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双頭となった健大高崎と前橋育英の争い、桐生一と樹徳などが追う【群馬・2018年度版】

2018.03.13

桐生から始まった群馬の躍進

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前橋工業ナイン

 いくつかの歴史が節目となっている群馬県の高校野球勢力図。かつては県立校の桐生が圧倒的な勢力を誇った。1950~60年代のことである。その桐生には伝説化された稲川東一郎監督がいた。「ユニホームを着たまま死にたい」ということをいつも口にして、その思いを遂げてグラウンドで他界した。そして、その遺志を継いで桐生高校野球部は名門であり続けた。

 その後、70年代以降は甲子園での実績ということでいえば、前橋工が3年連続で甲子園のベスト8に残るなど安定した実績を残した。かつて、ベスト4にも3度進出している。甲子園での実績という点では、桐生以上といってもいいかもしれない。やはり、伝統校だけあって、地元では安定した人気を誇っている。渡辺久信(西武→ヤクルト、西武監督、現SD)をはじめとして、プロへも逸材を多く輩出している。工業高校ということで、硬派という印象も強い。

 これに対して、商業高校の雄といえるのは高校野球では前橋商高崎商の両校だ。とりわけ高崎商は地域的にも、工業の街・前橋、繊維産業の桐生に対して、商業の街・高崎というイメージがある。商業高校だけに女子生徒も多いが、部活動は盛んだ。女子バレーボール部など女子の運動部も実績を誇っている。

 90年以降になって私学勢力が台頭。桐ケ丘学園の女子校から校名変更した桐生一が一気に強化された。そして全国の頂点に立ったのは20世紀も末の1999(平成11)年夏だった。正田 樹投手(日本ハムなど)を擁して、県勢悲願の全国優勝を果たした。野球部強化を託されて招聘された福田治男監督の就任14年目のことだった。

 桐生一の全盛時代に「追いつけ、追い越せ」とばかりに台頭を示してきたのが、前橋育英と高崎健康福祉大高崎(通称・健大高崎)だった。前橋育英は、春季県大会や秋季県大会を勝ちあがり、関東大会の常連になっていた。しかし、なかなか甲子園には届かず、初出場は2011(平成23)年春まで待つことになった。勇んで挑んだ初の甲子園だったが、初戦でこの大会準優勝することになる九州国際大付に1イニング3発の本塁打を浴びるなどで完敗。全国の壁の厚さを実感させられた。

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前橋育英、健大高崎の全国的な活躍により強豪県に

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劇的な勝ちが多い前橋育成(写真は2016年秋関東大会より)

 しかし、その2年後の夏、悲願の選手権初出場を果たすと、エース高橋 光成(埼玉西武)の粘りの投球で初戦を岩国商1対0で辛勝すると、それで勢いに乗った。樟南にも1対0。そして3回戦で名門・横浜に快勝すると、スイスイと勝ち上がって気がついたら決勝進出。決勝でも、延岡学園を下して初出場初優勝の快挙を果たした。

 

 これが、群馬県高校野球の新時代の象徴となった。

 その前橋育英と県内では双頭として競っているのが健大高崎だ。初出場は前橋育英に半歩遅れたが11年夏。開幕試合となった初戦で今治西に粘り勝ち、2回戦でも横浜に食い下がってその存在感を示した。さらに、その年の秋季大会も勝ち上がって翌春のセンバツにも出場すると、あれよあれよとベスト4に進出した。思い切ったベースランニングを仕掛けてくる徹底した機動力野球は、盗塁という現象だけではなく、塁に出たら、何か仕掛けてくるぞということで、相手にプレッシャーをかけていくというスタイルだ。甲子園に新しい野球スタイルを示したとも言われたくらいだ。

 14年夏からは3大会連続で出場を果たす。この秋は県大会で両雄が競い合った。そして、ともに進出した関東地区大会でもベスト4に進出。明らかに群馬県の勢力構図が変わったことを示した。17年春にはその両校が出場を果たしている。前橋育英は16、17年と夏は連続出場となっている。

 もっとも、桐生一もその間隙を縫って、14年春と16年春に出場している。

 このように、現在の群馬県の構図は前橋育英健大高崎の2強を桐生一が追いかけている。さらに私学勢では91年、92年夏に連続出場している樹徳や伝統の東農大二や関東学園大が続いている。

前述のように、かつては勢力を誇っていた公立実業系の伝統ある前橋工前橋商高崎商桐生市商や太田商から校名変更した市立太田なども追いかける存在となっている。とはいえ、壁が厚くなってきているのも現実だ。

 また、公立普通科校としては県内を代表する進学校の高崎前橋に伝統の桐生といった名門校も追随している。高崎は12年春に出場を果たして気を吐いた。決勝進出の実績がある沼田伊勢崎清明なども、今後の中では一気に浮上する可能性もあるともいえそうだ。
 公立勢の甲子園出場は現在では、12年夏の高崎商が最後となっている。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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