Column

聖光学院の一人勝ち状態が、いつまで継続されるのか(福島県)

2016.04.24

 2001年以降、福島県内の夏の大会で絶対的な強さを見せている聖光学院。OBには園部 聡(オリックス・バファローズインタビュー)や歳内 宏明(阪神タイガースインタビュー)など超高校級の選手らが名を連ね、県内だけでなく甲子園でも堂々たる試合を繰り広げている。そんな聖光学院が福島県の絶対王者になるまで、そして今後の勢力図はどのようになっていくのだろうか。

福島県の勢力の変遷

「不動心」が力強い聖光学院

 夏の大会は9年連続で聖光学院が甲子園に出場している福島県。今世紀に入って、つまり2001(平成13)年以降、福島県からの甲子園出場校を見てみると、21世紀枠で最初に出場した安積13年の21世紀枠代表のいわき海星を含めて、延べ21校ある。そのうちの15回が聖光学院となっている。なんと占有率71%を越えているのだ。さらには、夏に絞ってみると12回の出場。春は21世紀枠の両校を除くと聖光学院の4回の出場以外はない。

 つまり、それだけ聖光学院が県内で突出した力を示しているということである。ちなみに、聖光学院以外の甲子園出場校としては、0203年日大東北と、06年光南だけである。日大東北は、96年夏から3年連続出場を果たすなど、聖光学院が台頭する前までの福島県をリードしていた。

 そして、その前が学法石川と福島福島商で競い合うという構図となっていた。福島福島商は胸に「Fc」のマークが伝統のユニホームだが、県立商業としての人気もあり、野球部の人気としては地元で一番といってもいい存在だろう。ただし、なかなか甲子園では上位に残れないというのも現実だった。

 学法石川は、甲子園のアルプススタンドで亡くなるという野球人としては劇的な最期をとげた柳沢 泰典前監督がグラウンド作りから始めて、選手獲得など現在の学法石川のすべてを作り上げた。チーム強化の一つの方策としては、県外選手の獲得にも積極的で、91年には春連続で甲子園に出場するがエース川越 英隆投手(青山学院大→日産自動車→オリックス)は神奈川県出身だったが、県外の少年野球から福島県の高校野球というルートを確立していった先駆ともいえる。

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福島に優勝旗をもたらすのは聖光学院か他の勢力か

信夫ヶ丘球場

 日大東北聖光学院学法石川を追いかけて力をつけてきたという形である。聖光学院は99年9月に斉藤 智也監督が就任して、その2年後の01年夏に初出場を果たした。もっとも、その際には明豊に0対20と記録的な大敗をしていたのだが、そこからの挽回が素晴らしかった。

 2度目の出場となった04年夏には本間 裕之投手が初戦で鳥取商を完封、2回戦でも市和歌山商(現市和歌山)にも勝利して甲子園2勝を挙げている。翌年夏も初戦突破、2年後の07年夏も甲子園2勝と、むしろ甲子園で初戦敗退しないチームとなっていった。勝てなかった春も3回目出場の12年岡野 祐一郎(青山学院大)が京都鳥羽に2安打で完封勝ち。翌年春益田翔陽鳴門を下してベスト8に進出。こうして、着実に実績を積み上げていった。

 今後の目標は、福島県悲願の全国制覇を託される期待を担う存在となっていく。図らずも、福島県のプラットホームの発車メロディーは、地元出身の古関裕而作曲の『栄冠は君に輝く』が流れる。この曲に乗って出発した聖光学院が栄冠を手にして戻ってきてほしいという県内の高校野球ファンも多いだろう。そして、それは東北勢の悲願でもあるのだ。

 福島県勢がもっとも優勝旗に近づいたことがあったのは1971(昭和46)年の夏だった。飄々と投げて小さな大投手ともいわれた、田村 隆寿投手(日大→ヨークベニマル)を擁する磐城が、決勝進出している。初戦で優勝候補といわれた日大一を完封したことから、快進撃は始まった。鮮やかなスカイブルーの帽子とアンダーシャツの色が、小柄な選手の多い磐城の戦いぶりともマッチして、そのさわやかさが強調された。磐城が、高校野球ファン受けをする進学校であったということも大きかった。決勝戦は桐蔭学園が相手だったが、当時まだ新興勢力だった桐蔭学園の選手たちの上手さに比べて、磐城のひたむきさがより光った試合でもあった。

 あれから45年が経過したが、東北には優勝旗が渡ってきていない。聖光学院はその期待をも担う存在となってきたのだ。

 現状、聖光学院の一人勝ち状態の福島県となっているが、何とか抵抗を示していきたいという各校で筆頭格は系列大学が南東北大学連盟の雄となっている東日本国際大昌平か。さらには、伝統の福島福島商や学法石川が巻き返せるのか…。伝統校だけに県内でのファンも多い。また、公立勢としては、白河を強豪に育てた箭内 寿之監督が異動した早々から実績を上げている須賀川、県内初の単位制高校として発足したいわき光洋に実績のある光南、福島双葉に安達小高工や体育科が設置されて女子駅伝などで知られる田村もチャンスを窺っている。

(文:手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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