Column

3年生座談会 市立桜宮高等学校(大阪)・後編「桜宮で学んだのは大人数がまとまった時のパワーの大きさ」

2016.11.04

 後編では夏の大会の模様を振り返っていきます。代表といわれるレギュラー、そして分析、応援といったサポートメンバーが活躍する模様を振り返っていきます。

分析班の正確な分析が勝利を呼ぶ

3年生座談会 市立桜宮高等学校(大阪)・後編「桜宮で学んだのは大人数がまとまった時のパワーの大きさ」 | 高校野球ドットコム

田辺 行成(市立桜宮高等学校)

――ここまでの話を聞くと、サポートに回る皆さんが一生懸命準備されているのが分かります。では松井君から見て夏前、チームはうまく仕上がっていましたでしょうか?

松井:チームとしては仕上がっていたんですけど、それで力を発揮できるかどうかは別で、初戦の摂津戦はみんなガチガチで、なんとか3対2で勝利できました。

――初戦は緊張もある中、勝ち進んでいったんですね。そして2回戦では春に対戦した大冠と対戦することになります。データ班の松浦君に聞きたいのですが、この試合はどんな対策をしていたのでしょうか?

松浦:大冠の試合を見て分析していると、エース投手は首の動きやグラブの動きで球種が分かったので、それを見つけたのが大きかったですね。

――ただ、試合を振り返ると5回まで無得点で、苦しい試合でした。

出口:癖はわかっていてたのですが、自分たちに打てない球種があって、なかなか打てなかったです。それ以上にエースが良かったというのもあります。僕らが打てる球、打てない球がありましたね。

――そんな中、6回以降に逆転に成功しました。

松井:グラウンド整備後に試合が動くということは、練習試合の経験から分かっていたので、全員で集まって、この回が勝負だぞというのを話していました。ちょうど6回にエースが変わったとき、流れがうちに変わっていたんですよね。一気にひっくり返して、チームとしては勢いに乗れる勝ち方でしたが、試合を振り返るとまだまだ反省点が多いなと思いました。

――この勢いで順調に勝ち進んでいき、5回戦太成学院大高戦は7対4と打ち勝った試合でした。

松井:試合を重ねるごとにみんな慣れてきたというのもあって、だんだん力を出せるようになってきました。また分析班がしっかりと調べてくれたのも大きかったと思います。

――松浦君、どういう分析をされたのですか?

松浦:そうですね、太成学院大高の投手は二塁ランナーが出たとき、首の動きでストレート、変化球が分かるんです。みんな打ってくれたのですが、特にうちでは強打者の藤井雄也が、1回戦の時から僕たちの分析を信じてくれているんですよ!藤井がここぞという場面で打ってくれたので、分析の力が勝利を生んだと思います。

出口:実際に大きかったですよ(笑)。太成学院大高は打力があるチームでしたが、しっかりと分析してくれたおかげで勝てたと思います。

――ここまでの試合を振り返ると、積極的な走塁が目立ちましたが、それは三塁コーチャーの田辺君が的確な判断をしていたと思うんですけど、試合前はどういう準備されていましたか。

田辺:監督から必ず外野ノックを見なさいといわれていました。外野手の肩を見て突っ込むか、突っ込まないかの判断は決めていましたし、また分析班が相手チームの外野手の肩を事前に分析してくれたおかげで参考になったこともありました!

[page_break:履正社は事前分析が全く通用しない相手だった]

履正社は事前分析が全く通用しない相手だった

3年生座談会 市立桜宮高等学校(大阪)・後編「桜宮で学んだのは大人数がまとまった時のパワーの大きさ」 | 高校野球ドットコム

大倉 竜馬(市立桜宮高等学校)

――準々決勝交野戦ではどんな試合を心がけましたか?

松井:ベスト8に来たチームはどこも強い。特に意識していたわけではなく、いつも通りで、良い緊張感で臨めた試合です。

――交野は振れる打者が多いチームでしたが、何を気を付けましたか?

出口:初球の入り方ですね。特にクリーンナップに対しての配球は大事にしました。

――交野にコールド勝ちして、ついに準決勝履正社戦。松浦君は偵察にいっていたんですよね。見ていてどうでしたか?

松浦:履正社さんはレベルが高すぎて。投手ですが、首、グラブの動きや間合いなどをじっくり見ると、だいたい癖が分かるのですが、寺島成輝関連記事山口裕次郎君は癖が全く分からなかったんです。打者も隙がなくて、そのため打球方向の傾向しかつかむことができなかったです。

――準決勝を見ると、シフトが極端でした。

松浦:僕は準々決勝浪速戦を見ていましたが、履正社と対戦した浪速の投手は右サイドスローでした。うちは右サイドスローの投手がいるので、それは材料になると思って、監督の北風 和樹先生も同じことを考えていて、打球方向を割り当てることになりました。

――北風先生は生徒の意見を尊重される先生なんですね。

松浦:太成学院大高戦ではこのシフトで良いと思って代表や先生に提案したんですけど、実際は違うシフトだったようです。そうしたら、変更したシフトとは逆側に打球が飛んでしまったことがあったらしくて、それで履正社戦の前に、北風先生が『お前らに任せるぞ』と信頼してくれました。

松井:北風先生は代表選手だけではなく、外れた選手を大事にしてくれる先生で、夏の試合が終わると、3年生全員に握手していただけるとなど、本当に全員を見ている先生なんです。

――準決勝に入るわけですが、いかがでしたか?

