もう夏に弱い八王子はいない!ありんこ軍団・八王子が初の甲子園へ
もう夏に弱い八王子はいない!ありんこ軍団・八王子が初の甲子園へ
この夏、初の西東京大会の頂点に立った八王子。ここまで長い苦しみを乗り越えて、優勝した八王子の軌跡を振り返りたい。
2010年~2013年の夏は初戦敗退3度、3回戦突破がない屈辱を味わった
八王子ナイン
■八王子
決勝 5-3 東海大菅生
準決勝 8 – 6 創価
準々決勝 6 – 4 早稲田実
5回戦 10 – 1 明大中野八王子
4回戦 8 – 0 都立町田
3回戦 8 – 1 田無
7月27日、西東京大会決勝戦が行われ、初出場を狙う八王子が東海大菅生を延長11回の末、5対3で破り、初の甲子園出場を決めた。八王子市にとっても初の甲子園出場を決めた。
早稲田実業、創価、東海大菅生といった夏の甲子園出場経験のある強豪を破った八王子の野球を見ていると、とても粘り強く、強かな選手が揃っている印象を受ける。実は八王子、これまでは期待されながらも、夏に勝ちきれないチームだった。
スラッガー・桝澤 怜(亜大–NTT東日本)、右腕・元木 隆太、右腕・塚崎 晃大といった好選手を揃えて、2010年秋、都大会ベスト4、2011年春は関東大会出場と、自信を持って臨んだ2011年夏。例年ならば、八王子の実績を考えてもシードなのだが、この年は東日本大震災震災の影響によりブロック予選が中止。シード権もなしで、1回戦からフリー抽選という形を取っていたので1回戦から登場した八王子はいきなり東海大菅生と対戦して、0対7で敗れ、コールド負け。実は2010年夏も初戦敗退(3回戦)。2012年も、秋ベスト16入りするなど実績はあったが、1回戦で都立小平南に2対3で敗れることもあった。2013年夏も3回戦負けと、前評判は高いものの、とにかく夏に苦しむことが多いチームだった。
だが2014年夏はベスト8、2015年夏もベスト8と着実に結果を残すようになってきたのだ。2014年以降のチームは、戦略を持って試合運びができるチームになった
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苦しみを乗り越えて、粘り強い試合運びができるチームに
先制点を与えない。そして畳みかける時は、犠打、エンドラン、スクイズ、盗塁なんでもありと小技を徹底的に仕掛けるようになった。そして投手陣も突出して速い投手がいるわけではない。投手の個人能力は、むしろ5年前~6年前の方が高いくらいだ。だが今の八王子の投手陣は、制球力も高く、球速は速くなくてもいろいろなボール球で勝負できるようになった。そしてピンチでの粘り強さも出てきた。目に見えないけれども、とても大事な内面の強さ。それが出てきて、夏に結果を残すようになってきたのだ。
そして夏の大会の八王子の戦いぶりは試合巧者と呼ぶに相応しい出来であった。ハイライトとなったのは5回戦・明大中野八王子戦では、スクイズやエンドラン、犠打を絡める攻撃。八王子の小技戦略が明大中野八王子の守備の乱れを誘い、コールド勝ちを決めた。そして準々決勝では早稲田実業に勝負所を見逃さず、6対4で競り勝ち、準決勝でも創価に8対6で勝利し、9年ぶりの決勝進出を決めた。
相手は東海大菅生。戦前の予想では選手層が高い東海大菅生が有利という声が多かったが、八王子は3回までに3点を先制。その後、同点に追いつかれ、延長戦へ。試合は11回表に八王子がセーフティバントなどを絡め、2点を勝ち越して、ついに初の甲子園出場を決めたのだ。
力のある選手を揃えても、なかなか壁を破ることができなかった八王子。個人の能力は、歴代の選手と比べても突出した力を持ったチームではないが、それぞれの選手が勝負所を知っていて、何を仕掛ければ相手からすれば嫌なのか、それが分かっているのだ。ここぞという場面で一打が打てる、良い球が投げられる、守れる。今年は確固たる基礎技術の高さに、強い精神力を兼ね備えた選手たちが集まったチームなのである。
八王子の応援スタンドには「ありんこ軍団」という横断幕が掲げられている。今年のチームはまさにその横断幕に相応しいチームになった。初の甲子園でも、八王子らしいプレーで魅了してほしい。
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