Column

甲子園の歴代スラッガーを振り返る!驚きのホームラン記録は?

2016.08.16

 甲子園は数々のドラマを残すと同時に記録も残っていく。今大会では神奈川大会で大会新記録の本塁打記録を樹立した横浜の中軸を打つ村田 雄大選手や、高校通算68本塁打を打っている中京今井 順之助選手関連記事が注目されてきた。惜しくも予選で敗れた早稲田実業清宮 幸太郎選手も高校2年生ですでに高校通算53本塁打を記録し話題を呼んだ。そこで今回は甲子園で歴代のホームランバッターを記録の面から振り返っていきたい。

広角に本塁打を放つ清原、強烈なインパクトを与えた桑田のKKコンビ

森 友哉選手(大阪桐蔭時代)

 夏の甲子園で最も本塁打を打ったのは9本塁打の清原 和博選手(PL学園)である。振り返れば、甲子園での清原は、圧巻の本塁打を見せてくれた。

 1年夏(1983年)から名門・PL学園の4番に座り、甲子園初本塁打は、決勝の横浜商戦。逆方向への本塁打だった。1年生で主軸として出てくる選手は毎年いるが、ライトスタンドは浜風の影響が強いので押し戻されやすく、フェンス手前で失速することが多い。それだけに1年生ながら逆方向に打ち込んだ清原の打撃技術は突出していたと言える。

 清原は2年夏(1984年)享栄戦で3本塁打を放った。そして3年夏(1985年)高知商戦で放った本塁打は中段まで飛び込む一打で、最も飛んだ当たりであった。この一発で勢いに乗った清原は、準決勝の甲西戦で2本塁打を放つと、さらに決勝の宇部商戦でも2本塁打を放った。一大会5本の本塁打は今でも破られていない記録となっている。

 夏では3年連続で本塁打を放ち、1本→3本→5本と本塁打が多くなっている。清原選手の本塁打を振り返れば、打った瞬間にわかる、文句なしの当たりというだけではなく、右方向への本塁打が多いことも見逃せない。改めて清原の技術の高さが分かる。プロ入り後も、高卒1年目から31本塁打、そして通算525本塁打と多くのアーチをかけた清原。この伝説を破る大打者は現れるのだろうか。

 2位は4本塁打となり、4本打っている選手は桑田 真澄選手(PL学園関連記事)、藤井 進選手(宇部商)、平田 良介選手(大阪桐蔭関連記事)、廣井 亮介選手(智辯和歌山)、北條 史也選手(光星学院)、森 友哉選手(大阪桐蔭関連記事)と6人いる。

 清原とともに甲子園を盛り上げた桑田は、「KKコンビ」と呼ばれるようになり、絶大な人気を誇ったが、最初に甲子園のファンに強烈なインパクトを与えたのが桑田であった。1年生にしてエースの座を獲得した桑田投手は準決勝まで快投。1年生投手が甲子園4強まで導くだけでも考えられないが、すごかったのは、徳島池田との準決勝だ。桑田は、徳島池田の水野 雄仁投手(巨人)の剛球を打ち返し、本塁打。さらに強打の徳島池田打線を相手に5安打完封勝利を挙げる。その後、決勝でも勝利し、1年生ながら甲子園優勝を経験する。

 現代の例えでいえば、1年生投手が夏春連覇をして勢いにのる大阪桐蔭を相手に完封勝利し、その上本塁打も打って甲子園優勝も決めてしまうと考えれば、どれだけ桑田が当時の高校野球ファンに強烈な記憶を残してくれたかをご理解いただけるはずだ。4本の中で、やはりこの本塁打が一番衝撃的であった。

 また桑田が素晴らしいのは、3年夏までパフォーマンスを落とすことなく、甲子園通算20勝を挙げたこと。スーパー1年生と呼ばれた選手がその後伸び悩んで、パフォーマンスを落とすことは少なくない。1年生で煌めく才能を見せた選手に対しては、桑田や清原のような道のりを期待したくなるが、その道は決して甘いものではないということを多くの方が実感しているからこそ、「KKコンビ」は記憶に残る存在なのだろう。

このペ-ジのトップへ

[page_break:清原に次ぐ強打者たちの記録を振り返る]

