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静高が筆頭だが常葉勢や新鋭私学勢力も元気【静岡・2018年度版】

2018.05.10

静岡を筆頭とした静岡、静岡商、島田商の3強の存在

静高が筆頭だが常葉勢や新鋭私学勢力も元気【静岡・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
静岡は17年春と18年春も連続出場を果たしている。

 中等野球時代の大正から昭和初期にも有力校が多く活躍していた静岡県。当時は、東海地区という認識よりも、山梨県勢と競うことが多かった。その時代から、中心的な存在としては静岡中(現静岡高)と静岡商で、それに島田商を加えてこれが3強を形成していた。戦後の高校野球時代になって島田商は低迷期に入るが、静岡静岡商はライバルとして競いあいながらレベルアップを果たしてきた。

 この両校の対決は「静岡の早慶戦」として人気が高く、毎年5月の連休前後に伝統の定期戦が行われている。県大会とはまた別の意味で、この試合の意義を高いものととらえているファンも多い。県内一番の進学校としての評価も高い静岡は地元では「静高(シズコウ)」と呼ばれる。これに対して静岡商は商店街などの人気が高い庶民派ということだが、地元では「静商(セイショウ)」と呼ばれてユニホームの胸文字も「SEISHO」と書かれている。

 

 ただ、商業校の常で男子生徒の不足などでやや低迷気味となっていたが、04年夏には久々に静岡大会決勝進出。そして、06年夏には32年ぶりの復活を果たしてオールドファンを歓喜させた。しかし、それから早くも10年以上も経過してしまい、静岡県の勢力構図は静高がリードしつつも、以降は私学勢の台頭が著しい。

 静岡高の場合は一時の低迷を脱し、県を挙げての野球部強化支援という方針もあって、好素質の選手も多く集まってきて名門校としての地位を保っている。99年に春夏出場を果たし、03年夏に出場。ややブランクがあったが、11年夏に8年ぶりに出場を果たす。そして、14年夏からは3季連続の出場を果たすなど、完全復活を果たしている。毎年のように、スケールの大きな迫力ある攻撃型のチームを作り上げている。今や、他校にとっては最大の標的となっている。秋季東海地区大会で連続優勝し、17年春と18年春も連続出場を果たしている。

 この2大伝統校、両雄が復活するまでの間は群雄割拠の様相を呈した静岡県である。その時期に戦後長らく低迷していた島田商が1998(平成10)年春に51年振りに甲子園に戻ってきて、長老たちに感激の涙を流させた。ただ、その後に上位進出を維持し続けるにはやや苦戦している。

[page_break:近年台頭している常葉学園グループ]

近年台頭している常葉学園グループ

静高が筆頭だが常葉勢や新鋭私学勢力も元気【静岡・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
常葉学園グループの常葉橘と常葉菊川

 公立商業校といえば浜松商も伝統を維持しようと頑張っている。甲子園初出場は戦後すぐの1950(昭和25)年だが、以来コンスタントに実績を残してきた。甲子園で披露される洗練された応援スタイルは、県大会から見事である。そのメリハリのよさは、昭和の高校野球の美しい部分を継承しているともいえる。

 静岡県の応援は派手さはなくても、全体的に昭和40~50年代に多く見られた高校野球の基本的なスタイルを踏襲しているところが多いが、浜松商はその典型でもある。そういうスタンダードさも見る者にとっては嬉しい光景の一つでもある。

 静岡県の場合は地形からも大きく東部、中部、西部に分けられる。そして、高校野球では常に静岡高と静岡商という2大勢力が突出していた時代から、中部地区がリードしていた。それを浜松商掛川西などの西部勢が追いかけていた。

 これに対してやや遅れ気味だった東部勢としては、91年夏の市立沼津、92年春の御殿場西、夏の桐陽、95年夏の韮山などが出場を果たす。富士宮北西や沼津学園から校名変更した飛龍桐陽の系列校だ。日大三島も89年夏に出場を果たしている。さらには富士宮西富士宮北などが台頭してきていた。韮山はかつて、50年春に全国制覇を果たした実績がある名門校だ。

 近年台頭しているのが、県内で一大学園を形成している常葉学園グループの菊川と橘の躍進である。17年からは校名に大学を冠することになり、より大学の系列校色が強くなっている。常葉菊川は07年春の全国優勝、08年夏の準優勝と衝撃的といえるくらいの強さを示した。追うようにして、09年夏、10年夏、12年夏に常葉橘が甲子園出場、13年は常葉菊川が春夏連続出場を果たす。

 こうして、常葉大勢が中心となっていった中で、再び静岡が浮上してきて今に至っている。

 他には、東海大一と工業が統合してパワーアップしたのが東海大翔洋で、04年夏には甲子園出場を果たし力強さを示した。その後再度校名変更して17年からは東海大静岡翔洋となっている。

 

 もう一つ、静岡県の特徴としても、「静高・静商」定期戦だけではなく、同市内の学校が定期戦を組み、応援団も動員して学校対抗という学生スポーツの原点に忠実だという姿勢もある。浜松北浜松商浜松商浜松工沼津東沼津商焼津中央焼津水産という定期戦もある。

[page_break静岡県の高校野球のメッカ・草薙運動公園]

静岡県の高校野球のメッカ・草薙球場

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今日の繁栄をもたらす要因となった草薙球場

 静岡県の高校野球のメッカは静岡市内の[stadium]草薙運動公園[/stadium]にある野球場だ。実は、この場所はある意味では日本の野球にとって、今日の繁栄をもたらす要因となった貴重な場だったということがいえるのである。というのも、1934(昭和9)年11月20日にこの[stadium]草薙球場[/stadium]で全日本チームが、ベーブ・ルースやルー・ゲーリックなどの全米オールスターと対戦。当時、京都商(現京都学園)を中退してすぐの沢村 栄治が好投し1失点に抑えた。試合には負けたものの、この沢村の好投は日本にとって野球が根づく一つの切っ掛けになったのではないだろうか。もし、ここで滅多打ちにあっていたら、「やっぱり日本人の野球は駄目だ」という意識になってしまっていたかもしれない。そういう意味では、野球文化と普及という点からも[stadium]草薙球場[/stadium]は野球界にとっては、別の意味で聖地といってもいいくらいのスポットである。

 

 実は静岡県は日本の野球の普及の原点でもあるのだ。だからこそ、やはり静岡の野球はある程度は強くあってほしいものである。

 静岡がリードし常葉大勢と日大三島らと伝統商業校が追うというのが現勢力構図だが、新しいところでは背景の企業母体がしっかりとしていて甲子園出場実績もある静清(旧静清工)に、ドラフト1位でプロに進んだ鈴木 翔太(中日)を輩出した聖隷クリストファー浜松学院(旧興誠)、浜松修学舎、17年夏に悲願の初出場を果たした藤枝明誠磐田東などもいる。東部勢では三島から校名変更した知徳と近年は関東遠征などで力をつけてきて充実している富士市立(旧吉原商)あたりも注目を浴びる存在となってきた。

 甲子園経験のある静岡学園静岡市立も忘れてはいけないだろう。静岡市立は17年秋季県大会でもベスト4に食い込んでいる。

 

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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