松井:先発の山口君は速いですし、勢いがあって、変化球も切れがあって違いましたね。

出口:履正社打線は失投を見逃さないですし、厳しいところ投げても外野の深いところ飛ばしていきます。ボール球を手を出させる配球をするのですが、ストライク、ボールの選球がしっかりとしていて、振ってくれません。本当に強かったです。

――準決勝敗退となりましたが、大会を振り返っていかがでしたか。

松井:目標は全国制覇でしたので敗れたのは悔しかったですが、部員全員でここまでやってこれたので、誇りに持てる夏だったと思います。

出口:代表だけではなくチーム全員が協力したことで、ベスト4になれたと思うので、試合に負けたことに悔いはありますが、大観衆の中でプレーできたことは楽しかったです。

前田:勝ち上がるにつれて自分たちの野球ができて良かったです。

津本:秋も春も、みんな頑張っていたんですけど、悔しい思いで終わっていました。夏では必死に頑張って、最後まであきらめずにやっていました。私はこの夏、記録員として最後までスコアを書かせてもらえたので楽しかったですね。

[page_break:大人数がまとまった時のエネルギーの大きさを桜宮で学んだ]

大人数がまとまった時のエネルギーの大きさを桜宮で学んだ

3年生座談会 市立桜宮高等学校(大阪)・後編「桜宮で学んだのは大人数がまとまった時のパワーの大きさ」 | 高校野球ドットコム

松浦 尚矢(市立桜宮高等学校)

津田:僕自身としては悔いはないですし、みんなほかの代表も松浦も、大倉もメンバーも頑張っていましたし、悔いはないです。

松浦:大会期間中、分析班と言い合いになったことは何度もありました。みんな勝ちたいと思う証拠ですし、分析通りにいったときは、グラウンドとスタンドと一緒に戦っている感じがしたのは本当に嬉しくて、この代でよかったです。

大倉:一番の目標は一般の人たちが応援をしたくなるような応援が目標で、明るく、楽しい応援を取り入れてきました。終わった後、OBや他のクラブの方から桜宮の応援は良かったよといわれまして、この言葉を聞いて応援団長をやってきて良かったと思います。

田辺:三塁コーチャーは大事な場面のカギを握る存在で、プレッシャーはありましたけど、やり遂げることができました。履正社戦は大敗でしたけど、そんなに悔いなく終われたと思います。

――では最後に桜宮高校で学んだことを語っていただければと思います。

松井:ここでは人間性を学びました。挨拶、返事をしっかりするのがうちの野球部ですが、中でも大変だったことの1つが「まとまること」。この学年は60人いて、最初はバラバラでした。なかなか難しいことですが、この夏、皆がまとまることができ、人間的に成長できたと思います。

出口:つらいことが多かったですが、野球の技術だけではなく、社会に通用する人間性を学んでこれたと思います。

前田:部員が多いので、全員が同じベクトルに向くことに苦労しました。それでも1つになっていきましたし、団体で生きていく上で、目的がしっかりと定まらなければ果たせないと、この大人数の中で学んでいきました。

3年生座談会 市立桜宮高等学校(大阪)・後編「桜宮で学んだのは大人数がまとまった時のパワーの大きさ」 | 高校野球ドットコム

津本 真耶(市立桜宮高等学校)

津本:つらいことが多かったですけど、私たちは選手たちを支える側なんですけど、逆に選手に支えてもらっていました。
野球部のマネージャーで学んできたことは社会に出れば生かせることばかりだと思います。

津田:やっぱり60人の中で意見の食い違いもありましたが、逆にこういう考え方があるんやと気づかされて、自分だけの考え方では社会に通用しないことを学びましたし、どのようにして大人数をまとめることができるかも学んだ3年間でした。

松浦:中学時代、自分は部員の少ない野球部で、ここにきて部員が多いところでやるのは思っていた以上に大変でした。自分より上手い人がたくさんいる中で、自分を目立たせるために工夫してできるようになりましたし、多人数が結束するのは難しいですが、結束した時、とても大きな力になることを学びました。

大倉:仲間の大切さです。去年ケガをしてしまって、選手として夏の大会までに間に合わないことになって、野球部をやめるか考えたんです。その時キャプテンが引き留めてくれ、他の仲間も励ましてくれて、最後は応援団長をやらせてくれたので、良かったです。

田辺:入学当初、全然真面目に取り組んでいなくて、このままではあかんなと思って練習中はずっと声を出すようになりました。正直夏の大会は「声」で勝ち取ったようなものなので、僕はベンチのムードを盛り上げたり、相手チームの様子を注意深く見たり、できることをやってきました。そうする中で、目配り、気配りができるようになって成長できたと思います。 
 

 今回の3年生座談会では、レギュラーだけではなく、彼らを支えた控えメンバーも多く登場してくれた。3年生たちの話を聞くと、強豪校はレギュラー選手以外の部員がチームのためにどれだけ働くことができるか。またレギュラーと控え選手の連携が大事であることが分かる。桜宮野球部の皆さん、ありがとうございました。

(取材・写真=河嶋 宗一

■関連記事
【僕らの熱い夏2016 特設ページ】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】