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花咲徳栄の全国制覇で浦和学院が追う立場になり、それに数校の強豪校が続く【埼玉・2018年度版】

2018.03.14

昔は公立王国だった埼玉県 今では花咲徳栄が夏の甲子園常連に

花咲徳栄の全国制覇で浦和学院が追う立場になり、それに数校の強豪校が続く【埼玉・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
甲子園優勝を決めた花咲徳栄(写真は共同通信提供)

 今となっては、にわかに信じられないが関東地区では久しく公立王国が続いていた埼玉県。1968(昭和43)年春には大宮工が初出場初優勝という快進撃を果たしている。その頃の県内勢力としては上尾が最有力だったが、熊谷商川越工川口工所沢商なども甲子園出場実績を誇る。いずれも公立校勢なのだが14年夏に埼玉大会準優勝し、17年秋季県大会も準優勝した市立川越川越商時代の89年に出場を果たしている。甲子園の実績ということで言えば、体育科のある大宮東も93年春に準優勝を果たしている。

 もっとも、この年は夏の春日部共栄が準優勝しており、埼玉県勢が飛躍した年でもあった。そして以降、徐々に私立天下にシフトしていくことになる。

 初めて私立校が甲子園出場を果たしたのは1985(昭和60)年で春は秀明、夏は立教(現立教新座)だった。そして翌年夏に初出場を果たした浦和学院は、いきなりベスト4に進出。翌87年も出場し、90年代半ばからは埼玉県の雄と言っていい存在となっていった。やがて県内では圧倒的に強い存在となっていく。関東大会でも勝つのだが、甲子園ではなかなか勝ち切れないという時代もあった。しかし、ユニホームのリニューアルを機に、全国で勝てる浦和学院として再アピール。3年連続出場となった13年春に悲願の全国制覇を達成した。

 

 当初の浦和学院上尾で一時代を築いていた野本喜一郎監督がチームの柱を作り上げていった。しかし、甲子園初出場を果たしながら、体調不良となり聖地では采配を揮うことなく他界した。その後、和田昭二監督を経て現在の森士監督に引き継がれている。今ではすっかり関東の強豪としての佇まいを備えているようになった。埼玉県内だけではなく、関東の各校に対しても強烈にプレッシャーを与えるまでになっている存在だ。

 

 県内では盤石の強さとなった浦和学院だったが、その対抗馬として近年一大躍進を遂げたのが花咲徳栄である。

 

 花咲徳栄は03年のセンバツ準々決勝で東洋大姫路と延長15回引き分け、再試合も延長となり最後は痛恨の暴投で敗れたもののその健闘が称えられた。この活躍で、「はなさきとくはる」という読みも全国的に認知された。そして、その後の躍進ぶりは著しい。ことに、2010年からの充実ぶりは目を見張るものがある。

 

 気がついたら15年夏以降の埼玉代表はすべて花咲徳栄となっている。そして3年連続の夏の甲子園出場となった17年には、初戦で開星に快勝すると日本航空石川前橋育英盛岡大附東海大菅生を下し、初の決勝進出となり力は上回ると言われていた広陵を圧倒して県県勢としても悲願の夏初制覇を果たした。

 

こうして、今や浦和学院を越えたとも言われるくらいの実績を作りつつあるのだが、17年秋季県大会も堂々の優勝で関東大会に進出した。

[page_break:私学4強を追う公立校、私学校の存在にも注目だ]

私学4強を追う公立校、私学校の存在にも注目だ

花咲徳栄の全国制覇で浦和学院が追う立場になり、それに数校の強豪校が続く【埼玉・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
現在の埼玉県は花咲徳栄、浦和学院、聖望学園、春日部共栄の4校が突出している

 

 花咲徳栄浦和学院が2強構図となっているが、花咲徳栄の躍進以前に浦和学院と競いあってきたのが春日部共栄である。県内では、ほぼ同時期に台頭してきたが、甲子園での実績ということでいえば先に決勝進出を果たして準優勝を果たした分だけ春日部共栄がリードしている感もあった。

 

 しかし、数字的には浦和学院は春10回、夏12回出場で30勝21敗、優勝1回、ベスト4進出3回。これに対し春日部共栄は春2回に夏5回の10勝7敗で準優勝1回となっている。トータル的には浦和学院一歩リードともいえる。もっとも、春4回、夏5回の花咲徳栄が夏の全国制覇で6勝を加算して通算14勝8敗1分けとなり、通算勝利数では県勢2位。甲子園勝率では6割3分6厘で5割8分8厘の浦和学院を上回っているということになる。

 続く存在としては、99年夏に甲子園出場を果たし、08年春には準優勝という実績をあげた聖望学園がある。03年夏にもベスト8へ進出している。自由で伸び伸びとやれるというイメージもあり、県内では人気校にもなっている。岡本幹成監督の今の時代の生徒たちの考え方にあった指導方針が浸透しているともいえよう。

 現在の埼玉県では、この4校が突出して甲子園に近い存在と言えるのだが、それを08年の記念大会と10年に出場はたした本庄第一も追いかけている。2001年以降、県内からはこの5校以外の甲子園出場はない。

 ベテランの若生正廣監督を招聘して虎視眈々と復活を狙っているのが20世紀最後の2000年春に出場した埼玉栄だ。花咲徳栄と同じ佐藤栄(さとえ)学園でスポーツ校としては知られた存在でもある。

 このように私学が圧倒的にリードしている現在の埼玉県の高校野球の勢力構図である。しかし、かつて埼玉県は都市部としては珍しい公立王国だった。まず、戦前の中等野球時代は浦和中と川越中がリードしていた。戦後になっても熊谷と大宮をリーダーにしたような形で、その後は、大宮工川越工川口工春日部工など公立工業高校がそれぞれ強い時代があった。さらには、上尾が甲子園で好試合を演じるなどして全国に「埼玉に上尾あり」ということで注目された。

 また、甲子園には届いていないものの14年秋と15年春に立て続けに県大会で準優勝を果たしている私立男子校の川越東、スポーツの盛んな坂戸西、市立川口春日部東大宮南大宮東、15年夏準優勝の白岡なども健闘している。春季県大会優勝実績もある南稜に。その南稜で実績をあげた遠山 巧監督が異動した狭山清陵も期待は高い。

 さらには近年躍進著しいのは、女子ソフトボールの名門星野、女子バスケット部が実績のある山村学園といった元々は女子校だったところだ。加えて浦和実をはじめとして西武台西武文理昌平狭山ヶ丘といった中堅私学勢も気を吐いている。新しいところでは、小松原から校名変更した叡明正智深谷武蔵越生獨協埼玉なども追随しようとしている。

16年秋季県大会はふじみ野がベスト8に残ったが、公立校ながらスポーツサイエンス科を設置しており、環境にもある程度は恵まれている。

2強が走っているが、後続集団がどれだけ底上げをしていくのかというところで、その年の勢力構図が決まっていくという傾向がある。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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