑顔で一打を打つ。
鷹休 翔(春日部共栄)
鷹休翔(3年・投手)
ベンチ入りへ向けて、必死にアピールを続ける鷹休。最速131キロのストレートとスライダーのコンビネーションで勝負する投手だ。秋はベンチ入りしたものの、春はベンチ入りすることができず、悔しい思いを味わった。そんな鷹休のグラブを見せてもらうと、シンプルだが、自分の名前が刻まれていた。だが、最新のデザインでカッコよさを感じる。
「そうなんです。このカッコよさが気に入っているんです」と話す鷹休。もともと強気な投球ができるために、「魂」などという言葉を入れていたが、たまたま大学生投手のグラブの刺繍を見て、かっこいいと思った鷹休はそのデザインを踏襲して現在のグラブにした。このグラブで夏に勝負するために、鷹休は最後までアピールし続ける。