徳島インディゴソックス・鈴木 康友コーチに10の質問 スペシャリストが語り尽くす「指導戦略論」【Vol.1】
今季、日本独立リーグ・四国アイランドリーグplusで前期を圧倒的に制した徳島インディゴソックス。新監督兼投手コーチとして見事な手腕を発揮した養父 鐵(ようふてつ)監督を陰日なたなく支えたのが鈴木 康友ヘッドコーチである。
高校時代は奈良の強豪・天理高校で大型ショートとして4度の甲子園出場。プロ入り後も職人的守備と勝負強い打撃で読売ジャイアンツ、西武ライオンズ、中日ドラゴンズで計15年間活躍。コーチとしてもNPBだけでも西武ライオンズ、読売ジャイアンツ、オリックス・ブルーウェーブ、東北楽天ゴールデンイーグルス、福岡ソフトバンクホークスを渡り歩き。多くの選手を指導してきたスペシャリストだ。
では、そんな鈴木コーチは練習や試合でどのような指導や戦略を描いているのか?今回は「僕のお話することが全てではないと思いますが、18歳からプロに入って40数年で思ったことをお話しします」鈴木 康友コーチの多大なる協力の下、高校球児はもちろん、指導者にも向けた「指導戦略論」を「10の質問」形式で4回に分けてうかがった。
今回は第1回。試合に入る上での「戦略」についてです。
強み発揮のポイントは「声のかけ方」
Q1.自チームの「強み」をゲームで発揮する方法はありますか?
鈴木 康友ヘッドコーチ(徳島インディゴソックス)
――攻撃・守備・走塁・投手力と自チームの強みは見つけられても、なかなかゲームでその強みを発揮できないことが多々高校野球ではあります。ゲームプランを立てる上での第一歩となると思われる強みをゲームで発揮できる方法があれば、教えてください。
鈴木 康友コーチ(以下、鈴木):自チームの特徴を知るということはすごく大事です。 例えば今年の徳島インディゴソックスは打撃のチーム、多少の失点をしても打者が打ってカバーしなければいけません。
ですから、高校野球では無死一塁では送りバントをしますが、徳島では5回くらいまでは送りバントはあまりません。先に1点2点とっても重荷になることがあるので。ビッグイニングを作りたいので、まずは打っていかせる。その上で相手投手の出来が良いときは早めに対策をします。
――実際に相手投手がよい時の対策法はありますか?
鈴木:投手の特徴やクセを選手に伝え「魔法をかける」。その上で「信用しなさい」と。「打てなかったら俺のせいにしていいから」と伝え、プレッシャーを解いてあげます。
そして一軍は結果を出さなければいけないので、二軍とではコーチングが違う。「打てなかったら二軍に落とされる」という状況の選手がいる場合には気楽になる声かけをしてました。「一生懸命やってるんだから、神様がみてくれてるよ」と。そうしたら、それまで必死な顔していた選手がニコっと笑い、そして試合で打ったんですよ。
守備は9割9分の世界ですが。打撃基本は10割中7割失敗ですから。そのときのため、十人十色の性格を把握して、かける言葉を用意しておきます。
相手の練習内容、監督のポジションを知ろう!
Q2.公式戦で対戦するチームの強み、弱みを見破るポイントを教えてください。
鈴木 康友ヘッドコーチ(徳島インディゴソックス)
――公式戦で対戦相手の強み・弱みが解れば、より勝利に近づくのは解るのですが、そのポイントがなかなか見分けられません。公式戦を戦う上で相手の強み・弱みを見破るポイントを教えてください。
鈴木:高校野球の場合はライバルになるチームのエースなどを分析しなければいけません。ただ、相手を知るのも大事だけどプロじゃないからなかなかそこまでできない。一人の力では打ち崩せませんから、しぶとく粘るだとか、走者に出たら揺さぶりをかけるとか。甲子園に出てくるチームはやっぱり投手。いかに投手を攻略するか、いかに失点を少なくするかが大事だと思います。
――鈴木コーチは初対戦となる相手の特徴は見た感じでわかるのですか?
鈴木:僕が甲子園出場校の監督だったとしたら、甲子園練習での練習の割合で見極めます。たとえば僕がいた天理は打撃のチームだったので、甲子園練習でも打撃に時間を割いていたので。
それと、対戦相手の監督さんの現役時代のポジションを見ます。投手上がりなら投手を大事に育てる。僕みたいに内野手上がりなら攻撃でいろいろ作戦を立てる。龍谷大平安の原田 英彦監督のような、捕手出身で特殊なポジションを教えられる監督さんは少ないでね。炭谷 銀仁朗が西武ライオンズで高卒1年目から活躍できたのも、原田監督の指導があったからだと僕は思います。
ポジションによって変わる「性格」
Q3.公式戦で力を発揮するために、練習試合をどのように活用したらいいでしょうか?
鈴木 康友ヘッドコーチ(徳島インディゴソックス)
――練習試合を公式戦で力を発揮する材料にしたいのですが、練習試合でよくても公式戦で力を発揮できません。プロ野球で言えばオープン戦などが練習試合にあたると思いますが、そこを公式戦にどうつなげたらいいのか?活用法があれば教えてください。
鈴木:NPBでもオープン戦では色んなことを試します。色んなことをやって本番ではやらなかったり、逆に何もやらなくて、本番ではやったりするんです。
加えて高校野球は一発勝負だからコンディションによって左右される。ですから、東京大会や大阪大会では投手一人では辛いと思います。甲子園に出てきたら疲れてしまいます。投手は二人くらいは要るでしょうね。
――その中で、複数ポジションを経験するということはありですか?
鈴木:内外野を入れ替えるのは面白いですね。カットプレイのお互いの気持ちを分からせたり。外野というのは野球において文字通り「外野」なので、内野の連携とかの気持ちを分からせることは大事です。
実はポジションによって性格も変わるんですよ。三塁手は熱い性格になったり。捕手は相手の裏をかくようになる。長くプロ野球でやってると、性格が変わってきます。職業病みたいなものですね。
だから、巨人でも三塁手出身の原 辰徳さんとか長嶋 茂雄さんというのは「潔い野球・かっこいい野球」をしていました。
第2回では野球に必ず存在する「流れ」の掴み方などを触れていきます。お楽しみに!