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明徳義塾の一校独走を阻止すべく、高知と復活の兆しの土佐が食い下がれるか

2018.06.17

現状は明徳義塾の一人勝ち、全国でも存在感を示し続ける

明徳義塾の一校独走を阻止すべく、高知と復活の兆しの土佐が食い下がれるか | 高校野球ドットコム
明徳義塾は昨秋の明治神宮大会を制して。その強さを改めて全国に示した

 1997(平成9)年夏の高知商を最後に、夏の高知代表は明徳義塾が7年連続で果たす。そして、05年から高知高知商高知の3年連続と、やや明徳義塾を遠ざけるものの、10年夏からまたしても明徳義塾が8年連続を継続中である。
 その間の春も、高知が5度出場し、高知の明治神宮大会優勝でもたらされた明治神宮枠の恩恵で室戸が1回、さらには13年に21世紀枠代表として、かつて甲子園を沸かせた土佐が復活し、17年春には中村の復活出場がある。いずれも、かつて甲子園で準優勝という実績のあるところでもある。
 しかし、現実には明徳義塾の一人勝ちというのが現状だ。96年からの5年連続や01年夏からの7季連続出場など、圧倒的な強さを示している。そして現在も、15年夏から6大会連続出場を継続している。

 学校は、高知市からJR土讃本線で1時間30分ほど下ったところの須崎市にある。中学からの一貫教育を打ち出しているが、中学野球部も全国レベルであり、そのまま高校野球部に入っていくというケースも多い。地元では、中学段階での強力なスカウト網で、「明徳は、全国から選手集めとるきに…」と、必ずしも地場の高校野球ファンからは称えられてはいないところもあるかもしれない。それに、例の星稜松井秀喜の5敬遠四球の当事者ということでもあり、ヒール役とされたこともあった。また、98年には松坂大輔のいた横浜との準決勝で6対0のリードを8、9回で逆転されるという悲劇の演出者にもなっている。

 そんなこともあって、甲子園ではもう一つ勝ち切れないとまでいわれていたが、02年夏についに悲願の初優勝を果し、森岡良介主将も馬淵史郎監督も涙に暮れた。万年優勝候補といわれながらも、なかなか大旗に届かなかったが、悲願の全国制覇で、一気に全国での評価も高まったのだった。
 そして、それ以降も今日まで、さらにはその先までも、県内で独走的な強さを示しているという事実は否めない。また、明徳義塾が強いことによって、高知県全体が底上げされていっているというもう一つの現実もあるはずだ。

[page_break:かつての勢力図は高知商、高知、土佐の3強]
 

かつての勢力図は高知商、高知、土佐の3強

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土佐は2016年の選抜甲子園出場し、オールドファンを湧かせた

 そもそも、高校野球の歴史をみると、意外にも戦前の中等学校野球時代には高知県からの全国大会出場はない。高知県勢の初の甲子園は戦後すぐの1946(昭和21)年夏の城東中(現:高知追手前)ということになる。その2年後に高知商が初めて出場を果たす。

 高知商は50年春にも出場するが準優勝に輝き、このあたりから、「強い高知県」の旗頭として力を発揮し始める。夏の代表権は南四国大会として徳島県代表校と競い合ったが、投手力の徳島県勢に対して、打力の高知県勢という構図もあって、見る者を大いに楽しませていた。

 高知商とともに、県内で人気を博していたのが土佐高知である。こうして、高知県内の勢力構図は高知商と高知土佐の3強時代が長く続くことになる。
 とくに、土佐は1953(昭和28)年夏、66年春に甲子園で準優勝を果たしている。いずれも1点差で松山商中京商と高校野球界の超名門に破れることになるのだが、そのプレーぶりは高く評価されている。ことに、攻守交替の全力疾走は高校野球のお手本とまでいわれ、今でも語り草となっている。

 近年は、明徳義塾の台頭に屈していたものの、13年春に21世紀枠代表として復活し、15年秋も四国大会ベスト4にまで進出して、古くからのファンやOBたちの期待を膨らませている。高知県の英才教育校として創立され、文武両道が売りとなっている。野球部員も東大に入学することもあり、ちなみ浜田一志現東大監督も土佐の出身である。

 そんなエリート校のホワイトカラー的な匂いの土佐に対して、高知商は高知市立校ということもあって、庶民派のイメージが強い。胸文字も左胸に校章が輝いている土佐に対して、高知商は大きく「KOCHI」と記されているだけだ。帽子のマークの「S」は地元での呼び名の「市商」のイニシャルだという。ただ、商業校の常で、近年は男子生徒の確保そのもので苦戦が強いられているのは否めない。

[page_break:75年春に高知、85年春には伊野商が全国制覇を果たす]

75年春に高知、85年春には伊野商が全国制覇を果たす

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高知は1975年の選抜では優勝に輝いた

 高知県の全国優勝という点では、高知商よりも早かったのが高知だ。学校法人高知学園が母体で相撲部、サッカー部なども強く、中学野球部も強豪だ。比較的スポーツ校的な印象のある学校である。その高知は64年に主砲の有藤通世(近畿大→ロッテ)を死球で欠きながらも優勝して話題となった。

 高知は、67年春の準優勝を挟んで、75年春には原辰徳らのいた東海大相模に打ち勝って優勝を果たした。黒潮打線の面目躍如の強打ぶりだったが、その時の主将が埼玉県で春日部共栄を強豪校に作り上げた本多利治監督である。

 また、77年の春には中村がわずか部員12人で準優勝した。結果的には、山沖之彦(専修大→阪急・オリックス→阪神)という好投手がいたということが大きかった。85年の春には伊野商が初出場初優勝をしているが、この時も渡辺智男(NTT四国→西武→ダイエー→西武)というエースがいて、当時全盛を誇ったPL学園を下して優勝を果たしている。

 17年夏は過疎の町から梼原(ゆすはら)が、初めて決勝に残ったものの、明徳義塾に屈した。梼原は、07年に創部し、室戸を甲子園に導いた横川恒雄監督の故郷ということもあって、定年後に招聘して、街の活性化とともに野球部も強化している。
 学校数が少なく、一見簡単に勝ち抜けそうな高知県だが、最後のハードルが非常に高く甲子園への道は厳しいのも現実である。高知東に新興の高知中央も期待出来そうだがあと一つの壁がことのほか厚い。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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