Column

鳴門に明徳!四国に連続出場チームが多い理由って何?

2016.08.13

 徳島県代表:鳴門 5年連続11回目
 高知県代表:明徳義塾 7年連続18回目

 今年もこの両校による「夏の甲子園連続出場」は揺るがなかった。さらにいえば、いわゆる「センバツ方式」での地区割りで見た場合、3年連続以上の夏の甲子園出場校が複数あるのは四国地区のみである。では、なぜこのような現象が四国地区には生じているのか?徳島県・高知県での変化の胎動と共に理由を追っていきたい。

「一番実力のある」チームが「一番練習」=必然の連続出場

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河野 竜生(鳴門)

 なぜ、鳴門明徳義塾が連続甲子園出場を続けているのか?理由は至ってシンプルである。県内で最も実力のあるチームが一番練習しているからだ。

 まずは鳴門の場合。以前「野球部訪問」でも何度か紹介したように、フリーバッティングは走塁と守備を連動させ、打者と投手は真剣勝負。なおかつそこで生み出した時間をトンボ振り含めた様々なバットを使っての素振りに充てる。平日の練習終了は21時前後。練習時間が長ければいいというものではないが、徳島県内でここまで練習量をこなしている野球部は他にない。

 さらに雨天の際でも高速下にある坂道を使ってのショートダッシュ。冬場には近くの霊園での急坂ダッシュを繰り返す。甲子園開幕戦佐久長聖戦。左腕・河野 竜生(3年・左投左打・174センチ72キロ・鳴門市第二中出身)が148球を投げながら最後まで粘りこみ、初回に4番・手束 海斗(3年主将・中堅手・右投右打・172センチ81キロ・鳴門市大麻中出身)が大会第1号・高校通算39号の弾丸アーチを放ったのも「冬場を超えて下半身の安定感が出てきた」と森脇 稔監督が徳島大会開幕直前に語っていた積み上げがあってこそだ。

 全寮制の明徳義塾はさらにその傾向が顕著に出ている。自主練習で個人技術を積み上げ、紅白戦での少ないチャンスをつかみ、レギュラー奪取や甲子園での活躍につなげたケースは枚挙にいとまがない。現チームであればセンバツではベンチにすら入ってなかった脇屋 紀之(3年・右翼手・左投左打・180センチ75キロ・大阪泉北ボーイズ<大阪>出身)や、センバツ登板なしの右サイドハンド・金津 知泰(3年・右投右打・176センチ70キロ・守口リトルシニア<大阪>出身)が好例。すなわち「連続甲子園出場」は偶然ではなく、必然の産物なのである。

[page_break:「ストップ ザ 鳴門&明徳義塾」の中で変化の胎動も]

「ストップ ザ 鳴門&明徳義塾」の中で変化の胎動も

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明徳義塾ナイン

 とはいえ、徳島・高知県の他校も鳴門明徳義塾の連続甲子園出場に対し、ただ指をくわえてみているわけではない。特に今年の両県地方大会では変化の胎動が見えた。

 徳島県では準決勝で左腕・紀本 幸太郎(3年)が奮闘した富岡西。彼らはより相手の弱みを徹底して突くことにより、中盤までのリードに持ち込んだ。また、練習環境では室内練習場を備えるなど鳴門をしのぐ鳴門渦潮も、最終回一打同点の場面まで鳴門に迫っている。
 

 高知県ならば夏は初の高知大会決勝まで進んだ高知中村。彼らは中高併設型県立校の長所を活用し、複数選手が長いスパンで野球の基礎を習得。さらに高校ではスイング強化に力を入れ、最終回には2点を返し一打同点まで明徳義塾を追い込む大健闘。準々決勝で名門・高知の5年連続決勝進出を阻み、さらに準決勝では高知中央を19安打12得点で破った力が実力であることを満天下に示した。

 今後は富岡西鳴門渦潮、高知中村がそれぞれの形で提示した「対抗策」を、いかに県内他校がアレンジし、発展できるかがカギとなるはず。もちろん、包囲網に対し鳴門明徳義塾も王者を守るべくさらに努力を積み上げていくことも間違いない。

 その結果が「○年ぶり」になるか「○年連続」になるかは神のみぞしるところだが、「ストップ ザ 鳴門明徳義塾」の切磋琢磨の先に「正の連鎖」が生まれ、再び全国に通用する四国地区高校野球を創り上げられることを、今は心より念じたい。

(文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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