スローカーブで大阪桐蔭、撃破!関大北陽・清水寛から学ぶ 『強豪校の倒し方』
清水 寛(関大北陽)
波乱尽くしと言われる今年の夏だが、7月21日も大きなニュースが駆け巡った。絶対王者・大阪桐蔭が関大北陽に敗れ3回戦敗退。その立役者として一躍脚光を浴びたのが、関大北陽のエース・清水 寛だ。ストレートの球速は130キロにも満たない。そんな投手が何故?と驚きを集めたが、彼には武器があった。それが90キロ台のスローカーブだ。
90キロのスローカーブと聞くと、ピンと来る方もいるかもしれない。
2014年のMLBオールスターゲームで、ダルビッシュ 有投手(テキサスレンジャーズ)が「持ち味の一つ」として91キロの超スローカーブを披露。まさに「全米が驚いた」ということがあった。
そのスローカーブの使い手として「伝説」とまで呼ばれているのは、現在オリックス・バファローズで投手コーチを務めている星野 伸之コーチ。18年間の長きにわたり現役を務め、通算2041奪三振、176勝を挙げた。
ストレートは最速130キロそこそこだったが、90キロ台のスローカーブを駆使することでその130キロのストレートがとんでもなく速く見えたとのこと。「一番速いピッチャーは星野」と並みいる強打者が口を揃えたなどの逸話が数多く残っている。何度も対戦するプロ野球選手ですらその落差に戸惑うのだから、一発勝負の高校生が当たったとしたら、いきなり打ち崩すのは一苦労だろう。
最近の高校球児はトレーニングや理論がしっかりしていることもあり、投手の球速は上がる一方。変化球のキレも増してきている。しかもそれはもはや中学生の時期からのこと。だから有力な選手を獲得しやすい強豪校ほどこの傾向が強い。そして集まったエリート投手たちは、チームに必要とされるため、球速、コントロール、駆け引き等トータルでバランスを取れるように成長していく。
それだけに、大阪桐蔭をはじめとした各地の強豪校は、関大北陽・清水のようなしなやかな技巧派…いや、己の武器一本で勝負するサムライのような投手と対戦するケースは少なくなっているのではないだろうか。
強豪校と練習試合を組み、仮想・○○といった全国レベルでの戦いを見据え、トータルでレベルが高い、あるいは球が速い投手と対戦することを繰り返すことに落とし穴もある。全国的に名の知られていない私立校、公立校に苦戦をするケースが増えているのは、これらも要因の一つだろう。
大阪桐蔭が、関大北陽に敗北した。これは番狂わせなどではなく、必然だったのかもしれない。清水は、「強豪校の倒し方」のヒントを教えてくれた。己の武器を磨き抜くことで道は開ける。これに勇気をもらった全国の球児たちが、強豪校との対戦を手ぐすね引いて待ち構える事だろう。