清原に次ぐ強打者たちの記録を振り返る

北條 史也選手(光星学院時代)

 藤井 進選手は、1985年、3回戦の東農大二戦で2本塁打を放つと、準々決勝の鹿児島商工(現・樟南)戦でも本塁打を放つ。さらに準決勝の東海大甲府戦でも本塁打を打ち、準決勝終了時点で清原を上回る4本塁打となっており、注目を浴びていた。しかし清原が決勝戦で2本塁打を放った一方、藤井は不発に終わった。だが、清原とともに注目を浴びたスラッガーであったことは間違いない。

 また2005年に登場した平田 良介選手は、2回戦の藤代戦でレフトスタンドへ滞空時間が長い本塁打を放つ。そして3回戦の東北戦はさらに凄かった。2回裏、打席に立った平田は変化球を豪快に引っ張り、レフトスタンドへ飛び込む本塁打を放つと、4回裏にも変化球を引っ張り、またもレフトスタンドへ打ち込み2本目。この一打にスタンドがざわつく。そして迎えた第4打席。7回裏、一死から打席に立った平田は真ん中に入ったストレートを逃さず、バックスクリーン右に打ち込む本塁打を放ち、一試合最多タイとなる3本塁打を記録した。甲子園ファンの釘づけにした瞬間であった。

 廣井 亮介選手は強打の智辯和歌山の中心選手として大活躍。2006年夏、いきなり県岐阜商戦で本塁打を放つと、3回戦の八重山商工戦では2本塁打を放ち、ベスト8入りを果たす。準々決勝では帝京と壮絶な打撃戦の末13対12で勝利したが、この試合でも本塁打を放ち、一大会4本塁打の活躍を見せ、ベスト4入りに貢献した。

 そしてその6年後の2012年。北條史也選手が大爆発を見せる。2回戦遊学館戦では9回表に、中越えの2ラン。この一打で勢いに乗った北條は3回戦神村学園戦で初回に2ランを放ち、さらに準決勝東海大甲府戦でも、2ホーマーを放ち、一大会歴代2位の4本塁打となり、歴史に名を刻んだ。

森 友哉選手(大阪桐蔭時代)

 そして森友哉選手。夏の甲子園初本塁打は、2年夏の濟々黌戦(試合レポート)のこと。大竹耕太郎のインコースのストレートを振り抜き、ライトスタンドへ持っていった一打は技ありの一打であった。そして準々決勝天理戦では中越え本塁打を放つ。さらに3年夏の日本文理戦(試合レポート)では、2回裏に打席に立った森は外角ストレートをレフトスタンドへ飛び込む本塁打を放つと、4回裏にも内角ストレートを今度はライトスタンドへ打ち込み、これで夏4本目となった。

 森の打席を見ていると、打撃技術の高さはもちろんだが、狙い球を逃さない好球必打の姿勢が素晴らしい。本塁打を打った打席を振り返ると、これは打つだろうという雰囲気を感じさせている。その集中力の高さが、現在の活躍にもつながっているのかもしれない。

  高い注目が集まる夏。そこでスラッガーとして目立てば長く語り継がれていく。平田、北條、森が見せた一打は全て圧巻だった。
この夏はどんな選手が甲子園に名を刻む本塁打を見せてくれるのか。注目していきたい。


注目記事
・第98回全国高等学校野球選手権大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.18

【神奈川】保土ヶ谷球場では慶應義塾、横浜が登場!東海大相模は桐蔭学園と対戦!<春季県大会4回戦組み合わせ>

2024.04.19

【山口】下関国際、高川学園、宇部鴻城がコールド発進<春季大会>

2024.04.19

【島根】石見智翠館、三刀屋がコールド発進<春季県大会>

2024.04.19

【福岡】福岡大大濠-福岡、西日本短大附-祐誠、東筑-折尾愛真など好カード<春季地区大会>

2024.04.19

【春季千葉大会展望】近年の千葉をリードする専大松戸、木更津総合が同ブロックに! 注目ブロック、キーマンを徹底紹介

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.15

【春季和歌山大会】日高が桐蔭に7回コールド勝ち!敗れた桐蔭にも期待の2年生右腕が現る

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード